1997年9月26日

日本共産党第21回大会決議

第4章 国政と地方政治でのいっそうの躍進をめざして


(13)国政選挙の躍進をめざす活動と国会闘争について

 (1)二十一世紀に「国民こそ主人公」への道をひらくうえで、国政における政治的力関係を前むきにぬりかえる国政選挙でのいっそうの躍進をかちとることは、わが党が国民にたいしておっている重大な責任である。

 当面する国政選挙での重点的課題は、一九九八年の参議院選挙で、得票と議席の新たな躍進をかちとることである。「比例を軸に」という方針をつらぬき、有権者比の得票目標への接近・実現をめざして、比例代表選挙での議席を大幅に増大させるとともに、選挙区選挙での躍進をめざす。参議院選挙での躍進のいかんは、総選挙でひきつづき躍進をかちとるうえでも、きわめて重要な意義をもつ。

 九六年総選挙での全党的な有権者比得票率の大幅底上げや、第二党の地位をえた最近の都議選などの結果をふまえて、今回の参院選では、必勝区と非必勝区の垣根を取り払い、全選挙区で議席を争う構えで、“自共対決”の選挙戦をたたかう。今回議席にとどきえない場合でも、近い将来、現実に議席を争うところまで成長・発展することを目標にし、大幅な得票増をめざす。選挙戦での重点選挙区は、党中央の責任で機動的に判断し、必要な支援措置をとる。

 国民の多数派結集をめざすためにも、日本共産党公認だけでなく、条件のあるところでは、革新・民主勢力が共同して、無党派で清潔・勇気ある人物を候補者として擁立することにも、積極的にとりくむ。来年の参院選にむけて、わが党は、高知選挙区で、革新・民主の共同の候補者を擁立することを決定しているが、これを成功させることは、国政選挙で日本共産党と無党派の人びととの共同をすすめる大きな一歩になる。

 総選挙躍進の教訓にてらしても、「比例を軸に」政党選択を正面から争い、“総自民党化”の流れか日本共産党かという、政治の流れを問うたたかいが、ますます重要となっている。政策論戦では、そのときどきの国民が熱い関心をよせている問題で、唯一の革新政党として政策・争点を明確に提起することと、党の全体像・将来像を語り、反共攻撃とたたかって偏見や誤解をときほぐしていくこととを、むすびつけることが大切である。これは、この間の選挙戦で全党がつかんだ重要な教訓である。

 自民党が党略的な思惑から解散・総選挙に打って出る潜在的可能性はつねにある。自民党がどんなやり方に出てきても不意打ちされない態勢を、党としてとっておく。

 選挙戦の方針としては、わが党が第八回党大会いらい鉄則としてきた「四つの原点」の活動を、今日の情勢にそくしてつぎのように改定し、これにもとづいて日常不断に勝利をめざしたとりくみをはかる。「四つの原点」は、選挙戦の方針であるとともに、「政策と計画」にもとづく支部の日常活動の方針でもある。

 (2)国政選挙でひきつづく躍進をかちとっていくうえで、「四つの原点」にもとづく日常的な選挙勝利のための全党的とりくみとともに、躍進をかちとった党の国会議員団が、現実政治の場で存在感をしめし、国民の期待にこたえる成果をあげることは、きわめて重要である。

 国会論戦では、悪政を事実と道理にもとづいて追及するとともに、どんな問題でも国民の立場から解決方向をあきらかにするという建設的論戦が、大切である。昨年の住専問題をめぐる国会論戦で、わが党がただ税金投入に反対をいうだけでなくて、母体行の責任による解決という道理ある解決方向をしめし、それが国会での共通認識になるところまで論戦をリードしたことが、まともな対案をしめせない他党との対比で、国民の広い信頼をえたことは、重要な教訓である。

 総選挙後の国会でも、消費税増税など国民負担増に反対する論陣とともに、巨額の浪費的支出にメスを入れることで財源をつくるべきだという主張を展開し、六百三十兆円の「公共投資基本計画」の「見直し」を約束させ、首都機能移転計画を事実上の凍結においこみ、高すぎる薬価の「見直し」を約束させるなど、一連の成果をあげた。

 今日の“総自民党化”という政治状況のもとでも、さまざまな部分的一致点が、他党との関係で生まれることがありうる。また、悪政と国民との矛盾が深まるなかで、“総自民党化”勢力の内部にも矛盾や亀裂が生じることもありうることである。そういう条件が生まれたときには、わが党は、国民の利益にそって国会を前むきに動かすために、積極的、建設的な努力をはらう。住専問題のさい国会が不正常な事態におちいったときに、その正常化のためにわが党が積極的な役割をはたし、「日本共産党をのぞく」という体制に一定の変化をつくったことは、今後に生かすべき重要な教訓である。

 躍進したとはいえ、わが党のしめる議席は、国会ではまだきわめて少数である。わが党の奮闘にもかかわらず、結果として悪法が強行される場面が多いことも事実である。そうしたなかでも、わが党国会議員団が、院外の大衆運動としっかりむすびついて、最大の知恵と力を発揮してたたかい、現実政治を動かすために奮闘してこそ、「この党をもっと大きく」という国民のなかでの新たな期待のひろがりをつくることができる。

 国会議員団と候補者が、日常的に地域住民とむすびつき、地域住民と国政をむすぶ“架け橋”として奮闘することも重要である。衆院選の結果、すべての県が党の国会議員をもったことは、そうしたとりくみを前進させるうえで、これまでにない新しい条件である。党はこの間、躍進した国会議員団の全国的な活動を保障するため、十一の衆院比例ブロックと全都道府県に国会議員団事務所をもうけた。これを住民にひらかれた事務所として、これまで党とつながりのなかった階層・分野の人びとともむすびつきをひろげ、交流、共同をつよめる拠点として発展させることが、もとめられている。

(14)地方自治体にたいする活動の抜本的強化と選挙戦での躍進

 (1)いま多くの地方自治体では、住民奉仕という自治体ほんらいの仕事が投げすてられ、自治体が巨大開発をすすめる“開発会社”的な機関に変質し、空前の財政危機が進行するという事態がおこっている。

 全国の自治体のかかえる借金は、約百五十兆円と史上最悪となった。これまでも地方財政が危機におちいったことはあったが、今回の財政危機は規模がけたちがいに大きいだけでなく、その原因にもちがいがある。一九七〇年代の地方財政の危機は、石油ショック以後の不況によって、税収が大幅に落ちこんだことから、生まれたものだった。ところがいま進行している財政危機は、自治体がほんらいの仕事とはまったく無縁の大型開発にのりだしたあげく、それがつぎつぎと破たんすることによってつくられたものである。

 自治体の巨大開発への動員は、政府・財界主導ですすめられた。国の補助がなく自治体がまるまる負担する「単独事業」による公共投資が拡大された。まず用地を造成してから企業をよびこんで採算をあわせようという方式が横行した。「民活」型プロジェクト――自治体と大手ゼネコンや銀行などが共同の開発会社をつくるという方式が、全国で採用された。この方式のもとで、自治体はわずかの出資金で、実力をはるかに上まわる巨大開発にのりだした。もうけはまるまる企業がせしめ、失敗のリスクは自治体が背負うことになった。こうした巨大開発は、バブル経済の破たんとともに、東京の臨海副都心や、大阪湾ベイエリア開発などにみられるように、大破たんに直面している。

 こうしたみずからの失政によってつくられた財政危機を「健全化」するとして、住民の福祉や教育、暮らしと営業をきりすてる、新たな総攻撃がすすめられている。都議選での最大の争点となった「財政健全化計画」は、革新都政時代にうちたてられた暮らしをまもる諸制度を根本からくつがえす史上最悪の計画であるが、同様の計画は全国の自治体でつくられている。一九九四年十月の自治省事務次官通達による自治体「リストラ」の強要により、全国の九四%の自治体で第二次の「行政改革大綱」が策定されているが、その特徴は、ほんらいメスを入れるべき開発優先の浪費には手をふれず、住民の暮らしにかかわる予算と人員を削減していこうというところにある。

 政府は、口をひらけば「地方分権」ということをいうが、彼らのいう「地方分権」は、負担と責任を地方自治体におしつける一方で、中央政府の自治体への支配権をこれまで以上に強化することにねらいがある。実際、政府はこの間、地方自治体にたいして、住民の意思にかかわりない巨大開発のおしつけ、福祉きりすての大号令、国基準以上の福祉・医療施策にたいする国庫補助金カットの“罰則”など、自治体の自治権を侵害する攻撃をつよめている。それは真の意味での「地方分権」とは無縁の、自治体にたいする専制支配そのものである。

 全国の大多数の自治体で、わが党以外の諸党は文字どおりの「オール与党」となり、住民犠牲の政治をすすめている。憲法、地方自治法の精神から大きく逸脱した自治体の現状をただし、「住民こそ主人公」の地方自治の流れを、つよく大きく育てていくことは、日本共産党に課せられた重大な任務である。

 (2)地方議員で四千人をこえ、地方議会第一党になった地方政治の分野は、わが党の活動のなかでも、もっともすすんだ、もっともつよい分野であり、全国第一党の位置にふさわしい役割を、住民にたいしてはたしていく大きな責任をおっている。党の各級機関は、地方政治にたいするとりくみを抜本的に強化し、選挙のさいだけでなく、日常的に地方政治に責任をもち、とくに焦点となっている政策問題をよくつかみ、地方議員団の活動の水準をたかめるための援助に力をつくす。

 とくに、第二党に躍進した都議会でのわが党議員団の活動は、一地域の問題にとどまらず、全国的にもわが党の評価に直結する問題となる。第二党という地位は、都政をある範囲では動かす力をもったということであり、その責任はきわめて重い。都民の期待にこたえ、公約実現のために全力をあげる。

 同時に、四千人をこえたという今日の到達点は、政治革新の目標からみれば、まだ初歩的である。地方議会でのわが党の議員数は、議席占有率でみるならば六・二四%であり、都道府県議では第五党、市議・区議では第三党、全自治体の三一・七%にあたる一千四十六自治体が、わが党が議席をもっていない党議席空白議会であることを、重視しなければならない。

 この分野でも、これまでの到達に甘んじない飛躍が必要である。地方議会での党の比重をたかめるために、議席占有率の拡大、議案提案権の確立、党議席空白議会の克服という三つの指標にてらして目標と計画をもち、積極的な議席拡大にとりくむ。反動攻勢とのたたかいの時期には、既存の議席をまもるという選挙戦が多かったが、新しい情勢のもとで、議席増をめざす攻勢的なたたかいを基本にし、一つの選挙が終わったら、現有議席をかならず確保することはもちろん、四年後の議席増をめざすことを、当然の方向として追求する。とくに議員数がまだ少ない都道府県議会、政令市議会、市・区議会で力関係を大きく変えることは重要である。二十一世紀の初頭までに、党議席空白議会をすべてなくすために、計画的・系統的とりくみをすすめる。すべての中間選挙を積極的にたたかうとともに、九九年のいっせい地方選挙の準備をすすめる。農業委員選挙も重視してとりくみ、党委員の比重をたかめるために力をつくす。

 (3)革新・民主の自治体のいっそうの拡大をめざして、自治体の首長選挙を重視してとりくむ。この間の革新・民主の自治体のひろがり、とくに日本共産党が単独与党という新しい自治体の流れのひろがりは、特定の地域の、例外的なできごとではない。すべての地方で、新しい革新・民主の自治体の流れを大きくすることをめざす。そのために首長選挙の位置づけを抜本的にたかめ、日常的に地方政治の問題点をあきらかにし、要求にもとづく住民運動、市民運動を組織するなど、早くから系統的にとりくむことが大切である。

 革新・民主の自治体が成立した地域では、党は与党としてそれをまもり、発展させるうえで、住民に特別の責任をおっている。自民党勢力は、さまざまな手段を行使して、住民本位の行政の前進を妨害しようとしてくる。それをうちやぶって、公約を一つひとつ実現していくには、野党の時代にはなかった新しい知恵と力が必要である。この間の、東京都狛江市、足立区でのたたかいの経験は、地域住民の運動とむすびついて事態を打開すること、首長をささえる与党議員団の役割、党機関の正確で機敏な指導の重要性など、さまざまな豊かな教訓をふくむものであった。

 とくに、日本共産党員が首長をつとめる自治体の行政は、現実政治にとりくむ日本共産党の真価――行政担当能力を問われる試金石ともなる。兵庫県南光町の革新・民主町政は、その先駆的な民主行政の実績が注目されているが、日本共産党員が首長となった自治体が、さまざまな困難をうちやぶって前進することは、たんにその地域にとどまらない、全国的意義をもつものである。

 (4)この間に実施された沖縄基地問題や廃棄物処理場・原発建設問題などでの住民投票、沖縄での米軍海上基地建設の是非を問う住民投票をもとめる運動のひろがりは、住民の切実な意思と要求を直接、地方自治に反映するうえで意義深いものである。憲法が保障する地方政治を発展させるうえで、今後とも重視する必要がある。

 また、税金の使途や行政の悪習を告発し、是正させるための各種の「市民オンブズマン」活動も、住民自身による行政監視活動として大きな役割をはたすものであり、さまざまな形で連携、共同をはかっていく。


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