プルサーマル計画が延期されたのは?


 〈問い〉 原発問題でプルサーマル計画を延期すると発表されましたが、どういう計画なのですか。どこに問題があるのですか。(広島・一読者)

 

 〈答え〉 プルサーマル計画というのは、現在動いている原子炉(軽水炉)のウラン燃料の代わりにウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)を使う計画です。プルトニウムは、原発で使用した核燃料の再処理によりとり出されるものです。プルサーマルという名称も、プルトニウムを熱中性子(サーマルニュートロン)炉(軽水炉)で燃やすことに由来します。

 この計画は、九七年二月の政府決定を受けて全電気事業者が発表したもので、後述の四つの原発に二〇〇〇年までに導入し、二〇一〇年までに全電力会社で合わせて十六〜十八基に導入するというものです。これを実施する前に東海村の核燃料施設の臨界事故が起こり、MOX燃料の検査データのねつ造事件なども明るみに出たために、プルサーマル実施の安全性への疑念が強まり、延期を余儀なくされました。延期されたのは、当初の導入予定のすべての原発、つまり東京電力の柏崎刈羽原発3号機、福島第一原発3号機、関西電力の高浜原発3、4号機です。

 政府は、世界各国が撤退してきている高速増殖炉へのプルトニウムの利用を本命にしてきましたが、一九九五年に起きた「もんじゅ」の事故によって、それができなくなりました。そのために余剰のプルトニウムは持たないという国際公約を果たせないとして、政府・電力会社は軽水炉での利用という場当たり的な方向に走ってきました。

 何より重大なことは、安全にかんする十分な実証試験も経ないで、営業炉への大規模な導入をはかろうとしていることです。プルトニウムはウランに比べて放射能が数万倍も強く、MOX燃料を燃やせば長寿命の放射性物質が多くできるため、事故時の被害は格段に大きくなります。現状では、使用済み燃料の再処理の技術もなく、生じる放射性廃棄物の処理・処分もいっそう困難になります。このような無謀な計画は止めるべきです。(日)

〔2000・2・5(土)〕



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