日本共産党

2001年11月22日(木)「しんぶん赤旗」

文化芸術振興基本法案が可決

衆院委文科委

問題点ただし日本共産党賛成


 文化芸術振興基本法案が、21日の衆院文部科学委員会で賛成多数で可決されました。同法案は与党3党と民主党などが共同提案したもの。日本共産党は、法案の問題点をただしたうえで賛成しました。日本共産党を含む6会派が提案した、文化芸術活動の内容に干渉しないなどの附帯決議も採択されました。

 採決に先立って日本共産党の石井郁子議員は、法案に「表現の自由の保障」「行政の不介入の原則」が明記されていないことを指摘。ユネスコの「芸術家の地位に関する勧告」や、東京都の文化振興条例などを示し、「きちんと明記すべきだ」と求めました。

 提出者側は、斉藤斗志ニ議員(自民)が「『表現の自由』は憲法が保障する権利であり、その考え方は前文、目的、基本理念の中で示されている」、中野寛成議員(民主)は「『自主性・創造性の尊重』との明記には『行政の不介入』の意味が含まれる」と答えました。

 石井議員は、法案に文化芸術活動の分野別の例示が法文化されている点について「法文上の規定はあくまで例示であり、これによって差別が生まれないようにすべきだ」とのべました。

 文化庁の銭谷真美次長は「すべての施策の対象であり、例示のあるなしで差をもうけたり、優先取扱いをするなどがないようにしたい」と答弁。

 また石井議員が、関係団体の要望である専門家の社会保障の実現などにどうとりくむかを質問したのにたいし、銭谷次長は「他の職種の取扱いとの関係も踏まえて、関係省庁とよく相談したい」と答えました。

 石井議員は、「文化芸術関係者の中にももっと議論をつくしてほしいとの声も残されており、十分議論することが求められている」と重ねて主張しました。

 文化芸術振興基本法案にたいする附帯決議の主な内容は次のとおり。

 施策の策定、実施にあたっては、必要な財政上の措置を講ずる。文化芸術のすべての分野を対象とするものであり、例示されていない分野についても対象となる。施策の実施にあたっては広く国民の意見を適切に反映させる。施策を講ずるにあたっては、文化芸術活動を行う者の自主性及び創造性を十分に尊重し、その活動内容に不当に干渉することのないようにする。


 

○石井(郁)委員

 日本共産党の石井郁子です。

 芸術文化を支援する基本法は、大きく期待をされていたところでございます。基本理念で、文化的権利、また専門家の地位の向上などを書き込まれたということが大変重要なことだと考えております。

 この間、我が党に寄せられましたメールなどを見ましても、日本の芸術文化全体の今後のあり方を示す基本法だけに、十分議論をし、五十年、百年の計に悔いが残らないようにしてもらいたいというのが大方の意見でございます。そうした立場から、私、質問をさせていただきます。

 音楽議員連盟の総会決議では、ユネスコの芸術家の地位に関する勧告等の精神にのっとった芸術文化基本法、仮称ですけれども、その創設が必要であるというふうにされてきたと思うわけです。

 一九八〇年のユネスコの第二十一回総会では、芸術家の地位に関する勧告が採択されました。その指導原則の第六項で、こう書かれているわけです。表現及び伝達の自由は、すべての芸術活動にとって基本的な前提条件であるので、加盟国は、この点につき人権に関する国際的、国内規定によって定められている保護が芸術家に確実に与えられるべきことを確保しなければならないというわけです。

 この法律を見ますと、表現の自由についての明記はございません。文化芸術の基本法であるならば、私は、前文に表現の自由の保障を明記すべきではないのかと考えるものであります。提案者からの御答弁をいただきます。

○斉藤(斗)議員

 お答え申し上げます。

 文化芸術活動における表現の自由ということは極めて重要なものだというふうに私ども理解をいたしておりまして、我が国の憲法第二十一条で保障されている権利だというふうに考えております。

 したがいまして、本法律案では、前文及び第一条の「目的」におきまして、文化芸術の振興を図る上で重要なポイントとして、文化芸術活動を行う者の自主的な活動の促進を旨とする、こういう点を明文で定めております。

 また、第二条の「基本理念」におきましても、第一項及び第二項で、文化芸術活動を行う者の自主性及び創造性を十分尊重すること、また第三項では、「文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利であること」、さらに第五項で、「多様な文化芸術の保護及び発展が図られなければならない。」ということが明記をされているわけでございます。

 そして、このような基本理念の考え方は、この法律のすべての規定の基礎となるものだというふうに御理解いただきたいと思います。

 かように、この法律案は、表現の自由を直接は明記してはおりませんが、文化芸術活動における表現の自由の保障という考え方を十分にあらわしているというふうに思っております。

○石井(郁)委員

 重ねてで恐縮ではございますけれども、一九六六年の国連第二十一回総会で採択をされて、日本では一九七九年に批准された国際人権規約、この十五条「科学及び文化に関する権利」でこうも書かれています。「この規約の締約国は、科学研究及び創作活動に不可欠な自由を尊重することを約束する。」と。

 だから、国際的水準に照らしても、当然のこととして表現の自由の保障というのはやはり明記すべきだというふうに考えているわけでございまして、この国際的水準から照らしてもどうなのかという点で、もう一点伺わせていただきます。

○斉藤(斗)議員

 前の質問が表現の自由に関連されて、今回も違った角度からの御質問になったというふうに思います。

 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、御指摘でございますが、我が国の憲法で保障する基本的人権の枠組みに合致するものとして、昭和五十四年に我が国でも批准をされております。そして、先生御指摘の同国際規約の第十五条第三項は、我が国の憲法二十一条で保障されている表現の自由と同趣旨の規定と考えられているところでございます。

 したがいまして、本法案は、当然憲法二十一条に規定する表現の自由を前提としているものでございまして、表現の自由を直接は明記はしておりませんが、文化芸術活動における表現の自由の保障という考え方を十分にあらわしているものと考えております。

○石井(郁)委員

 今憲法を前提にしているというお話でございましたが、それは当然だとは思うんですね。ただ、基本法で憲法を前提にしているから書かなくていいということにはならないと私は考えているわけでございます。

 既に宗教法人法あるいは男女共同参画社会基本法等々がございますけれども、そこには、やはり憲法で保障された例えば信教の自由の問題、国政において尊重されなければならないとありますし、また、我が国においては、日本国憲法で個人の尊重と法のもとの平等がうたわれて、男女平等の実現に向けたさまざまな取り組みが、国際社会における取り組みとも連動しつつという形で、それぞれうたわれているわけであります。

 だから、憲法に明記されていても第一条あるいは前文に取り入れる、これはもう既にこのように進んでいるわけでありますから、私は、文化芸術の基本法ということですから、その生命ともいうべきこの表現の自由の問題というのは、きちんとやはり書き込まれてしかるべきではなかったのかというふうに思うわけでございます。いかがでしょうか。

○斉藤(斗)議員

 重ねての御質問になりましたけれども、本法律案は憲法を前提にして組み立てられております。したがいまして、まさに表現の自由の保障、この考え方を前文、目的、基本理念において明らかにしてございますし、文化芸術の振興を図っていく方法について定めているものでございますし、改めて明文で規定しなくとも十分その趣旨は示されているというふうに考えております。

○石井(郁)委員 次の問題に移ります。

 行政の芸術活動に対する不介入の原則ということが大変大事だと私は考えています。また、差別、選別を招かないようにするという問題があるかと思うんですね。

 行政は芸術文化活動にやはり介入してはならない、これは特に権力として介入してはならないというのは、ある面で普遍的な到達点だというふうに思うんですけれども、この問題もやはりきちんとうたうべきだと、それがうたわれていない、これは何ゆえに明記されなかったんでしょうか、これも提案者に伺いたいと思います。

○中野(寛)議員 お答えをいたします。

 行政が芸術文化活動に介入してはならないということは、もうおっしゃるとおり、これは基本中の基本の考えでなければならないというふうに思います。

 そもそも、法律には消極的な概念と積極的な概念とが表現されると思います。積極的な概念というのは、これこれをするとか、これこれをしなければならないとか、消極的な概念というのは、これこれをしてはならない、これこれはしない、そういう分類も可能だと思いますが、何しろ文化芸術振興基本法でありますので、先生を初めとして、みんなが意欲的に、ぜひこういうものをつくりたいね、せっかくつくるならより一層いいものをつくりたいねという意気込みを持って論議に臨んできたことは御存じのとおりでございます。

 そういう中で、余り消極的な概念の方を入れるよりも、むしろ積極的な概念という形で表現も整える方が基本法としてはふさわしいのではないかなという気持ちが働いたことも事実でありまして、我々としては、言うならば、自主性を尊重するなどの表現をたびたび使っておりますけれども、これはひっくり返して言えば、自主性を侵してはならないということの表現にも通じるわけでございまして、御指摘の御趣旨は私どもも全く同感であります。表現上、我々としては、前向きの表現にむしろ統一するというような気持ちであらわしたことを御理解いただければありがたいと思います。

○石井(郁)委員

 例を申し上げますけれども、東京都の文化振興条例がございます。そこでは、第二条に「都は、この条例の運用に当たっては、文化の内容に介入し、又は干渉することのないように十分留意しなければならない。」とあるわけです。

 また、社会教育法を見ましても、「国及び地方公共団体は、社会教育関係団体に対し、いかなる方法によつても、不当に統制的支配を及ぼし、又はその事業に干渉を加えてはならない。」というふうにしているわけですね。

 だから、やはり法律で、こういう懸念とか危険性がある分野につきましてはきちっとうたっているということがあるわけです。私は、当法案でも、行政の不介入の原則をやはり条文として立てる、明瞭にすべきだというふうに考えてきたところでございます。重ねてで恐縮ですけれども、伺います。

○中野(寛)議員

 御指摘の東京都の条例も拝見をいたしました。第二条の第一項には、「都は、都民が文化の担い手であることを認識し、その自主性と創造性を最大限に尊重する。」と、ある意味では懸念される裏返しの部分を第二項に表現されたものと考えております。

 この今御上程をいただいております法案は基本法でもありますので、言うならば、だめ押し、念押しはしなかったと。先ほど申し上げました消極的な表現ではなくて、積極的に振興する、こうする、こうしなければならないということにむしろ統一したところに、基本法としての我々の意気込みをむしろ感じていただければありがたいなというふうに思います。

 ただ、これをもとにしていろいろな個別法ができますときには、憂慮されることなどについて触れられることも起こり得るかと思いますけれども、この基本法については、私どもの意のあるところをお酌み取りいただければありがたいと思います。

○石井(郁)委員

 どうもありがとうございます。

 私も、いろいろ皆さんと御一緒に討議にも加わった者といたしまして、やはりこの法案の作成で、ある面で大変問題というか、議論が深められたのが第三章かというふうに思うんですね。この「文化芸術の振興に関する基本的施策」というところだったと思います。

 この点で、これは民主党の提案者に伺った方がいいと思うんですけれども、当初、民主党案の第七条でございました「芸術文化活動への支援」というところで、「国は、芸術文化に関する国民の自主的かつ主体的な取組を支援するため、芸術文化活動への財政上の援助その他の必要な施策を講ずる」という形で、いわば大まかな形でここを書かれていたというふうに思うんですが、私はこの方がやはり検討に値する内容ではなかったかなというふうに思っているわけであります。

 それを、ちょっと中野先生に恐縮ですけれども、やはりプラス思考で進めまして第八条以降の例示がずっと入ったということで、このことで逆に、これは国からの介入を招くのではないかとか、また新たな差別を生むのではないかという疑念というか、心配が膨らんだかというふうに思うんですね。

 そこで、民主党提案者にお聞きするんですけれども、なぜ民主党案ではなくてこの振興策の方を選ばれたのかということでございますが、いかがでしょうか。

○山谷議員

 どうも御質問ありがとうございました。

 この法案を提出するに当たりまして、現在の文化芸術活動、日本における現状認識について問題であるというふうに考えたわけでございます。文化芸術の現状を見ますと、芸術家等の自主的な活動を促進するための基盤の整備や環境の形成は十分な状態にあるとは言えず、これらへの格段の取り組みが必要だというふうに考えたわけでございますけれども、このことを踏まえまして、本法律案は、文化芸術の振興を図るための基本的な法律として、振興基本法というふうに考えました。

 したがいまして、文化芸術活動への支援について、御指摘の民主党案のように七条でざくっと規定するというような方法もありますといいますか、民主党は当初、芸術文化基本法というふうに考えておりましたのでそのように考えたわけでございますけれども、本法律案のように、第八条以下の各条文において、文化芸術の各分野に対応して具体的な施策の例示を挙げて、わかりやすく、国が必要な施策を講ずるものという規定の仕方、振興基本法でございますので、そのような仕方があるというふうに考えたわけでございます。

 石井委員がおっしゃいましたように、そのような例示を挙げることによって、それで挙げられていないものに差が生じるとか優先順位が違ってくるとか、そのようなことはございません。

    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕

○石井(郁)委員

 しかし、やはりこれだけジャンル別、分野別というふうになりますと、どうしても差別、選別の問題ということが出てくるんじゃないか。出てこないことが最も望ましいわけですけれども、そういう問題を考えておかなくちゃいけません。

 これまでの議論の中でも、この条文に載るか載らないかということがある面で激論にもなって、ぜひ載せてほしいという、ある面で陳情合戦にもなったようなことがあったかというふうに思います。

 だから、この法文上の規定というのは、やはりあくまでも例示だということをぜひはっきりさせていただきたい。だから、これに載らないからといって、その分はもう日が当たらないんだ、あるいは差別されるんだ、差別というか、扱いを受けるんだということにはならないという点を、やはりこの委員会質疑の中できちんと御答弁をいただきたい。これは提案者と文化庁にもお願いしたいと思います。

○斉藤(斗)議員

 お答えいたします。

 ただいま山谷先生からも御答弁をいただいたわけでもございますが、第八条から十四条までの各条におきましてそれぞれの文化芸術の例示を挙げておるのは、あくまでもわかりやすくするということが目的でございまして、すべてを網羅している、またすべてを支援するという考え方でございます。したがって、この法律案で例示が挙がっていない分野も当然施策の対象になります。御理解いただきたいと思います。

 また、例示されている分野と例示されていない分野との間に差を設けたり、そういうことはいたしませんし、優先順位がどうのこうの、そういった趣旨のものでもございません。

 重ねて申し上げますが、すべて網羅をいたし、すべてを支援いたしたい、またそれに差はつけることはないということでございます。

○銭谷政府参考人

 ただいま提案者の方からもお話がございましたように、本法律案で第八条から第十四条までの各条におきましてそれぞれの文化芸術の例示を挙げているのは、あくまでわかりやすくするためのものであるというふうに承知をいたしております。

 このため、今後、文化庁におきまして、文化芸術の振興の施策を講ずるに当たりましては、例示されている分野と例示されていない分野との間に差を設けたり、あるいは例示されている分野を優先的に取り扱うなどのことはないようにしてまいりたいと考えております。

○石井(郁)委員

 私、この問題をなぜ重視するかと申しますと、現に文化庁のこの文化行政の中で、予算配分を見ますと、重点配分というのは強まっているんですよね。

 例えばアーツプラン21、これは我が国芸術水準向上の牽引力となることが期待される芸術団体ということで、その芸術水準の向上ということで、もうその評価がされて予算が配分されるということになるんですね。私ども、芸術水準の向上という問題も、法案作成の過程で大変議論をして、これは取り除いた経過があったというふうに思いますけれども、やはりこの新世紀アーツプランではトップレベルの団体ということになって、それが配分の基準とされてきたということがございます。

 だから、そういうトップレベルかどうかというのはまさに評価にかかわるわけですから、私は、この法文で言う自主性の尊重、創造性の尊重では済まなくなるというふうに考えますし、また恣意的評価も招きやすい。ですから、やはりこの法案の実施に当たって、この行政の恣意的な評価、本当に招かないのかな、招かないんだということをはっきりさせてほしいし、そして予算を十分にふやして、希望する団体に広く当たるようにする。本当の意味でのこの芸術文化の振興を、本当にすそ野から広げていくということ、やはり公正に行っていくということを強調したいわけでございます。

 これは提案者に伺います。

○松浪議員

 御質問をお聞きして、全くそのとおりであるというふうに思いました。

 それで、文化芸術の発展のためには、我々のやっているスポーツなんかも同じなんですけれども、トップレベルの文化芸術を引き上げるとともにそのすそ野拡大を図ることの双方が必要である、こういうふうに考えます。そのためには、双方の施策を展開していくためには十分な予算と適正な評価が必要であると考えます。したがいまして、今後、予算の拡充ということはぜひやっていかなければならない、このように思います。

 また、トップレベルの文化芸術の支援につきましては、芸術家や有識者等専門家による適切な評価が求められるものであります。このような観点から文化行政が行われていく必要がある、このように思います。

○石井(郁)委員

 どうもいろいろ御丁寧にありがとうございます。

 私、先ほども触れたんですけれども、やはり国が芸術文化活動の内容に立ち入ってはならないというか、本当に関与してはならないというのは、この分野では何度も念を押しても押し過ぎることがないほど重要な問題だというふうに考えているんですね。

 それは、戦前の教訓からも、やはり芸術文化活動の内容に国家権力が介入したりする、統制をすれば、本当に自由な多様な発展の息の根をとめてしまうわけですから、世界的にも、歴史上そういうことがいろいろありましたから、これは大変大事な原則で、この点で、イギリスではアームズ・レングスの原則、つまりお金は出しても口は出さない、要するに支援者と被支援者との間に距離がある、このレングス、腕の長さ、距離があるという話なんですね。だから、政府とは別にアーツカウンシルだとかを設ける、あるいはアメリカのように税制支援をベースに助成も連邦芸術財団というところでやるだとか、間接支援にして内容には関与しない、そういう仕組みなんか持っているんですよね。
 そこまで今日本ではすぐはいかないかもしれないけれども、やはりせっかくの基本法の提出ですから、こういう国がこの分野で内容には関与しないという仕組みあるいは原則というのは、やはりきちんと確認しておくことが必要ではないのかというふうに思うわけですね。その辺はいかがでしょうか。

○中野(寛)議員

 お答えをいたします。

 先ほど若干申し上げましたが、我々としては、芸術振興についての、文化振興についての積極的な姿勢をこの法律にいかに強く表現するかという気持ちでつくったことを申し上げましたが、そういう意味でも、前文、それから第一条の「目的」、第二条の「基本理念」等に、この芸術活動を行う者、文化活動を行う者の自主性を尊重する、また創造性を尊重するということを書くことによって、行政の不介入をむしろ明記した、その意味も含まれている、こういうふうに私どもは考えております。

 言うならば、手を出すときにも、手のひらを上に向けて応援する、あおぎ立てるということはあっても、手のひらを下に向けて抑えるようなことはしてはいかぬと。同じ手を出すにも、手のひらによって、向きによって気持ちも表現も違ってくるわけでありますが、私どもとしては、そういう応援の気持ち、すなわち振興の気持ちをベースにした基本法であるという趣旨で御理解を賜りたいと思います。

    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕

○石井(郁)委員

 別の問題点を申し上げたいと思うんです。

 文化的権利ということは明確にされました。しかし、社会保障等の認知というか、この分野までは踏み込んでないという問題があるんですね。

 何度も申しますが、ユネスコの芸術家の地位に関する勧告では、こういうふうに述べられています。芸術家が享受すべき自由及び諸権利、特に、収入及び社会保障に関する諸権利の認知を意味すると。だから、そういう理解をしなきゃいけないということなんですが、そういう社会保障にまで踏み込まなかった、その理由はどういうところにあるんでしょうか。

○山谷議員

 御指摘、御質問ありがとうございます。

 第二条の「基本理念」の第二項では、文化芸術活動を行う地位の向上についての規定が置かれております。地位の向上とは、一九八〇年のユネスコで採択されました芸術家の地位の向上に関する勧告によれば、一方で、芸術家に払われる敬意を意味し、他方で、芸術家が享受すべき自由及び精神的、経済的、社会的権利を意味するものとされております。

 石井委員の、社会保障まで踏み込まなかった理由はなぜかという御質問でございますけれども、このように、地位の中には、社会保障を含む経済的かつ社会的権利が含まれているものと考えております。

○石井(郁)委員

 この前、基本法作成に当たって、いろいろな関係芸術団体、文化団体からの御要望がございましたけれども、いわゆる芸団協、日本芸能実演家団体協議会からの提言、私どももこの五月に受け取りましたが、その具体的な提言の中を見ましても、実演家の地位を保障するためにというところが大変強く出されたというふうに思うんですね。

 実演家の就業形態のうち、労働法の適用になじまない分野については、実演家独自の社会保障制度を創設してほしい、一般勤労者が享受しているものと同様の保障の実現を法的に図る必要があるということがございました。また、仕事上の事故の保障、失業に関する共済制度の創設、医療保障について全国レベルの国民健康保険組合を認めるとか、年金制度については、実演家みずからが運営する芸能人の年金制度を公的に位置づけるというような提案がございました。

 こうした個々の問題について、今後どういう取り組みがなされていくんだろうか。これは、文化庁としてどのようなお考えか、伺っておきたいと思います。

○銭谷政府参考人

 御説明を申し上げます。

 ただいまお話がございましたように、社団法人の日本芸能実演家団体協議会の方からは、芸能家の地位を保障するために、繰り返しになりますけれども、実演家独自の社会保障制度の創設、仕事上の事故や失業に関する共済制度の創設、全国レベルの国民保険組合の設置、四点目には、芸能人年金制度の公的な位置づけなどにつきまして御要望がなされているのは承知をいたしております。

 これらの御要望につきましては、他の職種における取り扱いとの関係なども考慮をいたしまして、それぞれの制度の中で実態も踏まえて検討すべき事柄であると認識をいたしております。関係省庁ともよく相談してまいりたいと考えております。

○石井(郁)委員

 大体時間が参りました。

 私、最後に、やはり文化行政の民意の反映ということが大変重要でございますので、その点で、条文の三十四条を、これは政策形成への民意の反映として、芸術家や学識経験者その他国民の意見を求め、これを十分考慮した上で政策形成を行う仕組みの活用等を図るものとするというふうにありますね。

 それからもう一方で、文部科学大臣は、文化審議会などを通して政策決定を行うということがあるかと思うんですが、これは第七条ですけれども、その関係がどうなのかなということも含めまして、特にこの第三十四条ですね、この民意の反映ということは、具体的にどのようなことをお考えになっていらっしゃるのか、ちょっとそこをお伺いしたいと思います。

○河合議員

 現在、文化庁には、芸術家また有識者等で構成されております文化審議会を初めといたしまして、各施策を推進するために、民間の有識者等から成る各種の会議が設置されて、その意見を政策に反映されていると承知しております。

 今後とも、各種の会議を通じまして、また先ほど答弁の中にもございましたように、インターネット等を通じまして、国民の声を幅広く、深く聞いていく施策を積極的に進めていくべきと考えております。

 さらに、文化審議会の意見を聞くこととされているわけでございますけれども、本法律案の第二条第八項に定められておりますように、石井先生御指摘のように、「文化芸術の振興に当たっては、文化芸術活動を行う者その他広く国民の意見が反映されるよう十分配慮されなければならない。」との基本理念は、文化審議会のあり方そのものにも規定していく基本理念であると考えております。

○石井(郁)委員

 各それぞれの箇所には、そういう形で広く国民の意見が反映されるよというのはあるんですけれども、何かそれを全体として、どうなっていくのかなということがもう一つわかるようでわからないようなところがありまして、これは今後、私どもしっかり見ていかなくちゃいけないというふうに考えています。

 時間が参りました。

 この法律案の中には、国語についての理解とか日本語教育の充実という点で、これも議論になったところですけれども、私どもは、文化芸術の振興にはなじまない条文ではないかというふうに考えているところであります。

 しかし、申し上げておりますように、全体として、文化的な権利が明確にされたことや、専門家の地位の向上、また税制についても法文に盛り込まれたということなどで、またこれまで答弁をいただきまして、表現の自由についても、また行政の芸術文化活動の内容への不介入、また分野別にも差別、選別をしないということをしっかり御答弁いただきましたので、私どもは法案に賛成をするものでございます。

 しかし、今さまざまな団体からいろいろともっと議論を尽くしてほしいという声はあるかと思うんですね。そういう点で、国会としてもやはり議論はきちんとまだ続けなければいけないというか、しなければいけないということを申し上げまして、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

 


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