分譲マンションでの安定的居住をめざして
──大阪市会議員団の取り組み──

日本共産党大阪市会議員 稲森 豊

2004.05.08


 2004年5月8日、日本共産党大阪市会議員団は、「マンション問題交流・懇談会」を開きました。その中でおこなわれた、日本共産党大阪市会議員の稲森豊さんの報告を紹介します。


 皆さん、こんにちは。ご紹介頂きました平野区選出の大阪市会議員稲森豊でございます。

 今日は代表して私の方からこの間、大阪市会議員団として分譲マンションの取り組みを行って参りましたけれども、それを報告させていただきます。その前に最初、姫野団長の方からも報告がありましたけれども、なぜ、日本共産党大阪市会議員団がこの分譲マンションを取り組むのか。今回、多くの方にご案内を差し上げました。そうするといい企画だということで、参加されている訳ですけれども「政党が何でやるのか」「うちは政党は関係ない」「我々だけでやるからかまわないでほしい」というご意見もあったわけです。そこで、最初になぜ私たちが分譲マンション問題を重視し取り組んできたのか、この点をまず最初に私の方から話をさせていただきたいと思います。

なぜ分譲マンション問題を重視し取り組んできたのか

 私たち大阪市会議員団、大阪市内で起こります様々な、単に住宅問題だけでなしに、福祉、あるいは環境の問題、ありとあらゆる市民の皆さんの要求を実現するために全力をあげて頑張っているわけです。とりわけ衣食住、人間の生活の三大基本でありますけれども、特に住宅問題につきましては、分譲マンションだけでなしに、都会におきます居住の問題は大変でして、貧困の問題もありますし、子供さんが増えて家族が増えて住宅が狭いとか、様々ありまして、今まで公営住宅の大量建設なども取り組んで参りましたし、それとか新婚家賃の補助問題、最近では高齢者の皆さんがひとり立ちできない方でも市営住宅に住む高齢者ケアー付住宅を増やせとかありとあらゆる住宅に関する皆さんの要求かかげて頑張って参っております。特に分譲マンションの問題というのは、もともと大阪市も今、言っているんですけれども「分譲マンションは個人の財産ではないか。個人の財産というのは基本的には個人で守るんだから、大阪市としては特にしない」というのが、基本的なスタンスだったんです。しかし、我々は分譲マンションは確かに個人の住宅でありますけれども、今のような状況を放置すれば、大阪の街のあり方とか、住んでいる方だけではなしに、地域の環境も含めて大変な社会問題になるということをいろいろ議論したり、他の都市の状況などを調べて、ある意味で先見性を持って問題提起して参りました。

市議会における取り組みの経過と実績

 議会におきましては、最初に取り上げましたのは1994年、今から10年前の代表質問で、杉谷恒治議員が住之江区の元議員でありますが、その時に初めて、「分譲マンションの大規模修繕など共用部分についての公的な補助をやるべきだ」あるいは「専門家による住宅相談センターを作ってほしい」「また区役所に相談員を配置してほしい」とかあるいは「共用部分の固定資産税の減免をしてほしい」こういう事を10年前に代表質問でやったのをかわきりに、この間、10年間に渡りまして、毎回分譲マンションに起こって参りました様々なご要望に応えて頑張ってきました。時間の関係で全て申し上げられませんけれども、今日、お渡しいたしております私のレジメの裏にこの間、大阪市会議員団が取り組んで実現してきた項目を全て書いております。

 当初は、大阪市は「個人の財産は個人で守れ」というようなスタンスで譲らなかったわけですけれども、資料1ですね。毎年毎年、こういう形で要求していっているんですけれども、この間、特に力を入れて参りましたのは、一般の持ち家と比べて共同住宅であるがゆえに不利になっている点を是正してくれと、主にやってきたんです。

 それと例えばプレイロット、子供の遊び場ですね。これも皆さんが公的に使うんだけれども、すべて居住者の負担になっていますね。これは平成13年度より固定資産税あるいは都市計画税3分の2を減免するという制度が実現しました。同時に集会所、これも規模が100?以上あるとかそういう条件があるんですけれども、集会所についても固定資産税が減免されるようになりました。それとこの住宅情報センター、ここに分譲住宅の維持管理と建替えに関する相談室が設置され、そして大阪市のマンション管理建替え支援事業というのが、平成12年より実施されてきました。あと1981年以前に着工した耐震改修費補助の実現、工事費の13%補助するというのも実現して参りました。

 最近では平成14年度より今回のご案内の中でも多くの管理組合の方から要望のありましたエレベーター内への防犯カメラの設置ですね、これも今の世情を反映して、何とかしてほしいということでようやく平成14年度より実施した訳ですけれども。これはですね、大阪市の考えというのは、まず全てのエレベーターに防犯カメラを設置するのを自動的に補助するというのでなしに、防犯カメラができればそれによって防犯上良いでしょうという啓蒙的な意味もありまして、とりあえず一機だけなおかつ工事費の4分の3ですか、それと最高限度15万円という、そういうまだ本当にささやかでございまして、しかしながら一応公的な支援で一機についてはエレベーター内に防犯カメラをつけることが実現したわけです。

 それと後、マンションアドバイザーを派遣する、建替え検討費用、管理組合で建替えをするということを決議されたならば、その建替え検討の為のいろんなアドバイスをしたり調査費用についても補助を出すという。これも去年、平成15年より実施するという形になっています。それ以外にまだまだバリアフリーの問題とか、二重丸で書いていますようなものを毎年要望しているんですけれども、なかなかうんと言わない。議会で答弁求めますと「基本的には個人の財産は個人で守るべきです」という答弁しかないんですけれども、しかしながら、粘り強く、要求の根拠、公共性などを主張していく中で、徐々にではありますけれども実現しております。

 他の都市と比べましたら大阪市は非常に遅れているんです。例えば、吹田市ではこの固定資産税の減免、ゴミの収集の場所については吹田市では免除しています。集会所についても規模がいくら以上なかったらいけないとか、そういう条件も全くなしで、自動的に団地の集会所については固定資産税が減免されています。それに比べて遅れていますけれども大阪市におきましても、皆さん方と協力しながら、かなり先見性を持って粘り強く要望していく中で実現しております。

 あと大阪市におけるマンションの問題、先ほど高瀬さんの方からも全国的な問題もありましたけれども、3年前の5月19日に第1回のマンション問題懇談会させていただきました。そのときに160名以上の方が参加されました。その当時は市内全体で2210団地、195700戸だったんです。要するに区分所有という形で課税していくマンションはいくらあるのかということを各区役所で調べていきますと、この3年後、今年の1月1日現在では、なんと3114団地これも資料に載っておりますけれども、229011戸。195700戸から229000戸と、3年間でものすごく伸びております。今大阪市内では約2割が分譲住宅に住んでおられる方がいらっしゃいます。ここでいろんな問題が起こるとなれば、まさに大阪の街づくりにとって大きな社会問題になります。ますます分譲マンションの課題を取り上げていく必要性が高まっているのではないかと思います。

分譲マンションにおいて果たして「安定的居住」は保障されているのか

 そこで私たち議会で議論する中で、分譲マンションに住んでいる方というのは、もともと「煩わしい事はかなわん」と「安全でドアを閉めたら快適に住みたい」というそういうご要望の方がおられて、ベル押してもインターホンで入るにも番号のわからないところがあり、入れないというところがあり、できるだけ世間とのお付き合いを最低限にしたいという方々が、そういうご要望を持って入っておられるんですけれども、しかし、実際そういう状況がこれからも続くんだろうかという事を考えれば、今回の私たちのテーマで書いておりますように、安定的居住が本当に永久に続くんだろうか、先ほど高瀬さんの報告もありましたけれども、今マンションに住んでいる方、昔は高度成長期でしたので、転売して将来は一戸建て住宅を手に入れるという足場にしたいということで転売して高く売っていたんですけれども、最近は売っても元の買値が戻ってこない、あるいは買い替える余裕がなくなっている高齢化という問題ですね。これからずっと住み続けざるをえないという方が非常に増えているという状況ですね。その中で最初はそういう問題に無頓着であったんだけれども、老朽化などでいろんな修繕するためにお金がいるとか、長らく経つにつれて関心を持たざる得ない状況がでてきております。実は私も25年間分譲マンションに住んでおりましてね、今日も団地の方、お見え願っておるんですけれども、建替え大規模修繕、こういうのが大きなテーマになっておりまして、私も研究する一員としてお手伝い願えないかと要請受けているんですが、こんな筈じゃなかったという状況が非常に生まれてきていると思うんです。

「こんなはずではなかった」という深刻な状況が

 例えば、今日、資料一つだけ紹介させていただきますけれども、分譲マンションの維持の困難さ、これは一戸建て住宅も個人の財産ですけれども、一戸建て住宅ならば、定年退職して年金生活に入っていれば修繕も雨漏りしていたら瓦を変えるとか、そういう生活の範囲内で何とか維持して最後、家が老朽化して潰れた場合でも土地だけが残ってね、息子さんがまた新しく力があれば家建替えるという小回りの利く対策がとれるんですが。ところが分譲住宅の場合はなかなかそうは行かないです。うちはこうします、うちはこうしますとなりません。一定の企画以上のことをやらないといけないと。そうすると例えば雨漏りということになれば、うちは雨漏りしていないから屋上の人だけやったらいいじゃないかとこういうことになりませんので、必ずそれを負担しないといけないと。それは修繕金を積み立てておりますので、その範囲内でよかったんですけれども、建替えとなりますと額が違いますからね。実際それをやっていこうとすれば、まず先ほど法改正がなされたとしても5分の4の賛成を得なければならない。なおかつ高齢者が増えておりますので、負担できないというために建替えはしてほしいんだけれども、賛成できないという方が圧倒的多数です。このままでいけば、いたんだままで老朽化していく。悪く言えばスラム化するという事態が当然予想される。今から具体的な対策をとっていかなければ将来大変な問題になっていくという社会問題になるということを申し上げているんです。

維持経費は一般住宅より割高 “7割も高い水道水”

 それと、皆さん方もたとえば住宅を買う場合、高い賃貸マンションに住むよりもそのお金でマンション手に入りますよと、今では2000万円台でマンションが手に入りますので、頭金なしで入れますと言うので、買われて入られた方はたくさんおられると思います。実は入居しますと、必ず固定資産税がかかるという事、金利も変動性になりますので、5年くらいになったらドカンと上がってしまうとかね、それと駐車場料金がいります。戸建ての場合は駐車場料金は基本的に自分の家の中の敷地に置きますのでいらないんですが、こういった事で、戸建ての持ち家で住むのと比較すると想定した以上に不測の出費がたくさん出てくるということでね。なおかつ昇給がない、ボーナスもないということで、とたんにマンションのローンも払えないという事で、今日の朝日新聞でも銀行の貸付残高が過去最高でマンションの売れ行きがいいというのだけれども、逆に言えば非常にリスクを抱え込んでいると。何か一つ間違えがあれば、その住宅を手放さなければいけない。売っても買ったときのお金よりも下がるんですから、売って借金が残る、こういう状況で本当に大変なわけですから、なんとかそこで安定的に居住するという方向をもっと模索しなければいけない。

 今日、実は水道の問題、今回のご要望に出して頂いているんですけれども、給水の水質検査とかいろんなそういう事についても大阪市もっと補助をせよと、水道メーターの設置、これも一戸建ての場合はメーターを水道局が取替えますけれども、マンションの場合は自己負担。これは私達ずっと長らく要求してまいりまして、ようやく去年の議会で「どうあるべきか、水道メーターの研究します」と答えを得たんですけれども、実は例えば普通の一戸建て住宅でしたら、この水道料金、一つの実例ですけれども、月額水道料金が2909円という請求がくるわけです。ところがマンションの場合はそれを維持するために、まずメーターを変えなければいけない、水質検査のためのお金を出さなければいけない、モーターポンプが故障すればそれを修理しなければいけない。この揚水のための電気料がいるんですね。それでいきますと、水道料金以外に2003円という金額、これはある西淀川にあります分譲マンションの一年間の水道にかかわる金額を計算したんです。今のところ一戸建て住宅の169%、7割近い、同じ水を飲むのに分譲マンションの場合、高くつくんです。ぜひ、今日、管理組合の方、来られていましたら、毎年総会を開かれていると思いますので、給水の維持のために、どれだけお金が支出されているのか、議案書見ていただければ、わかっていただけると思うんです。こういった様々な分譲マンション独特の困難が存在することがわかっていただけると思います。

大規模修繕と建替え 経費負担と区分所有法における合意形成の困難

 先ほど言いましたように、今一生懸命建替えのために、どうすべきかというアドバイスを受けたり、大阪市も今年からもう少し本格的にマンション建替えガイドブックというこういうのを4月につくられて、大阪市もいろいろ支援を行いますと項目書いているんですけれども、肝心の建替えのためのお金は全く出ないわけです。例えば、阪神淡路大震災で一挙に住宅が潰れてしまった状況がありましたね。今現在、再建されているんだけれども、お金のある方はもう一度ローンを組んで、新しい住宅に入れると思うんですけれども、それをできない方は出て行かざるをえない。こういう状況になっているんですけれども、これが徐々に一般分譲マンションでも30年40年経つ中で壊れていくわけですから、力のない方がどのようにして居住できるかということを考えなければね。5分の4の建替え賛成というのはおそらく得られないでしょうし、そうしますと、マンション自体の機能が失われていくことが当然、予測されます。

国や地方自治体の支援は不可欠

 しからば、全額大阪市が補助するということ、これは財政的な問題もあるかと思うんですけれども、多面的なやり方を今から研究してローン組む場合も利子補給がいいのかとか、あるいは補助金という形で出すのか、今の制度でも一戸建て住宅の老朽住宅などについては住宅改良法などがありまして、住宅を買収して公営住宅を建てて、そこへ入ってもらうという制度があるんですが、マンションについても自力で建替えできる方についてはやってもらって、力のない方には公営住宅に入ってもらって、一つの例ですけれども。様々な実態にあわせた建替えが可能なんです。制度というのはこれからどんどんと要望して具体的に身近に起こっている内容に沿って法改正を求めていかなければならないと思います。国は一律的に補助制度をしますと言うんだけれども、実際、現場で起こっている問題は雑多ですから、その場合、後からまた別のテーマでお話があるかと思うんですけれども、住んでおられる方々が将来もぜひ頑張っていただいて、そういった問題をぜひとも議会に対してあげていただきたいと思います。

マンション居住者への公的支援制度の確立を目指して

 私たちもいろんなアンケートを実施いたしまして、たくさんのお声を聞いております。エレベーターの設置の問題、バリアフリーの問題も今後どうするのか。これも大阪市はバリアフリーということで制度はあります。例えば一戸建て住宅で高齢者が増えてきた場合、お風呂を改修する場合いくらか補助するとか、こういう制度があるんですが、まだマンションについていえば、エレベーターをつけるとかいう制度がないわけです。最近大阪市営住宅でも階段の部分に小型のエレベーターをつけると、今後10年間で該当する住宅全てにエレベーターをつけるという計画が決められましたが、これは大阪市だからできるわけです。だから分譲マンションの場合は管理組合任せでは到底できないわけですから、市営住宅でもそういう必要性があるとわかってやっているわけだから、分譲住宅についても何らかの方法で支援してつけられる、これも我々これから研究して、そういった問題についてもぜひとも実現するために頑張って参りたいと思います。

老朽化を放置すれば社会問題化することは必至

 最後にもう一点だけ、ぜひとも今日申し上げておきたいと思いますのは、今日参加されている方は、具体的に身近に問題が起こってきて、どうしようかということで、お答えを求めてこられている方はおられるかと思いますが、実は皆さん方以上に、今、急速にこういった分譲マンションより困難な分譲マンションの状況がつくられているんです。昨日も実は中央区で勉強会があったんですが、最近、超高層マンションが建っておりまして、50階建てとか、港区でもありましたし、日生球場跡の大阪城見下ろすようなところも分譲マンション。私の住んでいる住宅は126戸で2棟で5階建て。そこでは全員で話できるんですが、そういう超高層マンションでもし老朽化問題起こったらどうなるか。耐用年数、いくら考えても100年もたないわけですから、100年先、林立しているマンションどうなるかという事考えたら、はるかに大変な事態が予想されます。

分譲マンション供給の最大の動機はゼネコン経営

 しかし、今売ろうとする側はそんな事言いませんし買う側も考えていません。からね。実は先日、ある新聞で全面広告でマンションの販売募集あるんですが、東京の心臓部で建って年金不振、年金でお金入ってこないから、マンションで賃貸していく無税で有利子、生前贈与、節税対策やりなさいとか、そういういろんな売り文句をやっているんです。残念ながら、今マンションを供給するデベロッパーとかゼネコンは将来のことは考えてないんです。今のゼネコンの経営というのは、走っていなければ壊れてしまう。実は平野区、私の住んでいる町内でもあるデベロッパーがものすごいマンションを建てて、終日、日が当たらないマンションを建てて、反対運動をやったわけですけれども、その会社が最近、株主総会の資料を出しております。これを見ますと約2000億円ぐらいの銀行からの負債とか、そのために経営改善をするという新経営計画策定、株主に対してどのように会社を再建するかという方針を出している。これはどういう事を書いているかというと言いますと、「マンション事業における事業サイクル確立、すなわち早期仕入れ、早期販売、引渡し時期平準化などをやって過去最高の利益を上げたい」とか要するにマンション特化、一番利益の高い事業規模、そこに集中して資金を投入し、マンション事業によって会社を立て直しますと書いています。マンションを供給する側というのは、いろいろ街づくりなど言うんだけれども、会社の経営を立て直すことが主目的で、できるだけ効率の良い、有効利用できるマンションを建てようという傾向がある。こういった無謀なマンション建設問題も同時に規制していかなければ、今起こっている事態よりもっと深刻な事態が起こってくるということで、頑張って参りたいと思います。大阪市会議員団として取り組んでまいりましたことを報告させていただきました。どうも、ありがとうございました。

(文章は、日本共産党大阪市会議員団作成の「報告集」より)



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