日本共産党

個人情報保護法案の討論

 2003年4月25日 衆議院 個人情報特別委員会 日本共産党 春名直章議員

 私は、日本共産党を代表して、政府提出の個人情報の保護に関する法律案及び関連四法案に反対、並びに野党提出の個人情報の保護に関する法律案及び関連三法案について賛成の討論を行います。

 政府案に反対する理由の第一は、表現、報道の自由を侵害するおそれがあるということです。

 政府基本法案には、個人情報を取り扱う事業者を監督するために主務大臣が設けられています。主務大臣には事業者の取り扱う個人情報が報道目的なのか著述目的なのかの判断がゆだねられており、報道や著述が狭く限定されたり、恣意的な判断がなされるという、公権力が報道や著述に介入できる危険な構造となっていることは重大です。

 また、政府案は、放送機関や新聞社などに、個人情報の苦情処理や適正な取り扱いを求める規定を設けています。メディアが自律的に定めるルールや倫理に国が法律で指示すべきではありません。疑惑の政治家がこの規定を根拠に、苦情に応ぜよと要求し、報道取材活動を妨害する口実にもなります。

 一方、野党案には、表現、報道及び個人のプライバシーに公権力を介入させないために、これを実施する監督機関を、行政から独立性を持つ第三者機関で行うことを規定しています。

 政府は、第三者機関は行革に反すると言っておられますが、この必要性は、政府案を検討してきた専門家も参考人質疑で明らかにされました。しかも、第三者機関は、既にイギリス、ドイツ、フランスでも実施されている国際標準であります。

 反対理由の第二は、政府案には、思想、信条、病歴、犯罪歴など、個人の名誉、信用、秘密に直接かかわるセンシティブ情報の収集や取り扱いを禁止する規定が欠落していることであります。

 これらの個人情報は、野党案に規定されているように、民間事業者であれ行政機関であれ、法律に基づく場合や生命にかかわる緊急な場合など特別の場合を除いて原則収集禁止というのが、憲法に定められた幸福追求権や法のもとの平等原則からも当然です。

 センシティブ情報の収集禁止規定の必要性は、自衛官募集リスト事件、昨年の防衛庁の情報公開者リスト事件でも明らかであります。政府は、センシティブ情報を類型化できないからと拒否しています。しかし、この規定は、諸外国でも設けられ、国内では個人情報保護条例を策定している地方自治体の六割が既に設けて実施しているもので、何ら問題は起きていません。

 反対の第三の理由は、自分の情報の取り扱いに自分が関与し選択するという自己情報コントロール権の立場をとっていないために、企業や行政機関の運営が優先され、個人の権利が後景に追いやられていることであります。

 その典型が政府の行政機関法案の目的規定です。「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護する」という規定に端的にあらわれています。

 また、個人情報の目的外利用についても、相当な理由があるときというあいまいな規定では、行政の都合や利便性に偏った判断で、個人情報が国の機関から地方公共団体まで全国の行政機関で使い回しされるおそれがあります。

 この点、野党案は、法案の目的に個人情報の取得、利用、提供など、本人が関与する自己情報コントロール権の立場を明記しています。

 目的外使用についても、第三者機関である個人情報保護審査会に諮問し、客観的立場からの検討を経てから使用の是非を決めるなど、行政の恣意的判断を排除する仕組みになっているのであります。

 第四の理由は、政府案の制定によって、金融、通信など手厚く個人情報保護策を講ずる必要がある分野の施策が後退するおそれがあることです。

 これらの分野は、現在、所管省で基本法案よりハードルが高いガイドラインを設けて個人情報を保護しています。ところが所管省からは、基本法に合わせてガイドラインのハードルを引き下げる意向が審議の中で明らかにされました。個人情報保護法の制定が個人情報保護策の引き下げの役割を果たそうとしていることは重大であります。

 以上、政府案について反対、野党案について賛成であることを表明いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)


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