1998年9月24・25日

日本共産党第3回中央委員会総会

志位書記局長の幹部会報告

 九月二十四、二十五の両日にひらかれた日本共産党第三回中央委員会総会で、志位和夫書記局長がおこなった幹部会報告はつぎのとおりです。



 みなさん、おはようございます。衛星通信をごらんになっている全国の同志のみなさんにも、ごあいさつを申しあげたいと思います。

 私は、幹部会を代表して、この中央委員会にたいする報告をおこないます。

一、参議院選挙の結果――日本共産党の新しい政治的役割

 まず、参議院選挙の結果と、日本共産党の新しい政治的役割についてのべます。

自民党政権の国民的基盤は、歴史的な崩壊過程にある

 自民党と日本共産党の対決―”自共対決”を主軸にたたかわれた参議院選挙は、日本の政治情勢に新しい局面をひらくものとなりました。

 自民党は過半数を大きく失う大惨敗を喫しました。これは彼らのこの間の経済失政への審判にとどまりません。いわば構造的な敗北であります。経済でも外交でも、二十一世紀にむけたまともな国の進路をしめせない、”舵(かじ)取り不能”がいよいよあらわになりました。このもとで自民党の政権担当の能力と資格にたいして、根本的な批判が突きつけられたのが、こんどの結果であります。

 そのことは、都市でも農村でも、これまで伝統的な保守の基盤とされてきたところで、なだれをうっての自民党離れがすすみ、支持基盤の崩壊過程がすすんでいることにもあらわれています。自民党は九三年総選挙、九五年参議院選挙、九六年総選挙、九八年参議院選挙と四回連続の国政選挙で、得票率はもちろん議席数でも過半数をえられませんでした。自民党政権の国民的基盤は歴史的崩壊の過程にあります。

 日本共産党はこの選挙で、得票数でも、得票率でも、議席数でも、党史上最高の峰への躍進をかちとりました。これは、当面の景気対策でも、二十一世紀にむけた日本の進路でも、自民党にはもはや日本の政治は託せないという国民の思いと、わが党の訴え、わが党の路線がしっかりとかみあった結果であります。

 この中央委員会は、昨年九月の第二十一回党大会で、「二十一世紀の早い時期に民主連合政府を実現する」ことを目標としてうちだしてから、ちょうど一年目の時期にひらかれています。この一年間で、党大会が提起した目標にむけて、日本の情勢を着実に動かす新たな一歩の成果をあげることができました。ご支持いただいた有権者のみなさん、奮闘してくださった党員、後援会員、支持者のみなさんに、中央委員会としてあらためて心からの感謝を申しあげたいと思います。(拍手

わが党にもとめられている新しい質の政治的役割――”二重の役割”

 選挙戦の結果つくられた新しい政治局面のもとで、日本共産党が政界のなかでどういう位置を占めることになったかが重要であります。わが党は得票でも、獲得した議席数でも、第三党となりました。野党では第二党であります。国民の支持で第三党というのは、さまざまな世論調査のうえでも定着しつつある位置となっています。

 こうしたもとで、いまわが党に新しい質の政治的役割が、もとめられています。いわば”二重の役割”がもとめられています。すなわち第一に、自民党政治の根本的転換をめざす役割とともに、第二に、当面の政局、現実政治を実際に前に動かす役割、こういう”二重の役割”が、いまわが党にもとめられています。その役割、責任への自覚が、いま全党にとって重要であります。

 二中総では、政策活動の「二重のとりくみ」ということを提起しました。悪政の被害から国民の利益をまもる緊急政策、逆立ち政治をただす根本的な政治の転換――この緊急策と抜本策という二重の視点で、訴えを展開するということを提起しました。この提起は選挙戦のなかで、大きな力を発揮しました。この教訓もふまえて、党のあらゆる活動――政策活動、国会対応、政局対応、大衆活動などを、情勢の新しい発展段階をふまえた新しい質に発展させることが、いま必要であります。

 党にたいする国民の期待も、二つの面があります。一方では「筋をまげないでがんばってほしい」、こういう期待が当然つよくあります。もう一方で、「現実政治を実際に動かしてほしい、そのためには思いきって柔軟な対応もやってほしい」、こういう期待もあります。この両面での期待にこたえることがいま大事であります。原則をゆるがせにしない、同時に、現実政治を動かすために思いきった弾力的な対応をはかる、そうしてこそ、いまひろがりつつある期待にこたえ、党がいっそうの前進の道をきりひらくことができます。

 このことは、新しい国会の冒頭での、首相指名選挙から問われました。わが党は、自民党政治の根本的刷新という党の立場を鮮明にしながら、早期の解散・総選挙をもとめるという一致点を確認して、野党統一候補に投票しました。その後、野党共闘には複雑な曲折も生まれていますが、首相指名での野党の共闘は、参議院選挙でしめされた民意にこたえる態度として重要な意義をもつものであり、多くの国民の共感をえました。

 この間あきらかにしてきた政権論も、新しい情勢をふまえたものです。大会決定であきらかにしたように、自民党政治を根本から改革する民主連合政府の実現が、わが党がめざす基本的な政権構想です。同時に、その条件が未成熟の段階でも、政権問題にいっさいノータッチという態度をとらない。民主連合政府をめざす過程で、自民党政治のわく組みを部分的にでも打破する一致点が野党間で明りょうになれば、選挙管理内閣や暫定政権など「よりまし政府」――政局を民主的に打開する政権にも、積極的な注意と努力をはらうという方針を、あらためてあきらかにしました。

 これは、党綱領に明記された政権論であり、三十数年来の方針です。「よりまし政府」という方針は、その条件が生まれた政治局面で、これまで何度も具体的に提案してきたものです。今日の情勢は、これまでのどの時期とくらべても、この方針がリアルな現実性をもっている。それは、この解明にたいして、これまでにない広範な反響がよせられていることでもあきらかであります。

 政権論についてのこの間の解明も、新しい情勢のもとでのわが党の”二重の役割”をふまえたものであるということを、強調したいと思います。

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二、自民党政治の破たんと、当面する政治任務

 つぎに、自民党政治の破たんと、当面する政治任務について報告します。

 参議院選挙の惨敗によって総辞職に追い込まれた橋本内閣にかわって、小渕内閣が成立しました。この内閣は、「経済再生」を一枚看板にしてきましたが、経済運営についてのまともな見識もなければ能力もない、このことが早くも露呈しました。発足早々から”政権末期症状”をしめしているといっても過言ではありません。

 私たちは参議院選挙で、「政治が国民の暮らしの味方になるのか、銀行の応援団になるのか」という問題を、大争点にたたかいました。これは現に進行している国政をめぐる熱い中心争点となっています。暮らしの問題と銀行の問題というのは、表裏一体の関係にあって、国民の怒りも両者がむすびついて高まり、ひろがっているのが特徴であります。「長銀に税金を使うなんてとんでもない、景気対策というのなら消費税の減税を一刻もはやくやってほしい」、そういう形で国民の声がひろがっているわけですから、そのたたかいを全体として発展させることが大事であります。その時々おしだされる焦点はいろいろでありますが、この両者をむすびつけたたたかいの発展が必要であります。そのうえでいくつかの具体的問題に言及したいと思います。

不況をどう打開するか――「緊急要求」の実現をめざす国民的運動を

 まずこの深刻な不況をどう打開するかという問題です。この点で小渕内閣が実体経済をたてなおす処方せんをいっさいしめせないできたというのが重大な点です。その間にも景気の悪化はいよいよ深刻です。経済企画庁が九月十一日に発表した国民所得統計速報では、戦後初めて四半期ごとの国内総生産の伸び率が三期連続してマイナスになりました。とりわけ個人消費の落ち込みがつづき、それが中小企業を中心とする企業の設備投資の大幅な落ち込みに連動し、さらにそれが個人消費を冷え込ませるという悪循環に日本経済が陥っています。「貸し渋り」が大問題になっていますが、国際金融市場での新たな大もうけのために、国内の中小業者への融資を切り捨てる大銀行の身勝手な行動も、実体経済を冷え込ませる一因となっています。

 ところが小渕内閣はそうした実体経済の悪化にたいして、何一つまともな手をうってきませんでした。いま日本列島を、生活と営業の苦しみ、不安の声がおおい、国民の怒りが噴きあがっているわけでありますが、それにたいして無関心、無感覚がこの内閣の特徴であります。国会審議であきらかになったように、小渕首相には、消費税増税が景気悪化の引き金を引いた大失政だったことへの自覚も反省もありません。

 この内閣が「消費刺激策」と称してうちだした唯一のものが、「六兆円をこえる減税」でしたが、ことしの特別減税を打ち切って、それに代わってこれが実施されるため、一部の高額所得者をのぞく八、九割の納税者が増税になるということがあきらかにされました。庶民には増税、大企業と大金持ち中心の減税では、不況にさらなる逆風を吹きつけるだけであります。

 消費大不況を打開するために、私たちは三つの角度からの緊急対策がどうしても必要だと考えます。

 第一は、庶民減税による直接の消費拡大です。そのためには消費税を三%にもどし、庶民に手厚い所得減税をおこない、総額七兆円の減税を実行することをもとめている日本共産党の提案がもっとも有効であります。

 第二は、国民の将来不安をなくす対策であります。社会保障と雇用への不安、これらの将来の不安が、現在の消費冷え込みの重大要因になっています。この点で医療費の値上げや年金改悪など社会保障の連続改悪をやめさせること、労働法制の改悪に反対し、雇用をまもり労働条件の改善にとりくむことは、当面の消費の拡大、景気対策にとっても急務であります。

 第三は、日本産業の主役である中小企業と農家が押しつけられている苦境が、消費低迷と経済悪化をもたらしているということであります。とくに中小企業が密集する地域あるいは農村地域にいきますと、痛切な形でこれが景気悪化にひびいているということを実感させられます。中小企業と農家が、その営業と生活の見とおしをもてるような対策をとること、これも景気対策にとって急務であります。

 わが党は公約としてたたかった、「深刻な不況から国民生活をまもる緊急要求」の実現のためにあらゆる力をつくすものであります。「緊急要求」の実現をめざす運動は、「連合」系労組、商店街、医師会、農業団体など、これまでの枠をこえて幅広くひろがっています。不況から国民生活を防衛する国民的運動を発展させるために、日本共産党はひきつづき全力をあげるものであります。

 わけても消費税を三%にもどすという公約の実行のために、国会内外で力をつくしたいと思います。今回の選挙の結果、わが党は参議院で予算をともなう議案提案権を獲得し、消費税減税法案を参議院では単独でも提出できますし、そのための法案作成作業はすでに終えています。同時に可能なかぎり他の野党にも働きかけて、共同でその実現をめざすことを追求しています。

 労働基準法の改悪をめぐるたたかいは、いま重大局面にさしかかっています。衆議院でわが党以外の諸党によって「修正」され、いま参議院で審議されている法案は、新裁量労働制が基本的にそのまま残り、労働時間の男女共通規制がおこなわれなかったなど、労働基準法の根幹をなす八時間労働制を根本から踏みにじるものになっています。

 わが党は参議院段階で国民の要望にこたえた修正案を提起し、野党間の協力を追求してきました。参議院労働・社会政策委員会の吉岡吉典委員長は、徹底審議と修正協議の道理ある提起をしました。しかし自民、民主などの諸党によって、本日にも委員会で強行の危険があります。わが党は最後までこの暴挙をくいとめるために力をつくします。そして国会の結末がどうあろうと、労働法制の改悪中止と抜本的改正をめざして、国会でも、職場でもひきつづきたたかいの発展をはかるものであります。

金融問題――自民と一部野党による「合意」と日本共産党の立場

 つぎに金融問題についてのべます。

 政府・自民党が、今国会に提案した「ブリッジバンク」構想を中心とする法案は、すでにすっかり破たんしてしまいました。「ブリッジバンク」構想にたいして、わが党は、税金投入を前提にしているという点できびしく反対してきましたが、それに加えてこのしくみが中小金融機関にしか適用できず、大銀行には使えないわく組みであるということが明りょうになりました。その一方で、長銀(日本長期信用銀行)問題が深刻化してきました。

 そのもとで政府・自民党がとった態度というのは、一つは、長銀への税金投入はあくまで強行するということ、いま一つは、大手銀行を救済するための十三兆円の税金投入のわく組みはあくまで温存するということでありました。

 日本共産党は、どんな形であれ税金投入には反対するという立場であり、この点では他の野党と立場を異にしていますが、いまの二つの点での自民党の暴走をくいとめるという点では、他の野党とも共通する立場にたっています。そういう立場から、この二点での野党協力のために、わが党は力をつくしてきました。

 しかし、十八日に自民党と民主党、平和・改革との党首会談で合意された内容は、この協力の前提を根本からくつがえすものとなりました。この合意は形式や言葉は三野党案を採用しているようにみえますが、実質は政府・自民党の思惑にそったものであり、政府・自民党案以上に、国民の税金を際限なく投入するものとなっています。この合意の「解釈」をめぐって、いま当事者たちからさまざまな発言がおこなわれていますが、合意そのものの客観的内容はきわめて明りょうであります。

 第一に、長銀にたいしては「特別公的管理等」で対処するとされ、破たん認定なしに長銀への税金投入をおこなうことが確認されました。「特別公的管理」―「一時国有化」で処理するにせよ、「等」という一字が意味する税金を使っての資本注入のわく組みによって処理するにせよ、長銀の不始末に巨額の税金を投入することにかわりはありません。

 第二に、「金融機関の過小資本状態の解消等、金融システムの早期健全化スキームを早急に検討する」という合意がもりこまれています。これはまぎれもなく銀行救済のための税金投入のしかけを温存するというものであります。しかもこれまで十三兆円の資本注入のわく組みの対象は、「健全銀行」に限定されていましたが、これを「過小資本銀行」、すなわち不健全な銀行にまで資本注入を拡大する。その適用を拡大するという方向も、「検討」が合意されたのであります。

 第三に、この合意には、「一般の金融機関からの不良債権の買い取り」までもりこまれています。こんな内容は政府原案にも、三野党案にもふくまれていなかったものですが、交渉の過程で自民党が提起したものを野党が受け入れた、そして合意にもりこまれることになりました。「健全」な金融機関にたいしても、不良債権の買い取りという形での、巨額な税金の投入という道がひらかれました。不良債権を買い取ったうえで、二次的損失がでれば、すべて財政資金の支出にかぶさってくるわけです。ここには十七兆円のわく組みを使うというわけです。これまで十七兆円の税金投入のわく組みというのは、「破たん処理と預金者保護のため」というのが大義名分でしたが、これを「健全」な生きている銀行の救済のために、公然と使う道がひらかれたというのが、三つ目の重大な点であります。

 全体としてこの合意は、長銀への税金投入の点でも、大手銀行救済のための税金投入のわく組みを温存する点でも、政府・自民党の立場への実質的協力の道に一部野党を引き込んだものであります。そればかりか、銀行救済のための税金投入をいっそう野放図に拡大するというとんでもない改悪が、どさくさまぎれのうちにおこなわれたというのが、ことの真相です。

 こうした流れの底流に、銀行からの政治献金を媒介とした巨大金融機関と自民党との癒着があることをきびしく指摘せざるをえません。またこの合意が首相の訪米の「手土産」としておこなわれたことに象徴されるように、アメリカからの不当な圧力への追随という問題もあります。この流れに協力しつづけようとする党は、国民の批判をまぬがれません。

 野党の中にはこうした理不尽な流れにくみしない党もあります。どんな形であれ、長銀への税金の投入は反対だというのが国民多数の声です。そのもとで合意をめぐって、これに加わった与党と一部野党との間に、「解釈」のちがいや矛盾も表面化しています。世論と運動によっては、この合意の実行をくいとめることもありうることです。わが党はこの不当な合意にくみしない政党、国民の世論と運動と力をあわせ、自民党と一部野党との「修正」合意による法改悪を許さないために、全力をあげるものであります。

 日本共産党は、この問題でも建設的対案をしめしてきました。金融機関の不良債権の処理は、銀行業界の自己責任、自己負担の原則でおこなうべきであること、国民の血税はいっさい使うべきでないことを、一貫して主張してきました。この原則にもとづく独自の法案を国会に提出しています。

 私たちの立場というのは、たんに国民の血税の不当な投入がけしからんというだけのものではありません。この原則を確立してこそ、金融業界に健全な自己規律が確立するし、ほんとうの金融システムの信頼が回復できるという立場にたっての提案であります。そのことは一九九〇年代初めに、商業銀行の破たん処理は銀行業界の自己責任によっておこなうというルールを確立したアメリカの教訓でもあきらかです。わが党はこの立場から、日本の金融業界に健全でまともなルールを確立させるために、ひきつづき力をつくすものであります。

ガイドライン――この秋の重大課題、アジアの平和にとっての国際的責務

 つぎにガイドライン問題についてのべます。小渕内閣は日米首脳会談での「対米公約」をふまえて、この秋にでもガイドライン関連法案を成立させようとしています。さらに北朝鮮のロケット発射事件を口実にして、東アジア地域に軍事的緊張の悪循環をもたらす戦域ミサイル防衛構想(TMD)の共同技術開発を推進することが、日米両国政府で合意されたことも重大です。これらの日米安保体制の侵略的強化、とりわけガイドライン関連法案に反対し、これを阻止するたたかいは、この秋の重要課題となっています。

 この間解明してきたように、ガイドラインとはアメリカの無法な干渉戦争に日本を自動参戦させるしくみであります。日本がひきうける行為は、憲法が禁止した戦争行為そのものです。しかもその対象範囲とされる「周辺」とは、事実上無制限、無限定です。

 しかも自衛隊の出動にたいして国会の承認を排除していることは、国民主権にたいする正面攻撃といわなくてはなりません。軍隊の出動というのは、相手国と決定的な敵対関係にはいることであり、政府が勝手に決められることではありません。現行法では自衛隊の防衛出動でさえ国会承認これは事前、事後をふくむわけですが、国会承認を必要としているのに、日本が武力攻撃をうけていないもとでの米軍への参戦を、国会を無視して政府の独断でおこなうなど、絶対に許されるものではありません。

 このしくみづくりは、自衛隊のみならず、自治体や民間をふくめて、日本国民を危険な干渉戦争の協力にかりたてるだけでなく、アジアに紛争と危険を生みだす新しい温床をつくるという点でも、きわめて重大であります。

 台湾への介入戦略への協力はその一つであります。クリントン大統領が先日の訪中にさいして、「一つの中国」を強調したことは注目されることですが、アメリカが「台湾関係法」にもとづく台湾への介入戦略を放棄していないことも明白であります。日本政府はこの介入戦略に、ある意味ではアメリカ以上に硬直した形で、忠実にしたがっています。政府は、日米安保条約での「極東」の地理的範囲に台湾をふくめる一九六〇年当時の見解に、いまだに固執しています。私たちがこのことを国会でただすと、「極東」の範囲に台湾がはいるということを、いまでも政府答弁として明言します。しかし、この見解というのは、台湾の政権を中国の正統政権としてみなしていた時代の地理的規定であります。台湾をいまだに日米安保体制の適用範囲とみなし、ガイドラインの発動対象とする態度に固執するのは、「一つの中国」というわが国の外交方針の基本とも根本的に背反する、そして中国の内政に干渉する、時代錯誤の道理のない態度です。

 ガイドラインは、東南アジア地域も発動の対象としていることに注意をはらわなければなりません。アメリカは、インドネシアでの五月の政変の時期に、インドネシアの政治危機への関与をアジア・太平洋地域の最重要政策の一つにあげました。在沖縄米軍の陸軍特殊部隊や空軍特殊部隊などがインドネシアに出動しました。米軍特殊部隊によるインドネシア陸軍特殊部隊への訓練や援助の実態も暴露され、米国をふくむ世界各国から非難の声がわきおこりました。

 ガイドラインとその立法化を阻止することは、日本国民の安全をまもるためのみならず、アジア諸国民の平和と安全にたいして、わが党がおっている重大な国際的責務でもあります。すでに「新ガイドラインとその立法化に反対する国民連絡会」が結成され、幅広い団体を結集して運動をひろげています。地方自治体でも自治体動員に反対する動きがひろがりつつあります。急速に国民的な世論と運動をひろげ、このたくらみを絶対に許さず、粉砕するまでたたかうということを心からよびかけたいと思うのであります。(拍手

野党共闘――磅余曲折はあっても前進をかちとる客観的条件はある

 つぎに、野党共闘についてのべます。二中総決定では、野党の状況について「”総与党化”の体制に亀裂が起こっている」こと、「そこには、政権がらみの党略的な矛盾にとどまらない、自民党政治と国民の利益の対立の一定の反映がある」こと、そしてそういうもとで日本共産党が、「国民の利益に合致する問題での一致点があるかぎり、どの野党とも一致点での共闘をすすめるという態度を堅持する」ことをあきらかにしました。

 この間、この方針にもとづく努力がはかられ、一定の成果があがりました。先の通常国会の最終局面での、民主、自由、共産の三党での内閣不信任案の共同提出はその一つであります。今国会の冒頭では、首相指名選挙で民主、自由、共産の三党が第一回目から野党統一候補に投票し、決選投票では、全野党が統一候補に投票するという流れをつくりました。これらは”大異を保留して大同を追求する”という立場からの、おおいに評価できる意義ある方向でした。「情報公開法」についても、日本共産党をふくむ野党六党で、法律の目的に国民の「知る権利」を明記することなど、共同修正案を提起しましたが、この実現に力をつくしたいと思います。

 野党共闘をめぐっては、こうした前にむかう流れとともに、逆流も生まれています。金融問題の重大局面では、一部野党と自民党との合意という逆流がつくられました。先の国会での大店法の廃止、今国会での労働基準法の改悪問題などでも、自民党に協力する逆流が支配的になりました。この根底には、二中総決定が指摘したように、「大きな意味での政治の流れとしての”総与党化”の大枠が依然としてある」という事実があります。わが党は、こうした逆流にたいしては、野党協力を大局的に前進させ、発展させるという立場から、事実と道理にもとづいて、率直な批判と論争をおこなうものであります。

 いま野党各党には、自民党政治の大枠のなかでの「政権交代」という立場にとどまるのか、部分的な問題であれ、自民党政治の大枠を打破する方向にすすむのか、一歩をここでふみだすのか、という問題が問われています。

 野党間に一致点があれば、将来の展望のちがいは横において、当面する切実な課題で協力しあって国政を動かすという共闘の論理を、おたがいに確立していけるかどうか、このこともいま問われています。将来像のちがいを理由に、あるいは反共主義を優先させて、当面の問題での共同の道を閉ざすなら、国民の要望に反し、自民党を利する結果となります。

 このように野党共闘をめぐっては、前にむかう流れとともに、いろいろな複雑な流れもあります。しかし、自民党政治の政治的破たんの深刻さ、国民との矛盾の深さからみれば、野党間の協力がさまざまt珱余(うよ)曲折をへながら前進していく客観的条件はあります。

 わが党は、国民の要望にこたえて、一致点での野党協力をひろげ、発展させるために、ひきつづき誠実に力をつくすものであります。とくに、自民党の横暴をくいとめる共闘とともに、一致する政策を実現する共闘の実現に力を入れたいと考えています。選挙戦で最大の公約にかかげた消費税減税での協力のために、ひきつづき努力をはかります。金融問題でも、複雑な逆流がつくられたもとでも、道理のない税金投入の拡大を阻止するための共同を追求したいと考えています。ガイドライン問題でも、国会無視の発動に反対するという点では、野党協力の客観的条件はあります。

小渕内閣の退陣、早期の解散・総選挙をつよくもとめる

 この項の最後に、小渕内閣への基本姿勢についてのべておきたいと思います。小渕内閣は、発足二カ月にして政権担当の能力も資格もない実態を露呈しました。「経済再生」をかかげながら、実体経済の悪化には打つ手なし、銀行支援の血税投入をいっそう野放図に進めることだけに熱中するというのが、この内閣のやってきたことのすべてです。これは参議院選挙でしめされた民意に根本から背く態度です。

 そもそも自民党は、参議院選挙の比例代表選挙で、投票者の四人に一人の支持しかえられませんでした。小渕内閣は、衆議院の”虚構の多数”にささえられた”虚構の内閣”であり、政権の存立そのものが民意に背くものであるということを、あらためて強調しなければなりません。

 日本共産党は、小渕内閣の退陣を強くもとめるものであります(拍手)。そして今日の政治のゆきづまりを打開し、民意にそくした国会をつくるため、早期に衆議院を解散し、総選挙で国民の審判をあおぐことを、中央委員会としてあらためて要求するものであります。(拍手

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三、総選挙にむけた政治姿勢――民主的改革の路線を国民多数の合意に

 つぎに早期の解散・総選挙を要求する党として、この政治戦にむけてわが党がどのような政治姿勢でのぞむかについて報告します。総選挙の選挙政策は、情勢の進展にそくして適切な時期に発表します。ここでは基本姿勢についてのべたいと思います。

経済の民主的改革――その二つの内容

 この選挙は、当面する諸問題についての打開策とともに、二十一世紀の日本の国づくりの大方向が問われるたたかいとなります。

 わが党は、党綱領と第二十一回党大会の決定があきらかにした二十一世紀の日本の将来像―民主的改革の路線を国民多数の合意とする努力を、この選挙にむけて正面から追求するものです。参議院選挙でも、これを多面的に語ったことが新鮮な共感を呼び起こしたわけですが、その努力を全面的に発展させたいと思います。

 その第一の柱となるのが、経済民主主義の実現―経済の民主的改革の路線を、多くの国民に理解してもらうとりくみです。経済の民主的改革といった場合、大きくわけて二つの内容があります。

 一つは、大企業の活動にまともなルールをつくるということです。すなわち大企業の民主的規制という政策であります。日本の大企業の横暴の異常さは、国際的にも”ルールなき資本主義”と悪名が高いわけですが、労働条件、中小企業、環境問題、金融問題など、さまざまな分野での大企業の横暴を、政治と行政の力でおさえ、国民の暮らしをまもるルールをつくるということが、私たちのめざす経済民主主義の第一の大きな内容です。

 いま一つは、財政の民主的改革と産業政策の民主的転換ということです。財政の民主的再建と社会保障の充実については、「公共事業が年間五十兆円、社会保障への公費支出が年間二十兆円の逆立ち財政の転換」ということを訴えてきました。また「軍事費を削減し、国民の暮らしにまわせ」というのは、私たちの一貫した主張であります。こうした方向への抜本的な方向転換が重要であります。産業政策では中小企業を日本経済の主役として振興をはかること、食料自給率の抜本的な向上にむけて目標をもってとりくむことと農家経営の安定などが重要な課題となります。

 深刻な不況のもとで、それを打開するためのわが党の緊急政策は、広範な国民から期待と支持がよせられ、各界の有識者からの評価もひろがっています。現在の問題での緊急政策では、相手側もなかなかわが党の主張にたちうちできません。これはいろいろな論戦をやるとたちまちあきらかになります。そこで相手側の攻撃として、論戦を現在の問題から、将来の問題にうつし、日本共産党が主張する民主的改革をすすめたら、日本経済の将来像がなりたたない、こういうところに焦点をあてた攻撃がおこなわれています。”共産党がいまいっている政策は国民の要望にかなっているものかもしれないけれど、そんなことをやっていたら日本の経済は先ざきたちゆかなくなってしまう”、こういう攻撃を相手の側はやっています。

 それにたいして私たちの政策はけっしてそういうものではない。いましめしている緊急政策は、経済の民主的な抜本的改革の方向と合致する方向のものであり、たしかな裏付けをもった政策であることを、経済論、財政論、税制論、金融論などあらゆる面であきらかにしていくことが大切です。相手のいまの新しい攻撃ともかみあって、わが党がめざす民主的改革の将来像について、太い線で理論的・政策的な論立てをあきらかにし、広範な国民の理解をえる努力がきわめて重要であります。

日米安保廃棄派が国民多数派になる努力を、正面から追求する

 第二の柱は、日米安保廃棄派が、国民世論でも多数派になる努力を、正面から追求することです。

 日米安保をめぐっては、安保体制のもとでの基地被害の害悪は、さまざまあります。この間とりあげてきた、低空飛行訓練の問題や沖縄の海上基地建設問題など、さまざまな基地被害の実態を告発し、それをやめさせるたたかいはもちろん重要です。それから先ほどのべたガイドラインとそれにもとづく立法措置のたくらみなど、安保の侵略的強化と変質に反対するたたかいを発展させることは、さしせまった重要課題です。

 同時に強調しなければならないのは、安保体制の個々の害悪とのたたかいをやっていれば、自然に安保廃棄派が多数になるかというと、そうではないというところに注意をむける必要があるということです。これは自然発生的には多数になりません。党としての独自の努力があって、はじめてこれを国民の多数派にすることができます。

 安保肯定派は、いま世論調査をやればまだ多数をしめているわけですが、そのうち”安保万歳”派といいますか、積極的に安保に賛成だという人々は、そんなに多くはないと思います。ほんとうの気持ちは安保や基地がなくてすめばよいと考えながら、なくしたら不安だという消極的な肯定派が少なくないと思います。そういう国民の不安や疑問とかみあって、いわば”そもそも論”的な安保廃棄の解明がたいへん大事であります。このことを、私はいくつかの問題について、考えてみたいと思います。

 たとえば「そもそも安保をなくすことはできるのか。アメリカがノーといったらどうするのか」、という疑問があるでしょう。これにたいして、国民多数が合意すれば、安保は解消できるんだということを、おおいに語っていくことが大事であります。安保条約第一〇条には、どちらかの政府が廃棄を通告したら、一年後にはこれを解消することが明記してあります。一〇条による通告で廃棄をおこなうというのが、わが党の方針です。一つの基地の返還では、日米両国政府の合意が必要ですが、安保解消は日本政府の意思がはっきりすれば可能です。国民の合意が成熟すれば可能です。ここを語っていく必要があります。

 それから「安保をなくして日本の防衛は大丈夫か」という質問もよくだされます。それにたいしてまず強調されなければならないのは、在日米軍は日本の防衛のためにいるのではない、という事実であります。すなわち、海兵隊にせよ、空母機動部隊にせよ、海外出撃を任務とした遠征軍が在日米軍の主力です。この点で日米安保体制は、一般の軍事同盟とも性格を異にした侵略的性格を色こくもっている。安保の存在こそ危険の根源であり、その廃棄こそ日本の安全にとって巨大な一歩であります。このことをおおいにしめしていく必要があります。またこの問題については、自衛隊についてわが党が段階的政策をもっているということをあきらかにしてゆくことも大事です。すなわち安保解消と同時に自衛隊を解消するのではなく、憲法九条の完全実施は国民的合意の成熟をもっておこなうというわが党の方針をしめしていくことも大切であります。

 それから「アメリカとの関係は悪くならないか」、こういう疑問もよくあります。これにたいして、安保の鎖を断ちきった日本は、アメリカと対等・平等の関係にたった真の友好関係をうちたてる。主権尊重、領土不可侵、紛争の話し合い解決、平等互恵の経済交流を内容とする日米友好条約を締結するというのが、わが党の方針であるということを訴えていくことも、おおいに重要であります。わが党は、アメリカの安保や外交における覇権主義や帝国主義にはきびしく反対しますが、アメリカ国民との真の友好を望んでいる党であります。

 それから「安保を破棄したら、日本が世界で孤立しないか」、という声もだされるでしょう。これにたいして、非同盟こそ世界の本流であるという大きな動向をしめしていくことが大切です。とくにアジア二十三カ国では、日本と韓国をのぞくすべての国が、非同盟諸国首脳会議に参加しています。中国はオブザーバー参加ですが、それをふくめれば二十一カ国が非同盟諸国首脳会議に参加している。独立・中立の日本は、この世界の大きな進歩的流れに合流するという展望をもっているということをあきらかにしてゆくことが大事であります。

 この点で最近の情勢の展開のなかで、印象深かったのは、米中関係で「建設的で戦略的なパートナーシップ」が確認されたことです。先日の日中両共産党首脳会談でも、江沢民総書記は、この関係を「同盟を結ばず、対抗的でなく、いかなる第三国にも向けられたものでない」と説明しました。すなわちアメリカは中国との関係では、非同盟型の関係、いわば二十一世紀型の関係を確認せざるをえないのに、日本にたいしては軍事同盟型の関係、二十世紀型の時代錯誤の遺物の押しつけをつづけようとしている。これが歴史に逆らうものであるということは、ここからも浮き彫りになります。非同盟・中立こそ、二十一世紀にむけた世界の本流であります。

 それから、こういう疑問もあるでしょう。「安保をなくしたら、かえって自衛隊を軍拡することになるのではないか」。これにたいしては、日米安保こそ軍拡の原動力であるということをおおいにあきらかにしてゆく必要があります。安保条約第三条には、日米双方の軍事力を「維持し発展させる」と、軍拡の義務づけがされています。安保体制の歴史というのは、米軍の補完部隊として、いかに自衛隊の役割と機能を拡大していくかの歴史でありました。安保解消によってこそ、日本は軍拡の重荷から解放され、抜本的な軍縮への道がひらかれる。巨額の軍事費の浪費を国民生活向上にふりむける道がひらかれるのであります。

 以上のような諸点は、大会決定をはじめ、これまでさまざまな機会に解明してきたことですが、いま広い国民のなかで、これをおおいに語り、理解をえることが、大切であります。

 二十一世紀にむけて、どうやって安保廃棄派を国民の多数派にしてゆくかということは、民主連合政府樹立への国民的条件を成熟させてゆくための最大のかなめをなす課題であります。経済民主主義の実現という点では、国民的合意の度合いに応じて、政策の実現にも、いろいろな幅がありえます。しかし、安保存続か廃棄かという問題は、国民にどちらかの選択が問われる問題です。この問題で党がおおいに積極的役割を発揮することは、未来に責任をおう、歴史に責任をおう党としての、重大な責務であります。安保廃棄派を国民の多数派にしてゆくための独自の粘り強い宣伝、対話、運動を、壮大な規模で展開することを、中央委員会としてよびかけたいと思うのであります。(拍手

日本共産党の政権論について

 つぎに日本共産党の政権論について、のべたいと思います。不破委員長が「しんぶん赤旗」(八月二十五日付)のインタビューでおこなった日本共産党の政権論についての解明は、大きな反響をよびおこしました。これは、政権構想の直接の提唱ではなく、わが党がこういう政権論をもっている、政権問題についてこういう用意があるということとして解明したものですが、国民はこれをたいへんリアルな問題として、とらえています。これは冒頭にのべた新しい情勢の劇的な発展を反映するものでした。

 日本共産党は、きたるべき総選挙にむけて、安保条約の廃棄、大企業中心主義からの根本的転換など、国政革新の課題を実現する民主連合政府の樹立への展望を大きく打ちだして、この政権の実現にむけた国民的合意をひろげるために、力をつくします。すでにのべてきた安保廃棄派を国民の多数派にすることをはじめ、わが党の民主的改革の路線への国民的支持をひろげる努力は、その中心的内容をなすものであります。

 同時に総選挙がつくりだした結果が、民主連合政府をつくる条件はまだないが、自民党が衆議院でも多数を失い、野党が協力すれば野党政権が実現しうるという過渡的状況となる可能性がおおいにあります。このときにわが党が民主連合政権以外の政権構想ははなから視野にない、政権問題にははなからノータッチという態度をとることになれば、政治の改革をねがう国民の期待にこたえられないし、現実の政治に責任をおう政党の役割をはたせないということになります。そのときの対応として、自民党の政権たらい回しを許さず、暫定政権という政局打開の政権を実現するために、党として積極的に協議に参加する用意がある、このことも私たちは、総選挙にむけて国民に公然とあきらかにして、選挙戦をたたかいます。

 そうした政治的局面が生まれたときに、暫定政権が実現するには、いくつかの条件が必要となってきます。

 第一に、総選挙の結果にしめされた国民の切実な要望にそって、国民生活や民主主義にかかわる重大な問題で、自民党政治を部分的にせよ打破する方向に一歩ふみだすという客観的な条件が野党間に生まれること、そしてその条件にそくして共同して政権をつくる合意が野党間につくられることです。つまり、そうした共闘の客観的条件とともに、共闘の意思が必要となります。そのさい一部にある反共主義を優先させる「排除の論理」を克服することも大切になってくるでしょう。また、そのためにも、いま野党間で国会運営や政局打開のための共闘にとどまらず、一致する政策を実現する共闘がどれだけ実り、積み重ねられるかは、重要な意義をもつものです。

 第二に、不一致点は横において、当面する緊急課題で大同団結するという道理ある共闘の論理にたつということが大事になってきます。とくに安保条約については、安保廃棄論者であるわが党と、安保維持・堅持論者である他党との連合政権ということになれば、つぎのようなあつかいが必要になってきます。

 一つは、安保条約についての立場のちがいを、政党としてはたがいに相手におしつけないということです。すなわち党としては安保についての立場のちがいを留保して、政権に参加するということです。わが党は、暫定政権のもとでも、安保廃棄派が国民の多数派となるような独自の運動をおこなうことはいうまでもありません。

 いま一つは、暫定政権としては、安保条約にかかわる問題は「凍結」するという合意が必要となります。すなわち、現在成立している条約と法律の範囲内で対応すること、現状からの改悪はやらないこと、政権として安保廃棄をめざす措置をとらないこと、これらが「凍結」ということの基本点でしょう。ガイドラインなど安保改悪の流れのなかで、この「凍結」の合意をつくること自体が、「よりまし」の実質をもつこともありうる重要な意義をもってきます。世論と力関係にそくして、安保条約に関連する問題で、双方の協議によって、一定の部分的改良をかちとる可能性を積極的に追求することはいうまでもありません。

 第三は、総選挙で日本共産党が新たな躍進をどれだけかちとるか、このことを中心に国会の力関係をどれだけ前向きに変えるかが、選挙後の政権問題についても、決定的に重要な意味をもってくるということです。かりに自民党が大きく多数を失っても、日本共産党が躍進をかちとれなければ、国民の要望にそくした暫定政権の実現は困難となってくるでしょう。どういう政策が暫定政権がとりくむ柱になるかも、総選挙での国民の審判いかん、とりわけ日本共産党が新しい国会でどういう地歩をしめるかに大きく左右されるでしょう。

 わが党のこの方針は、社会党がたどった道とは根本的にちがいます。まず一つは、細川政権にせよ村山政権にせよ、社会党が参加した政権というのは、政権の性格そのものが「自民党政治を継承」することを基本方針としており、自民党政治のわく組みから一歩でもふみだすという前向きの内実をもちませんでした。二つ目に、社会党が参加した政権は、安保条約についても、政権としていかなる歯止めももうけず、日米安保共同宣言や新ガイドラインなど安保改悪の路線を推進してきました。三つ目に、社会党は党として安保問題を保留して政権に参加したのではありません。すでに細川政権に参加する以前の「九三年宣言案」で、「安保条約の許容」を党としても決定し、村山政権のもとでは、たいへんな「トップダウン」の方法で「安保堅持」を党としても決定しました。これらの点をみるならば、わが党がいまあきらかにしている政権論とは天と地のちがいがあることは明りょうでしょう。

 民主連合政府が実現する過程で、こうした暫定政権が実現することは、限定的な任務ではあっても、はじめて主権者である国民がみずからの声で国政を動かす歴史的なできごととして、画期的な意義をもつことになるでしょう。その国民的体験をつうじてより根本的な政治の改革をめざす国民の合意が大きく促進されるでしょう。私たちは、そういう展望をもって、きたるべき総選挙をはじめとする今後の政局にたちむかうものであります。

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四、アジアの平和と進歩のための日本共産党の活動

 つぎにアジアの平和と進歩のための日本共産党の活動について報告します。

 第二十一回党大会決定は、独立・中立の日本が、憲法の平和原則を生かして、東アジア諸国と平和の関係をつくるために、積極的、能動的に力をつくすということを強調し、その内容として六項目の提起をおこないました。これは、独立・中立の日本がとりくむべき外交方針であるとともに、わが党が野党としてもその促進のために奮闘すべき内容であります。

 こうした見地からわが党は、アジアの平和と進歩のための積極的外交の努力をはかってきました。それは二中総以来めざましい進展がはかられつつあります。私たちは、この努力をひきつづき大きく発展させたいと思います。このことは安保廃棄と非同盟・中立の日本への国民的合意を成熟させていくうえでも、決定的な力の一つとなるでしょう。

日中両党の関係正常化と首脳会談の歴史的意義

 まず、日本共産党と中国共産党との関係正常化と首脳会談についてです。

 両党関係正常化にむけた接触と措置は、すでに昨年からとられはじめていましたが、具体的にこれが大きく実をむすんだのは、二中総以降のことでした。六月に日中両共産党の関係正常化の正式の合意がなりました。この合意では、過去の中国側のわが党への攻撃が干渉の性格をもった誤りと認め、「真剣な総括と是正をおこなった」ことが確認されました。これは中国側の態度表明として、過去に前例のないふみこんだものであり、その誠実で勇気ある態度をわが党は高く評価しました。覇権主義とのわが党の原則的なたたかい、自主独立の路線が、歴史の検証をうけて道理あるものであったということが証明されました。この結果は、当時のたたかいを経験した多くの同志たちをはじめ、全党から深い感慨をもってうけとめられました。

 これにつづく七月の両党首脳会談は、日中両党関係のみならず、日中両国関係にとっても、歴史的な意義をもつものとなりました

 これにつづく七月の両党首脳会談は、日中両党関係のみならず、日中両国関係にとっても、歴史的な意義をもつものとなりました。会談での主題は、日中両国関係、核兵器廃絶の問題、非同盟の問題から、世界の共産主義運動の前途の問題におよびましたが、「毛沢東指導部とも、トウ小平指導部ともちがう、理性的で冷静な話し合いができる相手」だという不破団長の感想は、代表団全体の共通の実感でもありました。首脳会談は党内外に広範な反響と共感をよびおこしました。党創立記念講演会での不破委員長の講演は、詳細にその経過と内容を報告しています。

 とりわけここでは、首脳会談で「日中関係の五原則」を提起した意義についてふれたいと思います。

 不破委員長は、日中関係を律すべき五原則として、(1)日本は、過去の侵略戦争についてきびしく反省する。(2)日本は、国際関係のなかで、「一つの中国」の立場を堅持する。(3)日本と中国は、互いに侵さず、平和共存の関係を守りぬく。(4)日本と中国は、どんな問題も平和的な話し合いによって解決する。(5)日本と中国は、アジアと世界の平和のために協力し合う―という原則を提起しました。中国側は、全体としてこれを肯定的に評価しました。とくに、第一と第二の原則は、中国にとって死活的な重要性をもつことを、江沢民総書記との会談、胡錦涛政治局常務委員との会談の双方で、中国側は、強調しました。

 二十一世紀にむけてこれらの原則がしっかりと確立すれば、日中間での安全保障にかかわる懸念や不安を、双方においてとりのぞくことができます。平和共存などの原則は、これまでも日中両国の政府間で確認されてきた原則ですが、それがたえず第一と第二の原則をめぐる日本側の逆流によって脅かされてきたのがこの間の経過です。したがって、第一と第二の原則の確認のうえに、第三の相互不可侵と平和共存の原則などが確認されることは、日中両国の平和と友好が強固な基盤のうえに築かれることを意味します。それは安保強化派がその口実の一つとしている「中国脅威論」の「根拠」をとりはらうことにもなります。そしてこれは、将来の民主連合政府のもとで、わが国の平和と安全の保障をなすものともなります。「日中関係の五原則」の提起は、二十一世紀にむけた両国の平和と友好のレールをしいたものとして、歴史的な意義をもつものです。

 両党首脳会談のあと、訪日した中国の政府と党の関係者が、わが党本部を訪問するなど、すでに多面的な交流が開始されていますが、研究・視察代表団の交換など、実のある友好・交流の発展をはかっていきたいと考えています。

韓国と北朝鮮について

 つぎに、韓国と北朝鮮についてのべます。

 韓国では、この間、軍人大統領に終止符がうたれ、二代にわたって文民大統領が誕生し、今年二月にはかつて軍事独裁政権によってきびしい弾圧をうけた、金大中氏が大統領に就任しました。世論の追及にもとづいて、二人の元軍人大統領の逮捕、有罪判決がなされ、言論、思想、学問の自由も拡大するなど、韓国の民主化の前進には注目すべきものがあります。朝鮮への植民地支配に命をかけて反対をつらぬいたわが党の伝統は、韓国国民との友好の共通の基盤ともなるものです。今後、条件が熟する度合いにそくして、歴史的にも深い関係をもつこの隣国と、さまざまなレベルでの友好と交流の発展をはかっていきたいと考えています。

 この間、北朝鮮によるロケット発射事件が起こりました。これは当初、米国政府によって「ミサイル発射」と発表されましたが、その後、米国政府は、「小型の人工衛星を軌道にのせようとして失敗したという結論をえた」と発表しなおしました。このロケット発射が人工衛星だったとしても、事前通告なしでの打ち上げは、国際法上の明りょうな違法行為であります。こうした違法行為がおこったときに、わが国がどう対処するか。冷静で道理ある対処をすることの重要性を、とくに強調したいと思います。

 一つは、相手が国際ルールをまもらない国だけに、相手の行為のどこが国際法に違反しているかを厳格にあきらかにして批判するという道理のある態度が大切だということです。それでこそ、国際世論も結集できることになります。北朝鮮だけにたいしての要求をするとすれば、その要求の道理と根拠をはっきりしめさなければ、逆にわが国が道理を失う立場にたたされることになります。また、この問題との関係でも、対米追従外交をみなおすことが重要であるということを強調しなければなりません。アメリカのスーダン、アフガニスタンなどへの武力行使にたいしては、事実関係も確かめずに「理解」をするという国では、今回のような事件への対処にさいしても、国際社会に十分な説得力をもたないでしょう。

 いま一つは、軍事的対応の悪循環に陥らないということです。この点では日本が憲法九条をもちながら、アジアで最大の軍事大国になっていることへの自覚、アジア諸国からみれば最大の軍事的脅威となっていることへの自覚と、抜本的軍縮への努力こそ重要であります。この事件を、戦域ミサイル防衛構想(TMD)への参加やガイドラインの推進に政治的に利用しようとする策動がありますが、これは事態の悪循環を招き、軍事的緊張をいっそう拡大するものであり、わが党はきびしく反対するものであります。

アメリカ覇権主義の横暴とのたたかい

 つぎに、アメリカ覇権主義の横暴とのたたかいについてのべます。アメリカの軍事的・経済的な覇権主義の横暴とたたかうことは、アジアと世界の平和と安全、諸国民の生活と権利にとって、きわめて重要な課題であります。

 二中総以降のアメリカ覇権主義のもっとも重大な蛮行として、八月のアフガニスタン、スーダンへの軍事攻撃があげられます。これは軍事攻撃の対象を、いわゆる「ならず者国家」の枠をこえて、非国家組織・個人にまで拡大し、「テロ施設の存在」を口実に、主権国家の領土に攻撃を加えたものとして、これまでにない深刻さをもっています。「戦争概念を拡大した米国」との指摘もありましたが、覇権主義の横暴をエスカレートさせたものとしてたいへん重大であります。

 同時に、こうしたアメリカの覇権主義が、国際社会で孤立しつつあるという側面も注目する必要があります。キューバへの「経済制裁」への押しつけは、アメリカの同盟国からも批判がひろがりました。アフガンやスーダンへの軍事攻撃は、国際社会のつよい非難を呼び起こしました。九六年のイラク攻撃やイスラエル政策をめぐって、アラブ諸国での対米批判のつよまりも顕著であります。米国の覇権主義の横暴にたいするきびしい告発と批判が、ひきつづき重要な国際的課題であるということを強調したいと思います。

 アメリカの経済の面での覇権主義も、矛盾と批判にさらされています。アメリカが「グローバル化」などの名のもとで、アメリカ流の経済路線を全世界に強要してきたことへの批判が、わき起こっています。アジア各国の深刻な通貨危機、経済危機のもとで、アメリカ主導のIMF(国際通貨基金)が経済主権を侵害した乱暴な介入をつよめ、アジア各国国民の生活と権利を脅かしていることへの反対の声も高まっています。

 日本にたいしても、多国籍企業の横暴を野放しにする規制緩和の押しつけ、超低金利政策の押しつけ、金融問題での税金投入の強要など、経済主権を無視した干渉をおこなっています。先の日米首脳会談でもアメリカ側は、破たん前の銀行への税金投入をつよくもとめました。自分たちの国では税金を使わない、まともなルールで処理しておきながら、人の国に税金を使えというんですから、こんなに厚かましく道理のない要求はありません。

 こうしたアメリカの経済覇権主義の横暴とたたかい、各国の経済主権をまもるためのたたかい、その立場にたった国際連帯を発展させるたたかいが、いま大事であります。そのなかで、アジアと世界各国の金融市場を荒らし回っている国際的な投機資金にたいする規制を実行させることも急務であります。

核兵器問題をめぐる本流と逆流について

 つぎに核兵器問題についてのべます。インドとパキスタンの核実験は、五つの核兵器保有国による核兵器の独占という体制が、矛盾をあらわにして崩壊したことを意味するものとなりました。このもとで、わが党は両国の核実験につよく抗議するとともに、六月に不破委員長が、核兵器保有諸国首脳への書簡を送りました。ここで提起した、期限を区切った核兵器廃絶の国際協議の開始、未臨界実験をふくむすべての核実験の中止、核兵器の先制的な不使用などの具体的課題への緊急性と現実性は、その後の事態の展開のなかで、いっそう浮き彫りとなりました。

 九月初めに開催された非同盟諸国首脳会議は、期限を区切った核兵器廃絶をめざして二十世紀末までに核兵器全面禁止・廃絶条約をむすぶために、一九九九年中にも国際会議を開催することを新たに提案しました。

 アメリカの支配層の内部でも変化が起こっています。米下院では六月、「核兵器全面禁止・廃絶条約」の早期締結のために、多国間交渉をすることを大統領に求める決議案が、民主党など十五人の議員によって共同提案されました。

 こうした流れとの対比で、日本政府の姿勢―被爆国政府としてあまりにも恥ずべき姿勢がきわだっています。核兵器廃絶の世界的流れに逆らう姿勢がほんとうに顕著です。とりわけ小渕首相が、わが党の国会質問に答えて、「期限つき核兵器廃絶や核兵器使用禁止の主張は、核兵器国を含む多くの国が受け入れておらず、核兵器国と非核兵器国の対立を助長し、核軍縮の進展を妨げる恐れがある」と答弁したことは、きわめて重大であります。

 これまで政府は、国連総会での核兵器廃絶条約の早期締結をもとめる決議に日本が棄権する理由として、「現実的でない」ということをあげていました。これを一歩すすめて、「核軍縮の進展を妨げる」というところまで踏み込んだ。「究極的核廃絶」といって、核廃絶を永久のかなたに先送りする態度こそ現実的でないということが、インドやパキスタンの核実験のひろがりを目の前にして明りょうになってきたなかで、もう一歩すすめて、早期の核兵器廃絶条約の締結を提起すること自体が、”核軍縮に逆らうんだ”、”敵対するんだ”という態度をとったのは、たいへんな許しがたい踏み込みです。こういう立場にたつならば、広島市や長崎市での平和宣言をふくめ、核兵器廃絶をねがう運動が、「核軍縮の進展を妨げる」ものということになるわけで、そういう立場なのかということが、まさに政府に問われるわけであります。

 そういう状況のもとで、核兵器廃絶をめざして、原水禁世界大会の成果にもとづく活動の強化、日本政府の恥ずべき姿勢の追及、党としての国際的イニシアチブの発揮がひきつづきもとめられています。

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五、総選挙といっせい地方選挙での躍進をめざす方針

総選挙の政治目標――「百をこえる議席」という目標に大きく接近

 総選挙といっせい地方選挙での躍進をめざす方針について報告します。

 まず総選挙の政治目標についてであります。党大会決定は、民主連合政府をめざして、「第一段階の目標として、衆議院に百をこえる議席、参議院に数十の議席をもち、国会の力関係のうえでも自民党と正面から対決できる力量をきずきあげる」ということを提起しました。きたるべき総選挙では、「衆議院に百をこえる議席」という目標に、大きく接近することをめざしたいと思います。激動の情勢のもとで、わが党が大きく前進する条件は存在しています。

 比例区については、こんどの選挙でも「比例を軸」に政党選択を正面から問うことは、基本方針であります。前回の総選挙では、小選挙区比例代表制という新制度が導入されての初めての選挙だったので、比例ブロックごとの責任目標を設定しましたが、今回はそうした責任目標の設定はしないことにしたいと思います。すべての比例ブロックで有権者比の得票目標への接近・実現をめざし、最大の議席増をはかることを目標とするようにしたいと思います。

 小選挙区についてですが、参院選の結果を小選挙区ごとにみますと、比例票でみてわが党が一位の小選挙区が十二選挙区、それ以外でも自民党を上回っているところが、四十二選挙区あります。前回小選挙区で獲得した議席は二議席ですが、そこからの大きな前進をかちとりうる条件があります。すべての小選挙区で得票の躍進をめざすとともに、可能なかぎり議席獲得をはかりたいと思います。都道府県の責任で、重点的な選挙区を積極的に設定し、必要な体制をとり、とりくみをどんどんすすめていただきたい。中央としてもそれを援助する機動的な対応をおこなうものです。

いっせい地方選挙の政治目標――三つの重要な留意点

 つぎにいっせい地方選挙についてのべます。一九九九年のいっせい地方選挙は、期日の決まった選挙です。逆算方式で、やるべきことを、やるべき時期までに、確実にやりきることが、この選挙にむかう姿勢として重要です。そのとりくみの中でいついかなるときの解散・総選挙にも備えたとりくみをすすめるということが、基本的な姿勢であります。

 地方自治体は、自民党政治の矛盾の集中点です。逆立ち政治のもっとも身近で切実な害悪が、ここに横行しています。一方で、ゼネコンむけの開発事業が推進され、自治体財政はひどい借金づけになっています。政府がうちだした「総合景気対策」では、一兆五千億円もの地方単独事業がもりこまれ、これをこなしきれず、「地方自治体困惑」という状況もひろがっています。いま、追加の景気対策ということで、さらに財政支出を公共事業につぎ込もうという動きが伝えられていますが、それは自治体をめぐるこうした矛盾をいっそう深刻なものにするでしょう。

 他方で、こうした浪費を拡大しながら、「地方行革」の名で、福祉と教育、暮らしの切り捨ての大計画が全国の自治体ですすめられ、これとのたたかいが全国どこでも、重大局面をむかえています。「財政健全化計画」をめぐる都議会での攻防は、シルバーパスとりあげを中止させるなど大きな成果をあげましたが、なd淺稿縺覆靴譴帖砲覆燭燭・い・豕・任發弔鼎い討い泙后A換餝特呂任修譴・い淌験・気譴討い泙后#

 いっせい地方選挙では、自治体のそうした「開発会社」化、住民犠牲の地方政治をつづけるのか、それとも、住民の福祉と暮らしをまもる自治体本来の姿をとりもどすのか、二つの流れが真正面から対決する重大な政治戦となります。

 わが党の地方議員団の到達点をのべますと、四千百九名と史上最高の峰を更新しつづけています。わが党与党の革新・民主の自治体は、百二十三自治体、うち単独与党が七十七自治体、日本共産党員が首長をつとめている自治体は七市町であります。これらは、自民党政治のもとでの地方自治の荒廃のなかで、憲法と地方自治法の精神にたった対照的な新しい流れを体現するものです。

 いっせい地方選挙での、党の改選議席数は、合計で二千百六十人。わが党の地方議員団の現有議席の五二・六%が、改選議席となります。もちろんこれに加えて、多くの新人候補を擁立してたたかうわけで、こんどのいっせい地方選挙はわが党史上最多の候補を擁立してたたかう壮大な規模での選挙戦となります。さらに、合計七百七十六自治体で首長選挙がたたかわれることになります。わが党与党の自治体は、このうち十三自治体、単独与党の自治体は七自治体です。いっせい地方選挙は、二十一世紀の地方自治の動向を左右するとともに国政の動向にも大きく影響をおよぼす一大政治戦であります。

 わが党は、この選挙での政治目標について、議席占有率の拡大、議案提案権の獲得、党議席空白議会の克服の三つの指標で、積極的な目標と計画をもって、これにのぞむものであります。そのさい以下の諸点が重要であります。

 第一に、政治目標の設定にあたって、現実の政治的力関係を全面的にとらえ、とくに他党との力関係もよく分析して、目標が過大になったり過少になったりしてはならない、議席を確実に前進させる立場がなにより重要だということです。参議院選挙でのわが党の躍進は、いっせい地方選挙での積極的な議席増に挑戦する条件をひらいています。同時に、参議院選挙の得票を既得の陣地であるかのようにみて、地方選挙での得票にこれを連動させて、十分な検討をくわえないまま、安易な議席獲得目標をたてる傾向が一部にありますが、こうした傾向は是正が必要であります。

 比例選挙を軸とする国政選挙と地方議員選挙では、選挙戦の様相は大きく異なっており、国政選挙の得票増がそのまま地方選挙の得票に連動するとみることはできません。参議院の比例代表選挙で獲得した八百二十万票のうち、かなり多くの部分は党の日常的活動でつながりがない人びとであり、そういう層は党支持という点でも流動的であるということも念頭におく必要があります。そういうもとで、とりわけ議席増をめざすところは、それにふさわしい必死の頑張りが必要であること、これを出発点からはっきりさせ、攻勢的で緊張感をもったとりくみを展開する必要があります。

 第二に、道府県議会と政令市議会での力関係を変えることを特別に重視したいということです。ここでの立候補については、最大限に候補者をたてるのが基本であります。同時にそのなかで、重点的な選挙区を県委員会の責任で明確にし、勝利のための対策をとりきるようにしたいと思います。ここで注意したいのは、複数議席をめざすところは情勢判断を正確におこない、共倒れの失敗を絶対にしないということであります。その危険がある場合には、立候補計画の見直しもふくめて必要な措置を早めに思いきってとる必要があります。過去の選挙の最大の失敗は、県議や政令市議で新たに複数議席をめざした選挙区での共倒れにあります。これは、絶対にくりかえさない。これをおたがいに銘記してがんばりたいと思います。

 第三は、空白議会の克服に本気でとりくむという問題です。党大会決定では、「二十一世紀の初頭までに、党議席空白議会をすべてなくすために、計画的・系統的とりくみをすすめる」ということを決定しています。とくにその中でも県議空白の四県―大分、島根、山形、福井の各県の空白克服は、絶対の課題です。空白克服の政治的条件は大きくひろがっております。いっせい地方選挙で改選となる空白市町村は六百あるのですが、このうち参議院比例票が前回最下位当選者得票を上回っているのは、三百二十九自治体あります。ところが三百二十九自治体のうち現時点で党の候補者擁立が決まっているのは、四十八自治体にすぎません。これらの自治体では、候補者を立てて奮闘すれば、おおいに当選の可能性があるというところですが、そこでもまだ擁立ができないというのは、まことにもったいない話といいますか、大きなたちおくれです。そういう自治体をはじめ、六百の空白自治体の全体を視野に入れて、最大限の擁立をはかり、最大限の空白克服に挑戦したいと思います。支部があるところでは地域に責任をおう立場からよく論議し、候補者擁立を目指す必要があります。支部がないところも今からでも党員を拡大し、支を確立して候補者擁立をはかる努力をしたいと思います。党機関は可能な移住立候補もぜひ検討していただきたいと思います。そのさい、そうした同志をささえる援助措置の活用と、体制をつくることは当然であります。

 首長選挙では、党と無党派、協力が可能な他党派との広範な共同を追求し、革新・民主の自治体の防衛、拡大をおおいにはかりたいと思います。そのさい、国政の場での他党派との共同と、首長選挙での共同のちがいをよくわきまえることが大事であります。といいますのは、地方政治では多くの自治体で依然として文字どおりの「オール与党」体制がつづいています。それから国政の場合には、議院内閣制ですから、国会での多数を基礎に政府が構成されますが、自治体では住民の直接投票で首長が選ばれるというちがいもあります。ですから国政レベルで私たちが方針としている政権論は、地方自治体には機械的にあてはまるものではありません。地方自治体の首長選挙では、やはり日本共産党と住民本位の自治体をめざす広範な無党派勢力との共同、それによる新しい自治体の確立という方向が本流であるということに、しっかり目をむけてとりくむ必要があります。

 いっせい地方選挙での躍進をかちとるうえでも、四月の全国地方議員会議での提起をしっかりと身につけて、地方議員団の日常的活動を強めることがきわめて重要であるということも、この問題の最後に強調しておきたいと思います。

選挙闘争の方針――党大会決定、二中総決定、参院選の教訓を全面的に生かす

 つぎに総選挙といっせい地方選挙での選挙闘争の方針についてです。この問題については、参議院選挙の教訓を全面的に生かすということが基本です。この間ひらいた「選挙シンポジウム」では、参議院選挙での全国の豊かな経験と教訓が多面的に交流されました。そして、参加者全体の共通の実感となったのは、党大会決定と二中総決定の選挙闘争方針の正しさということでした。「この方針がよかった」ということが、参加者のみなさん全体の共通の実感であったと思います。

 いくつか列挙しますと、まず政策論戦での「二重のとりくみ」、この新しい提起を具体化していくうえで、中央でも地方でも多くの教訓がありました。この基本姿勢は、総選挙にむけて、さきほど解明した政権論もふくめてますます大事になってきます。

 他党との政党関係での「共闘しながら論戦」ということも、参議院選挙で私たちはさまざまな経験をしたわけですが、大局的に共同を前進させる立場から、また有権者からみて説得力のある方法で、いっそうこれに熟達していくことも大切であります。

 必勝区、非必勝区の垣根をとりはらい、すべての選挙区で本気で議席をめざすという方針が、生きた力を発揮しました。総選挙とくらべて、香川、長崎、熊本、佐賀、宮崎では、比例票の得票率を三〇%以上増やしました。全国どこでも大変化を起こしうる情勢だということも「選挙シンポジウム」でこもごも語られた点です。必勝区、非必勝区の垣根をとりはらうという方針は、総選挙やいっせい地方選挙で機械的に同じ方針をとるわけではありませんが、開拓者の精神で飛躍をめざすという教訓はおおいに生かしていきたいと考えるものです。

 二つの受動主義―「なんとかなる」論、「自分のところはちがう」論、この克服についても、たくさんの教訓がありました。そして「なんとかなる」論の克服では、選挙区の実情にそくした克服が大事だということが、会議であきらかにされました。京都の場合、核心的な問題は、選挙戦の実際の情勢が「大丈夫ではない」のに、「大丈夫」と思い込んでいたところに最大の危険がありました。東京の場合は、唯一の四人区で、他の選挙区で議席をめざすたたかいを展開しているときに、「危ない」といっても「大丈夫」論を打破することにならない。都委員会はそれを攻勢的に克服する一貫した努力をおこないましたが、とくに、「どの陣営、どの候補者にもうちかつ選挙戦」というスローガンをだしたことは、勝利への大きな力となりました。

 選挙区と比例区との得票の関係について、何を基準にして評価するかということも重要な点です。比例票が多かったのは十七都府県、選挙区票が多かったのが二十九道府県であります。どちらが多かったからいいとか悪いとかという話ではありません。二中総決定がのべたように、比例区と選挙区とのたたかいの相乗作用に、これまでとはちがった発展性がある。比例に力を入れるとともに、選挙区も思いきってたたかい、ここでも日本共産党の波を起こす。その相乗作用の結果がどこではかられるかといえば、比例での得票増にどうむすびついたかの検証がなによりも大切であります。この点では九六年総選挙より後退した四つの県では、その自己分析が必要となります。

 無党派層との共同においても、全国で教訓的なとりくみがおこなわれました。シンポジウムや懇談会など多種多様なとりくみが、これまでにない規模、ひろがりをもってとりくまれ、選挙戦の躍進におおいにむすびつきました。とくに経済界の人々もふくめて、これまで保守の立場に身をおいていた人々との対話、共同がすすんだことは、今回のめざましい特徴でした。

 ”自共対決”の宣伝・組織戦でも、多くの教訓がつくられました。演説会のもち方の新しい教訓も特筆すべきであります。不特定多数の人々を対象とした節目節目の思いきった大演説会と、地域単位、支部単位の小さな演説会を組み合わせる。この方法はたいへん有効であるということも報告されました。かえって負担になる本番中の連続的な屋内演説会を見直すということも、方向として大事だということがだされました。それから、全戸配布網の前進、ポスター、ハンドマイクなどの活動できりひらいた新しい境地も重要であります。対話・支持拡大のとりくみでは、これが「際限なく後まわしになる傾向」があることが率直にだされ、本番間近にならないととりくまない根深い経験主義の克服の重要性が全体のものになりました。財政問題でも、思いきって国民に依拠してとりくんだ愛知県の経験などが新鮮にうけとめられました。

 それから「支部が主役」の選挙戦という点ですが、二中総決定が強調した党員一人ひとりの成長を大切にする観点での指導と援助がつらぬかれたところで、前進がはかられたということもこもごもだされた点でした。また支部が単位後援会の活動を重視して、「私も少しでも何かやりたい」という人を後援会に迎え入れて、これまでになく大衆的な選挙がたたかわれたことも大事な教訓であります。「支部が主役」、単位後援会の活動を重視するという方向は、選挙の単位が小さくなる総選挙やいっせい地方選挙では、ますます重要な意義をもつものであります。

 私たちは、躍進した参議院選挙で多くの教訓をえました。共通の宝にすべきたくさんの活動が全国で展開されました。これらの教訓をほんとうに全党のものにし、党大会決定、二中総決定を全面的、発展的に生かして、当面する選挙戦での新たな躍進をめざして奮闘しようではありませんか。

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六、党建設の問題――三つの問題での前進的突破を

 つぎに党建設の問題について報告します。

新しい情勢のもとでの党建設の発展方向について

 党大会では、民主的政権に接近するための五項目の課題、新しい情勢にふさわしく党建設全体を発展させる方向として六項目の「党建設の重点的な努力方向」を提起しました。これを全面的にとらえて実践することが大切であります。そのうえで、党建設の全体的な発展方向について、いくつかの強調したい点を報告したいと思います。

 その一つは、今日の情勢のもとで党建設を前進させるためには、情勢の進展がつくりだした党と有権者の新しい関係をよくとらえ、それにそくした新しい活動の発展がもとめられるということであります。

 参議院比例代表で、わが党がえた票は八百二十万票です。比例代表で日本共産党に投票した人、または選挙区で党の候補者に投票した人をあわせますと、九百三十万人をこえます。これは有権者比一割にちかづく大きな峰であって、党と有権者との関係は量、質ともに、これまでにない新しい段階にはいりました。この八百二十万、あるいは九百三十万という人々のなかには、これまで組織的にはまったく接触できていない支持者が多数あり、そしてその党支持も流動的であります。そういう広範な人々とさまざまなかたちで組織的な交流、組織的なむすびつきをどうひろげるか、これがいま問われています。

 何よりも強調したいのは、党の固い支持層の幹を太くしてこそ、そのまわりの支持層の拡大が着実にすすむということです。また思いきって広い視野で私たちが広範な人々に働きかけてこそ、党建設も前進することができます。ここには新しい相互作用があります。そしてそれは、新しい探究とともに、新しい創意がもとめられる問題であります。

 こんごの情勢を展望した場合に、わが党にとって、たんたんとした自動的な前進はありません。わが党が前進すれば、相手陣営はそれをはばもうとするさまざまな策をめぐらしてくる、それを打ち破っての前進をどうかちとるか、これがいま問われているわけであります。”自共対決”の組織戦にかちぬき、党が安定的に前進と躍進をかさね、民主的政権に接近していくためには、党を支持してくれた人々、そのまわりで党の活動をみまもっている幾千万の有権者のなかに、党の組織的な影響力、組織的なむすびつきを、いかにひろげるかが不可欠の条件となります。党大会が提起した、「総選挙の得票の一割の党員、五割の読者」、「数千万の国民とむすびつく大衆的な政党への発展」という目標を、こうした見地からあらためて再確認し、この分野での遅れを突破する不退転の決意を全党のものにしようではありませんか。

 いま一つ、党の内部生活では、「支部を主役」に、すべての党員が活動に参加する党活動にむけてのねばりづよい努力がひきつづき基本であります。二中総決定では、党員一人ひとりの活動とその成長に目をくばり、条件と得手に応じて、全党員が参加する活動をつくりあげる努力を強調しました。この二中総の提起は、全党にたいへん大きな反響と共感をよびおこしました。「支部がかかえている悩みがリアルに解明されている」などの声が各地の支部からよせられました。しかし、参議院選挙での党員の活動参加をみますと、個々の支部や地域での前進はあるものの、全国的に大きく活動参加がひろがったといえる状況にはいたっていない、これも事実であります。二中総決定のこの提起の実践のための、ねばりづよい努力がひきつづき重要であることも強調しておきたいと思います。

 それから支部の多数をしめる経営支部の活動をどう発展させるのかということも、今後の党建設にとって大きな課題です。すすんだ活動をおこなっている経営支部の特徴をみますと、「職場の中だけからものを見るのではなく、情勢全体のかかわりで職場をとらえる」という、広い視野での政治的な意思統一と、広い視野にたった実践がおこなわれているということが共通しています。労働者にたいする私たちの接近の仕方も大切であります。すなわち「職場の日常要求の窓口からだけ接近するのではなく、政治の窓口からも接近する」、このことを強調したいと思います。じっさいに、労働者は職場の要求とともに、たとえば今だったら金融問題、あるいは消費税の問題など、国政の問題につよい関心と要求をもっています。ですから、その要求全体をとらえて、私たちは職場での活動を展開する必要があります。そして、そういう広い視野をもった職場活動をすすめるうえでも、職場革新懇の位置づけが大切であるということをとくに強調したいと思います。これをつくった職場では、職場革新懇が国政の問題から職場の問題まで広い視野でとらえ、運動する拠点となっています。経営支部の活動をそういう見地で総合的に発展させがら、党建設でも経営支部が積極的な役割をはたせるようにおおいに力をつくしたいと思います。

 以上が全体的な発展方向についての強調点ですが、そのうえで党建設について、とくに三つの問題での前進的突破が痛切にもとめられていることを、ここで提起したいと思います。

党大会決定を全党員が身につけ、綱領路線の学習を重視する

 第一は、党大会決定を文字どおり全党員が身につけるということです。

 この問題については、二中総決定で、たいへん鮮明な位置づけがされています。すなわち「(二十一回党)大会決定は、つぎの党大会までの全党の基本方針であります。ことの性格からいいますと、もっと長期的な方針――二十一世紀の早い時期に新しい民主的な政権をつくるまで生きる方針」であるという位置づけをあたえています。そして、二中総決定では、二中総の後も、大会決定の読了を中心課題として追求するということを確認しました。

 ところが、私たちの到達点をみますと、一部をのぞいて、みるべき前進がほとんどありません。党員の読了率は、五三・九%にとどまり、二中総時点での五二・七%から、ほとんど前進していません。全体として、自然成長にまかされている状態だということを、率直に指摘しなければなりません。

 党大会決定の「長期的方針」としての値打ちは、これを読み返してみますと、たいへん新鮮に伝わってまいります。党大会決定では、「二十一世紀にどういう日本をめざすのか」ということについての全面的な解明が、のべられています。東アジア外交についても、六項目の新しい提起がおこなわれています。ここでのべられている民主的政権への接近のために何が必要かについての五つの角度からの問題提起も、まさに長期的な展望をもった方針であります。

 それから党大会決定を読み直してみますと、今の情勢と政局の生きた展開を見とおすという点でも、すばらしい力をもっているということがよくわかります。一つの例として、みなさんに注意をむけていただきたいのが、党大会決定でのべられている政治戦線の分析です。当時は日本共産党以外の「オール与党」体制ということを、私たちは強く批判しましたが、大会決定ではこの「オール与党」体制を批判しながら、同時にこれを固定的にみていません。大会決定にはこういうくだりがあります。「悪政と国民との矛盾が深まるなかで、”総自民党化”勢力の内部にも矛盾や亀裂が生じることもありうることである。そういう条件が生まれたときには、わが党は、国民の利益にそって国会を前むきに動かすために、積極的、建設的な努力をはらう」。これはまさにいま、実践している野党協力の努力の方向につながっていく見とおしです。これは一例ですが、大会決定では、今日の激動の情勢の展開を見とおす深い分析がされています。そして、大会決定の選挙闘争方針としての実践的威力は、まさに参議院選挙で実証ずみであります。ですから、この決定を、ぜひ真剣に全党員が身につけるということを、あらためてここで強調したのであります。

 そのためには、党機関として、あるいは党支部として、ここに時間と手間を惜しまないということが大切であります。現在の到達点からさきの一人ひとりの同志となりますと、決定を読んでもらう努力は生やさしい努力ではできない部分もあります。ですからこの仕事を、片手間仕事と位置づけたらこれはすすみません。ところがそれにふさわしい位置づけでとりくまれず、結局後回しになっている。ここをどうしても改善する必要があります。全党員の大会決定の読了なくして、党員みんながほんとうに自覚的に参加し成長する党活動はつくりえない。その大前提だということをあらためて強調するものです。

 大会決定の読了と同時に、党の綱領路線の学習も強調したい点です。情勢の激動の中で綱領路線の真価がますます輝いています。私たちはよく「ソフト路線」といわれますが、もともと原則性とともに弾力性をもった路線が、党の綱領路線です。その真髄をつかんでこそ情勢の激動に確かな羅針盤をもってたちむかうことができます。

 たとえば、天皇制についての問題が、この間話題になりました。私たちは、将来的にはこの制度を、国民主権に矛盾する制度として、国民の合意でなくしていくという展望をもっています。同時にこれを当面の課題とは位置づけていません。暫定政権ではもちろん民主連合政府の段階でも、憲法を変えることは想定しておらず、天皇制をなくすことはプログラムにありません。わが党がこの問題を、解明したことにたいして、マスコミの中ではびっくりして取り上げたというむきもあったようですが、もともとこれは綱領路線では明りょうなことなのです。わが党の当面の要求課題をかかげた行動綱領には、「君主制の廃止」はふくまれていません。これは、民主主義革命の課題としては、この課題は重要になってくるけれども、それは革命の進行の中で、将来その条件が熟したところで提起され、国民合意で解決されるべき課題だと綱領で位置づけているからであります。

 これは一例ですが、今後、政権を現実的な目標とし、それに接近するなかで、まさに綱領路線でしめした内容が、現実の問題として提起され、その具体化がもとめられる情勢にさしかかっているわけであります。ですから、全党がそういう中で、ほんとうにこの綱領路線を、生きた力として、みんなが身につけていく。このことを強調したい。第二十回党大会での綱領一部改定報告をはじめ、綱領路線そのものを学習する運動を呼びかけたいと思います。

機関紙活動――どうやって法則的にこの分野での前進をはかるか

 第二に、機関紙活動の問題です。この分野の活動については、全党が、多くのエネルギーをかたむけ、とりくんでいるけれども、安定的前進の軌道にのせられていない。これが現状であります。激動的な情勢のもとで、大きくひろがりつつある党の政治的影響力にたいして党建設、とくに、機関紙活動が遠くおよんでいない現状がある。この広大なギャップをどう打開するか。これはぜひ、この中央委員会でも率直な討論をおねがいしたい一つの点であります。

 私たちはこの間、連続的に前進をかちとっている全国の六つの地区の委員長にあつまっていただいて、その教訓を中央としても子細に学ぶ機会がありました。そこでいくつか感じた点を報告したいと思います。

 まず、毎月かならず前進させるための、党機関の政治的構えが、しっかりしているというのが、共通した点でありました。連続前進をかちとっている地区はどこでも、最後に足らなくなったときには「月末集中」をやることもふくめて、執念をもったとりくみがはかられていたことが共通していました。「総合的活動の中で、党勢拡大の独自追求をはかる」ということが、この間のわが党の一貫した方針であります。大会決定でも、「毎月毎月、確実に増勢をかちとってゆくという地道な努力の重要性」が強調されました。まず私たちは、そうした方針にたった、独自追求の努力がおこなわれていることにたいして、これを高く評価したいと思うのであります。

 そのうえで、いかに”法則的”にこの分野での前進をはかるか。多くのエネルギーを集中して拡大の独自追求に努力をつくすけれども、なかなか前進がかちとれないという悩みをかかえている党機関が多くあります。この点で、六つの地区の委員長との懇談の中で、いわば”法則的”なやり方、”無理のない”やり方で、この分野の活動を、前進の軌道にのせている地区委員会の活動は、たいへん教訓に満ちていました。

 その一つは、「支部が主役」ということを、数字のうえ、形のうえだけではなく、ほんとうの自覚的な活動をつくる内容的指導というところまで、よく徹底しているということでありました。地区委員長との懇談のなかで、私たちが、「支部が主役」ということを生きた活動方式として支部に定着するうえでかなめになるのは何ですか、こうききましたら、連続前進で成果をあげている地区委員長の一人から、すぐに返ってきた言葉は、「大衆の要求をとらえた活動に支部がどんどんとりくむようにすること、ここにあります」ということでした。ズバリそういう答えが返ってきました。あるいはそのために地区委員会自身も政治活動、大衆活動に思いきってとりくむようにしていること、こういう答えも返ってきました。そういうとりくみがその地域、経営に責任をおう支部としての自覚を高め、機関紙も無理なく増やせるということにつながっているということがたいへん印象的でした。

 それから二つ目に、視野を思いきってひろげて、新しい層への拡大ということに意識的、意欲的に挑戦している、これもすすんだ地区の共通した努力方向でした。連続増勢をかちとっているある地区委員会からは、とくに党の勢力の弱い地域で、支部主催の演説会やハンドマイク宣伝などをおこない、読者を増やす意識的な努力をおこなって、成果をおさめ、そのことが全体の大きな確信になっているということが報告されました。新たに党を支持してくれた数百万の人々、党に新たに関心をもちつつある幾百千万の人々のなかで、どうやって「しんぶん赤旗」をひろげ増やすか、これは新しい探究と開拓の分野であります。

 それから三つ目に、機関紙拡大と党員拡大を”車の両輪”として重視している、これもたいへん印象深く私たちが受けとめたことであります。新しい党員を迎えたら、その同志が「思わぬつながり」をもっていて、新しい層への拡大をすすめるたいへん大きな力になったということもこもごもいわれました。過重負担の解消にとっても、この努力方向はどうしても必要であります。

 こういう、いわば”法則的”な機関紙活動の前進をはかる自覚的な支部を、一つの地区委員会の中で、いっぺんにすべての支部とするところにまでいかなくても、毎月、三支部でも、五支部でも、十支部でもいいから、ねばりづよく増やす努力をはかり、それを全党の大勢にするために力をつくす。やはり前進をかちとる基本はここにつきるのではないかと考えるものであります。そこへ目がいかないで、先進的部分だけに頼ってしまうことのくりかえしでは、努力はするんだけれどもなかなか前進がかちとれない。ここのジレンマを、思いきって割りきって、いま突破することがもとめられているのではないでしょうか。

 全党的に新しい読者を意欲的に増やしていくうえで、配達・集金活動の担い手を大きく増やし、過重負担を解消し、支部を基礎にした配達・集金活動の強化、専任配達員制度の活用など、独自の努力が重要になっていることをあらためて強調したいと思います。機関紙活動で着実に前進している支部の多くでは、新しい党員を迎え、読者の協力をえるなどの努力もふくめ、この活動への参加者を絶えず増やす自覚的努力をおこなっています。

 わが党の機関紙活動は、他党の追随を許さない分野であります。世界でも、政党の機関紙活動でこれだけの到達点を築いたところはほかにないでしょう。この分野で情勢にふさわしい前進、飛躍をつくるために、全党の知恵と力をかたむけようではありませんか。

党員拡大――切実性、緊急性にふさわしい位置づけを

 第三に、党員拡大の問題です。この分野での到達点は、大会後、約二千八百人の増勢であります。しかし民主的政権を展望し、「得票の一割の党員」を二〇〇〇年までに達成するという目標からしますと、規模を数倍にひろげ、本格的な前進に転じていくことがつよくもとめられています。

 ここで強調したいのは、党員拡大の切実性と緊急性にふさわしい位置づけが必要だということであります。何よりも情勢が強大な党をもとめています。そしてわが党の活動をみても、大衆運動、選挙闘争、機関紙活動など、あらゆる分野の党活動をささえるうえで、また党の活力という点からみて、後継者の育成という点からみて、全党にとってきわめて切実で緊急の課題であります。

 ところが一部をのぞいてそれにふさわしい位置づけがあたえられているかといいますと、機関紙活動とくらべても、そこにそそいでいるエネルギーは全体でみるとはるかにまだ小さいものです。要するに本気の位置づけ、本気のとりくみになっていないのが最大の問題といわなければなりません。

 しかし足を踏みだせばどんどん増える情勢にある。これも各地から報告されているとおりです。最近、「しんぶん赤旗」の学習・党活動版でも紹介しましたが、北海道余市町の党組織では、一年間で五十三人の新入党者を迎えて参議院選挙をたたかい、選挙区、比例代表ともに、第一党になりました。九六年の総選挙のときには余市町では第四党でしたから、第四党から第一党に、まさに大躍進をとげた。こうした変化というのは、全国どこでも起こしうるものだと思います。

 そのなかでも青年学生のなかでの党員と民青同盟員の拡大を、とくに重視したいと思います。いまの青年の特徴というのは、さまざまな政治や社会に目をむけたボランティア活動から、文化やスポーツの活動もふくめて、いろいろな運動が自然発生的にひろがっているところにあります。そういう状況のもとでは、党や民青同盟が自力で運動を起こすということも大事ですけれども、青年が参加しているさまざまな運動にどんどん参加していくこと、青年党員や民青同盟員がおおいにみずからの要求にもとづいて、現にある運動に参加していくことがたいへん大切であります。その中でむすびつきをひろげ影響力をひろげる、こういう見地での運動と党建設の発展を若い世代の中でおおいに前進させたいと考えるものであります。

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七、新しい関心にこたえて党を語る活動を――社会主義の展望をふくめて

 最後に、国民の新しい関心にこたえて、党を語る活動をおおいにつよめるという問題について報告します。

 日本共産党がこれまでにない新しい層に影響力をひろげるなかで、党への新しい関心や疑問も寄せられています。また党の躍進を恐れて、相手側からの新しい攻撃もあります。これらにかみあって「日本共産党とはどういう政党か」ということをおおいに語る活動をいまつよめる必要があります。

 とくに日本共産党は、日本をどう変えようとしているのか、すなわち私たちがめざす将来像をおおいに語ることが重要であります。その焦点になるのは、すでにのべた当面する資本主義の枠内での民主的改革の将来像を、自由闊達(かったつ)に、おおいに語っていくことであります。同時に、”当面は民主的改革というけれどもその先は社会主義をめざすというところが心配だ”、”一度共産党に政権を握られたら、無理やり社会主義までもっていかれるんじゃないか”、こういう不安が社会主義にたいする一般に残されているマイナスイメージともむすびついて、しばしばだされることも事実であります。

 これにたいして、第二十一回党大会決定がのべている見地にたっておおいに党を語るということを強調したいと思います。すなわち、日本共産党が、(1)社会の段階的発展の立場にたつ党だということ、(2)どんな改革、どんな変革も、国民多数の合意でおこなう「多数者革命の党」であることなどを説きあかしつつ、(3)資本主義をのりこえていく人類社会の発展を科学的に展望している党であることをあきらかにしていく努力が大切であります。

 いうまでもなくわが党は、いますぐ社会主義か資本主義かの選択を国民にもとめるものではありませんし、すぐに社会主義への国民的合意をもとめるものでもありません。同時に、社会主義や共産主義への国民の疑問があって、それがわが党の支持をひろげていくうえでの一つの障害になっているという状況も現にあるわけですから、そういう国民の疑問や関心にこたえて、わが党がなぜ将来の展望として社会主義をめざすのか、それを国民にわかる言葉で積極的に語ることは、党が広範な人々の信頼をかちとるうえでも重要な課題であります。

 資本主義の社会とは、大企業の利潤追求第一の社会にほかなりません。これがさまざまな経済的害悪の根源にあります。サミット諸国だけで二千四百万人にのぼる失業、投機的資金が世界をかけめぐるもとでの地球的規模での金融不安や通貨不安など、世界でも日本でも現代資本主義は重苦しい矛盾と閉塞(へいそく)におおわれ、一時流行した「資本主義万歳」論はいまではまったく影をひそめています。

 こうした大企業の利潤追求第一の横暴から、国民の利益をまもる経済民主主義の実現が、私たちの当面の課題です。それによってこうした横暴をある範囲で規制することは可能です。それは国民の暮らしの向上にとって大きな新しい可能性をつくるものになります。

 同時に、経済民主主義を実現したもとでも、資本主義に固有の利潤追求第一からくる矛盾をなくすことはできません。搾取、失業、貧富の格差、恐慌、資源の浪費、環境破壊などが、資本主義の避けられない矛盾として、この段階でも残ることでしょう。この矛盾を解決するには、新しい社会制度、すなわち国民の利益の増進が社会の経済活動の直接の目的となるような社会制度―社会主義の社会にすすむことが、歴史の要請となります。

 これまで社会主義をめざす道にふみだした国々は、発達した資本主義を経験していないところから出発したという制約がありました。旧ソ連の崩壊は、スターリン以来の指導部が、専制主義・覇権主義のあやまった政策をとりつづけた結果、社会の全体が社会主義とは異質の反人民的なものに変質した結果だったということは、私たちが第二十回党大会でくわしく解明した問題でした。

 発達した国から社会主義をめざす変革の道にふみだしたという経験を人類はもっていません。第二十回党大会での綱領の一部改定報告では、社会主義にむけての「過渡期に本格的にふみ出すこと自体が、人類史上未踏の分野に属すること」であるということものべられました。私たちが長期的に展望しているのは、まさに前人未到の人類史の雄大な開拓の領域であります。

 そして私たちがめざす社会主義社会というのは、人間が外的な力によって支配されたり、抑圧されたりすることのない社会、人間が社会の主人公になる社会、すなわち私たちがいまかかげている、「国民が主人公」というスローガンが全面的に実現する社会にほかなりません。そして自由と民主主義が、もっとも本格的に花開く社会が私たちがめざす社会主義の展望であります。そうした社会発展の科学的展望をもつ党だということも、多くの国民の関心や疑問にこたえておおいに語ろうではありませんか。

 未来にむけて希望ある情勢がいま開かれています。同志のみなさん、参議院選挙の躍進を全党の確信とし、新しい情勢のもとでの国民の新たな期待にこたえる活動をあらゆる分野でおう盛に展開し、きたるべき総選挙といっせい地方選挙で、いっそうの党の躍進をかちとろうではありませんか。最後にそのことをよびかけて、幹部会を代表しての報告を終わるものであります。(拍手

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