こうして防ごうピッキング被害/二重かぎやシリンダー交換/地域のつながりも大切


2001.03.25


 

 特殊な工具で、ドアのかぎ穴を開けて侵入する「ピッキング」犯。都市部を中心に全国的な広がりを見せています。被害にあわないためにはどうすればいいのでしょうか。ノブ細工中の犯人の姿が... 横浜市青葉区。戸数十四戸のマンション一階に住む福田克己さん(62)が、昨年秋、家族で夕食をとっていたときのことです。突然、玄関ドアをガチャガチャと触る音がし、のぞき穴から見るとノブに細工している若い男の姿が。声をかけると男は逃走。福田さんが急いで後を追いましたが、すでに逃げた後でした。

 共働きの隣家が帰宅し、「やられた!」と福田さん宅へ飛び込んできたのは、それから間もなくのこと。部屋はめちゃくちゃに荒らされ、現金などが盗まれていました。「高校生の娘さんが帰宅する前だったのが、なによりでした」と福田さん。

 マンションは道路に面し、道路側の二部屋の電気を消しておけば、たとえ食堂に電気がついていても外からは真っ暗に見えます。福田さん宅が留守だと思ったのでしょう。福田さんは事件後すぐに、ピッキングに強いかぎに取り換えました。窓にも補助錠をつける 「被害は全国に広がっています」と語るのは、街のかぎ屋さんの全国組織、「日本ロックセキュリティ協同組合」事務局長・深野環さん。同組合によると、防犯対策の基本は(1)ワンドア・ツーロック、(2)シリンダー交換、(3)窓にも補助錠の三点です。

 (1)は、一つのドアに錠を二つ以上つけること。侵入に要する時間が二分を超えると五三%、五分でさらに二〇%の泥棒が侵入をあきらめるといいます。視覚的にも、その家の防犯意識の高さが示され効果的です。

 (2)は、ピッキングに強いシリンダー(かぎを差し込んで回す部分)に交換すること。現在大量に普及している、カギの溝がV字型の「ディスクシリンダー型」は、工具があれば簡単にあくのです。

 シリンダーは自分で交換することも可能ですが、さまざまな種類があり、ちょうど合うものを購入する必要があります。その際は、今使っているかぎのメーカー名、型番、扉の厚さ、錠前の色などを調べて購入します。

 (3)は、窓についているクレセント(締め金具)のほかに、窓の上か下部分に補助錠を設置することです。
 「最も大事なのは、信頼できるかぎ屋さんを見つけること。シリンダー交換で五万円など、法外な値段を請求する悪質な業者もいます。数社から見積もりをとることをおすすめします。ただし品薄状態が続いていて、納品に時間がかかる可能性も」と、深野さん。

 引っ越しのシーズンですが、「引っ越し先のかぎは取り換えた方が安全。大家さんや管理組合に相談してみては。海外では引っ越すたびに錠前を持っていくところもあるそうです」とも語ります。

 インターネットでピッキングの工具や技術が売られる時代。これまで「ドアの付属物」と見られていたかぎですが、その見方が大きく変わろうとしています。さまざまな防犯用品が 東京の大手日用品店の防犯用品売り場。大勢の客で混雑しています。棚にはピッキング対応のカギや最新式防犯グッズがズラリ。「ピッキングに強いかぎに交換したら、決してなくさないで」と、店員の男性。従来のように簡単に複製することができないからです。

 こうした対策で万全でしょうか? 都市防犯研究センターの調べでは、泥棒が犯行をあきらめた理由として、「近所の人に声を掛けられたりジロジロ見られたから」が六三%(グラフ)にのぼります。

 ピッキングの相談に応じてきた、日本共産党東京・港地区委員会のマンション相談室室長・秋元英常さんは、「『自分の家だけ守る』というのでなく、地域で日常的に横のつながりをつくることが、本当の意味での防犯になるのでは」と語ります。住民間の結びつきを強め、協力しあうことが大切になっています。



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