2000年1月30日「しんぶん赤旗」

 ユーゴ空爆が“仕組まれた戦争”だったとは?


 〈問い〉 NATO軍によるユーゴ空爆はアメリカのしかけた“仕組まれた戦争”だったとのことですが、具体的に教えてください。(石川・一読者)

 〈答え〉 昨年三月、ユーゴ・コソボ州の人道上の惨禍を防ぐことを名目にアメリカの主導で開始されたNATO(北大西洋条約機構)軍によるユーゴ空爆は、舞台裏が明らかになるにつれ、平和の国際ルールをふみにじった干渉戦争の無法ぶりがいっそう明らかになっています。

 昨年二月、パリ郊外のランブイエで米英独仏伊にロシアも加わった連絡グループが調停役になり、コソボ問題での和平交渉がおこなわれた時、最終段階で、アメリカなどが突然、グループ内の合意もなく、ユーゴの絶対のめない和平の「最終案」を示しました。「最終案」には、NATO軍はユーゴの全土に展開し、訓練・作戦行動ができ、犯罪の訴追や課税も免除されることを盛り込んだ文書(付属文書B)がつけられていました。これはNATO軍が、ユーゴ全土を占領するという計画に等しいもので、アメリカは、空爆開始の口実づくりのためにユーゴののめない案を示したのです。交渉は結局中断し、三月にパリで再交渉がおこなわれました。NATO側は、空爆の脅しを背景に、付属文書Bを含む和平案の全面受け入れを迫り、ユーゴ側の受け入れ拒否を理由に交渉を打ち切り、空爆を強行したのです。

 アメリカが空爆の口実として宣伝した、コソボでの「大量虐殺」なるものも、規模が誇張されたものであることが明らかになっています。

 この経過は、ユーゴ空爆がもともと“仕組まれた戦争”だったことを物語っています。昨年四月、NATOは、アメリカ主導で新しい軍事・戦略方針(新戦略概念)を採択しました。これは、それまでの「防衛」という建前を捨て、国連にもはからず他国に武力介入するという方針です。ユーゴ空爆は、その「テストケース」(オルブライト国務長官)として選ばれたのです。

 アメリカの覇権主義の横暴にたいしては、国連総会の場やNATO諸国からも“ユーゴ空爆を前例にするな”といった批判の声が出され、アメリカの軍事的覇権主義は孤立化を深めています。(豊)

 〔2000・1・30〕


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