2000年3月4日(土)「しんぶん赤旗」

 欧州での極右の政権参加をどう見る?


 〈問い〉 オーストリアで極右政党が政権参加したことが話題になっています。日本共産党は、この問題をどうみていますか。(北海道・一読者)

 〈答え〉 オーストリアでは、昨年十月の総選挙で二七%の得票率を得て第二党に躍進した極右政党である自由党と、わずかの差で第三党に転落した保守の国民党の連立政権が二月四日に成立しました。

 自由党の台頭については、(1)一九三八年にナチス・ドイツに合併されたオーストリアでは、国民投票で九九・七%が合併を支持し、ナチ体制の一翼を担ったにもかかわらず、戦後は被害者の面だけが強調され、共犯者としての側面が深く追及されてこなかった、(2)同国では、社民・国民の二大政党による利権分配体制が戦後長く続き、自由党はそれにたいする国民の広範な不満を吸い上げた――など同国の現実に深く根ざした背景が考えられます。

 自由党の政権参加にたいし、欧州連合(EU)加盟十五カ国のうちオーストリアを除く十四カ国は、政治接触の停止など二国間関係上の制裁措置をただちに発動しました。EU諸国はその理由として、ナチの政策を一部美化するような自由党ハイダー党首(二月二十八日辞任)の発言や、外国人排斥など同党の排外主義的な政策がEUの基本原則に反することをあげています。

 EUの基本法であるEU条約(アムステルダム条約)は、ナチズムの過去の反省も踏まえて、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配などEUの基本原則を定め(第六条)、重大な違反の場合の権利停止も規定しています(第七条)。

 今回の措置は第七条を直接発動したものではありませんが、第六条の精神にそったものであり、ナチズムの過去をつねに断罪し、民主主義や基本的人権に反する人種差別や排外主義の広がりを許すまいとするEUとしての自己規律の発揮といえます。(小)

 〔2000・3・4(土)〕



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