1998年4月21日付「しんぶん赤旗」より

今後の領土交渉に有害な「国境画定」論

日ロ首脳会談で不破委員長が批判


 不破委員長は二中総への報告のなかで、四月十八、十九の両日おこなわれた日ロ首脳会談について、「領土問題ではなんの前進もなく、一方的な経済援助の約束の積み増しに終わったことは明白」と指摘、「真剣な領土問題の交渉の用意なしに首脳同士の個人的友好で問題を解決しようというやり方の不毛さを明らかにした」とのべました。

 不破委員長は、領土問題の解決には「日本側の領土要求の論だて、国際法的論だての確立が必要だが、それが欠如している」と指摘しました。

 日ロ間の領土問題の根本は、ヤルタ協定を根拠にソ連のスターリンが横暴に日本から千島列島を奪い、日本政府がサンフランシスコ平和条約の「千島放棄条項」を受け入れたところにあります。

 不破委員長は、日本政府がとっている態度はこの問題に「一切手をつけずに、ヤルタ協定の枠内でいろいろ解釈をこじつけるというやり方」であり、「千島列島はいらない。国後、択捉は千島ではないので返してくれ」という論法は国際的には通用しないと指摘しました。

 さらに不破委員長は、橋本首相が「国境画定」論をもちだしたことについて、「重大な問題をふくんでいる」と指摘しました。

 「国境画定」論はソ連が領土問題の存在を認めていなかった段階では、領土問題の「解決ずみ論」を打ち破るうえで、重要な意義をもちました。一九七九年の日ソ両党首脳会談で、日本共産党は、平和条約による国境画定がおこなわれていないことを厳然たる事実として指摘し、そうである以上、領土問題の最終的解決が存在しえないことを明確にしめして、当時ソ連側がとっていた「解決ずみ論」を撤回させたのです。

 しかし、ソ連=ロシア側が、領土問題の存在を認めるにいたった現在では、国境画定論には、領土交渉の論だてとしての意味はありません。それどころか、橋本首相の「国境画定」論は、今後の領土交渉にきわめて有害な役割をはたします。

 不破委員長は、その有害さを、三点にわたって指摘しました。

 第一に、領土交渉の対象を四島に限定したうえで、その合意の結果で国境を画定するということは、「北千島の永久放棄を、日本から宣言したことになる」ことです。

 第二に、領土の返還と「国境画定」をわざわざ区別することは、国境画定後も、ロシア側に国境線をこえた実効支配を認める含み、つまり実際の領土返還を先送りする余地を残したものとなることです。

 第三に、日本側のこんな譲歩にもかかわらず、ロシア側は領土返還の問題について、前向きの言明をなに一つしていないことです。

 不破委員長は、今回の合意について、「政府は“成果”の宣伝につとめているが、実際の合意内容を冷静にみるならば、内閣の延命のために日本国民の国益を犠牲にしたといわれても仕方のないものだ」と批判しました。そして、スターリンのヤルタ協定による千島列島への不当な領土拡張を是正することが「日本の国民の側の大義」であり、「これからの領土交渉にのぞむ最優先の前提問題」であることを強調しました。


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