日本共産党

2002年7月21日(日)「しんぶん赤旗」

どうなってるの?

選択的夫婦別姓


 希望すれば、夫婦それぞれが結婚前の姓を名乗ることができるようにする選択的夫婦別姓制度――今国会は三十一日に会期末を迎えますが、野党が共同提案している民法改正案は、またもや一度も審議されず見送られる公算が大きくなっています。なぜなのか――。

”別姓”望むのは

“夫婦同姓”が原則で、別姓を認めない現在の民法の不自由さがさまざまな矛盾をうんでいます

 戦前の旧民法では、妻が夫の「家」の姓を強制されました。戦後の民法でも同姓が原則で、日本の民法は百年にわたって夫婦同姓を義務づけてきました。

 現民法では夫か妻のどちらの姓を名乗ってもいいことになっています。一見男女平等にみえますが、実際には97%が夫の姓です。結婚で姓を変えているのは圧倒的に女性の側です。

 社会や職場で活躍する女性が多くなり、また男女平等、個人尊重の意識が高まるにつれ、「夫婦別姓も認め、男女平等が徹底する法制度にしてほしい」という声が高まってきました。

 実際の社会生活の中で、結婚による改姓でさまざまな不利益をうけているという訴えが相次いでいます。「姓を変えると論文の実績が途切れ、研究者にとっては死活問題」「姓が変わったことを同業者、取引先などすべての人に知らせないと仕事に支障が出る」…。また、「姓が変わることで、違う人間になったように感じた」など、個人の尊厳を守りたいという意見もだされてきました。

 現在は、別姓を望む夫婦がやむなく婚姻届を出さない“事実婚”をしたり、職場などで旧姓を“通称使用”しているケースがふえています。しかし、事実婚は法律上の夫婦ではないことから、相続や子どもの姓、認知などで新たな問題が生じます。また、通称使用では、戸籍姓、旧姓と二つの姓をもつことになり、使い分けにともなう混乱と、煩雑さは避けられません。

 こうしたことから、法律上も夫と妻がそれぞれの姓を名乗ることもできるようにする選択的夫婦別姓制度が強く求められているのです。

世界を見渡すと

世界では別姓が当たり前になり、同姓原則の国はごくまれ。
日本でも別姓も認めようという人がふえています

 すでに一九七九年の女子差別撤廃条約では“婚姻や家族関係にかかわるすべてにおいて女子に対する差別を撤廃するための措置をとる”ことを締約国に求め、“姓を選択する夫と妻の同一の権利”を定めました。

 男女平等、女性の地位向上の運動が高まるなかで、七〇年代以降、先進国を中心に、婚姻制度を見直し、別姓選択の自由を認める法案を可決する国が相次ぎました。

 現在では、同姓が原則の国は日本、インド、トルコなどわずかです。

 日本では、戦後まもなく旧民法の大幅で歴史的な改正がされましたが、なお男女平等など憲法の理念が不徹底な条項を見直そうという声が高まってきました。

 法制審議会は九一年から検討を始め、九六年には選択的夫婦別姓制や非嫡出子の相続差別廃止などをふくむ民法改正案を答申しました。

 日本共産党はじめ各政党も相次いで、別姓を認める改正案を発表しました。

 昨年の政府の世論調査では選択的夫婦別姓制度に賛成(42%)が、反対(30%)をはじめて上回りました。二十代、三十代では賛成が過半数を占めています。

実現なぜ進まない

国民世論は熟してきているのに、政府・自民党が今日まで法案提出を先延ばしにしてきたからです

 九六年に法制審が民法改正案を答申したとき、おおかたの人が、これにそって選択的夫婦別姓制度の実現が間近になったと期待をよせました。

 ところが、これに水を差すように、神社本庁や遺族会を背景にした自民党議員などから唐突に、別姓反対の声があがりました。「家族のきずなが薄れる」というのが反対理由ですが、世論動向をみてもまったくあたりません(左側の表)。「個々の人権を尊重するあまり、国の基盤である日本古来の家族制度を崩壊に導く」など、憲法の理念の否定につながる理由をあげていることも見逃せません。

 このため法制審答申から六年以上たつ今日まで、政府・自民党は法案提出をせず、野党が共同提案した民法改正案の審議もほとんどされませんでした。

 一方、自民党内では、民法改正に賛成する議員で「実現する会」を結成するなどの動きもあり、別姓を「例外的」に認める法案、「家裁許可」で別姓を認める法案の構想などが報道されています。

 いずれも反対派議員の同意をとりつけようともちだされたもので、「家裁許可制」では、「家名相続や仕事上の必要性」など限定した理由だけを許可するとしています。

一歩ふみだそう

 日本共産党は、八〇年代から選択的夫婦別姓制を提起し、実現への共同をすすめています。男女平等、子どもの権利が保障される社会へ、世論の高まりが大事です。

 憲法二四条では、結婚における「個人の尊厳と両性の本質的平等」をうたい、子どもの権利条約では、出生による差別を禁止しています。

 日本共産党は八七年以来、希望すれば別姓を選択できる制度の実現を主張、九七年に発表した「民法改正案」は、選択的夫婦別姓制のほか、非嫡出子の相続差別の廃止なども盛りこんでいます。

 いま、多様化した社会の中で、お互いの人格、個性、生き方を認めようという機運も高まってきています。別姓を望む人も望まない人も一緒に民法改正の運動がひろがっています。

 選択的夫婦別姓制度の実現は、それ自体いそがれますし、単に姓の問題、不利益を受けた人の人権を守るということにとどまらない、真の男女平等の社会を築くための一歩です。


野党の提案

 野党3党が共同提出している民法改正案の主な内容(日本共産党、民主党、社民党)

1 婚姻の成立
 (1)結婚可能年齢を男女とも18歳
 (2)女性の再婚禁止期間を100日に短縮

2 選択的夫婦別姓制
 (1)夫か妻の姓を称する(同姓)か、各自の結婚前の姓を称する(別姓)
 (2)改正法施行前に結婚した夫婦で別姓を希望する場合は、2年以内に届ける
 (3)別姓夫婦の子どもの姓は、その出生時に届けて父または母の姓を称する

3 非嫡出子(婚外子)の相続差別の廃止
 非嫡出子の相続は、嫡出子の相続分と同一


 


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