2000年4月23日(日)「しんぶん赤旗」

 リストラ規制のためのEUの指令とは?


 〈問い〉 ヨーロッパでは、EUがリストラ・解雇を規制するルールづくりを指令の形で出しているとのことです。どんな指令なのですか。(千葉・一読者)

 〈答え〉 ヨーロッパでは、各国が解雇規制立法などの法整備をしているのに加え、EU(欧州連合)が、指令の形でリストラ・解雇規制のルールづくりをすすめているのが、特徴です。指令は、拘束力をもち、加盟国は国内法制定などの義務をおいます。

 例えば、通称、大量解雇指令(七五年)といわれる指令があります。これは、多国籍化した大企業のリストラ・解雇が目につくようになった時に出された指令で、リストラのような「大量解雇」を規制し、使用者が大量解雇を計画する時は、労働者側と大量解雇を回避し、和らげるなどの可能性を含め、協議しなければならないこと、使用者は、計画するすべての大量解雇について、労働者代表との協議等を含めて管轄官庁に申告しなければならないことなどを指示しています。イタリアでは、この指令にもとづいて九一年に、集団的解雇の規制立法がつくられました。

 また、既得権指令(七七年)という指令もあります。これは、企業の合併や買収が増大するなかで出されたもので、企業・営業の譲渡の際、労働者の既得の権利を守るための指令です。指令は、企業譲渡の時点で存在する労働契約・雇用関係から生じる譲渡人の義務と権利は、譲渡先の受取人に移転すると明記。企業譲渡を理由にした解雇を禁止しています。

 そのほか、欧州労使協議会指令(九四年)という指令は、多国籍企業にたいして、集団解雇など従業員に重大な影響を及ぼす経営上の施策をおこなう場合、ヨーロッパ規模の企業内協議機関(欧州労使協議会)の設置を義務づけています。

 日本では、リストラ・解雇を規制する法律がなく、規制ルールが未確立です。日本共産党は、そのため今国会に雇用三法案(解雇規制法案、労働者保護法案、サービス残業根絶法案)を提出しています。 (豊)

〔2000・4・23(日)〕



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