日本共産党

2002年2月24日(日)「しんぶん赤旗」

どうなってるの?

児童扶養手当


 政府は、母子家庭などに支給している児童扶養手当を減額するなど、制度を改悪する案をうちだしています。「この不況のなかで、生活が困難な母子家庭をこれ以上いじめないで」と切実な声と怒りがまきおこっています。

どんな制度なの?

母子家庭の子育てを支援する制度です

 児童扶養手当は、父親と生計を同じくしていない、離婚・未婚母子家庭、公的年金を受けていない死別母子家庭などの児童の「福祉の増進」をはかるために(児童扶養手当法第一条)、母親や養育者に子どもが高校を卒業するまで一定額を支給するものです。一九六一年にできました。

 死別母子家庭には、五九年に母子福祉年金の制度ができていました。母子家庭が経済的に困難な状態にあることは生別でも死別でも同じです。離婚母子家庭にも同様の社会保障制度が必要だという議論が起こり、新たな法律として児童扶養手当法が制定されたのです。

 現在、母と子一人世帯の場合、年収二百四万八千円未満で月四万二千三百七十円、年収三百万円未満で二万八千三百五十円が支給され、二人目月五千円、三人目以降一人につき三千円が加算されます。約七十一万世帯が受けています。

 この手当が受給できれば、母子福祉資金の貸付や医療費助成など、国や自治体の各種制度も利用できます。

 同じような名前で「児童手当」がありますが、これは「児童を養育している者」すべてを対象に支給(所得制限あり)されているものです。

どう変わってきたの?

離婚世帯は増えているのに、八五年以降、二回も大きな改悪がされ、手当が引き下げられています
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 母子家庭は、約九十五万五千世帯で、このうちの約八割、七十六万三千世帯が離婚などによる生別母子家庭です。八三年に離婚母子家庭が、死別家庭をはじめて上回ってから、離婚母子家庭の割合が増加しつづけてきました。

 八〇年代以降の社会保障・福祉制度の見直しのなかで、八五年には児童扶養手当制度も改悪されました。所得制限を引き下げ、支給額を全部支給と一部支給の二段階制にするとともに、児童扶養手当の請求を五年間申告しなかったら無効にするという改悪も加えられました。

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 その後、年収四百七万八千円までの世帯に手当が支給されるようになりました。しかし、「就労の妨げになっている」(九六年財政制度審議会)などの理由で、九八年、所得制限を一挙に百万円以上もひきさげ、現行の制度に改悪されました。この結果、約七万人が支給停止になりました。これを実施した厚生大臣は、小泉純一郎現首相です。

 いま小泉内閣と自民・公明・保守の与党は、戦後五十年の歴史を持つこの施策を「抜本的に見直し、新しい時代の要請に的確に対応する」などとして大改悪を検討しています(別項参照)。所得制限は三百六十五万円までに引き上げますが(それでも九八年以前より低い)、この改悪で支給額が減らされる家庭が46%、増額効果があるのはわずか約3%です。支給期間を五年間に短縮、以後は半額支給に減額することや父方からの養育費を収入に算入することも盛り込んでいます。これは、母子家庭が増えている状況にも逆行し、制度の根幹を脅かすものです。

母子家庭の生活は?

一般家庭との経済的格差はますます広がっています
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 「月九万円のパート収入で生活していたが、リストラで仕事がなくなった」「子どもが風邪をひいても、お金がかかるので病院につれていけない」など、長期化する不況のなかで母子家庭の生活はますます困難になっています。

 母子家庭の平均年収は二百二十九万円で(九八年)、一般世帯(六百五十八万円)の35%にとどまっています。八二年では、年収が二百万円で、一般世帯(四百四十四万円)の45%でした。格差は大きく広がっています。

 母子家庭の母親の就業状況は、パート・臨時雇用者をみても八三年は7・6%でしたが、九八年には四倍の32・5%に増え、雇用の不安定さがきわだっています。

 離婚した父親からの養育費を「現在も受けている」のは、20・8%にすぎません。

 二〇代、三〇代で幼い子どもをかかえて離婚した母子家庭が多くを占めていることからも、児童扶養手当は、生活になくてはならない“命綱”となっています。

いまやるべきことは?

願いは切実、制度の趣旨にもとづいて充実をはかることです

 国は、母子家庭の児童の福祉の増進をはかる児童扶養手当の目的や、すべての児童は平等であることをうたった児童福祉法の精神にそって、母子家庭の子どもたちが健やかに育ち、教育をうけられるようにする責任があります。“改悪はやめてください”“もっと充実してください”との願いは切実です。

 母子家庭の生活の安定と向上をはかるためには、母親が安定した職を得られるよう、雇用促進法の制定などの就労支援をいそぐ必要があります。医療費補助や育英資金制度の拡充もかかせません。

 諸外国では、養育費履行確保制度(イギリス)、養育費立て替え払いサービス(フランス)など、行政が関与した制度があります。日本にはこうした制度はなく、養育費の確保について、子どもの権利を保障する立場からの検討が必要です。


母子家庭の現状

児童扶養手当改悪の動きに、母子家庭のお母さんから痛切な声があがっています。全国生活と健康を守る会連合会に次のような訴えが寄せられています。

 「夫の暴力にたまりかね離婚しました。小学6年と1年生の子どもを一時、府の施設に預けて働いていました。子どもを手元に置きたいを思い、福祉事務所に相談に行きましたが、まともに取り合ってもらえませんでした。『守る会』の紹介で交渉し、扶養手当がもらえました。今では子どもも引き取り親子3人で、貧しいけれど明るくすごしています」

(大阪・高石市 27歳)

 「小学3年の娘との母子家庭です。きびしい世の中で子どもと生きていくため朝早くから夜遅くまで必死に仕事をしています。しかし、この不況で仕事もなく会社の休みが多いのです。毎日が不安でなりません。扶養手当の改悪の動きがありますが、小泉さんはいったい何を考えているのか。母子・父子家庭の親子はこの世にいらないとでもいわれている様です。弱いものいじめはしないでください」

(宮城・石巻市 33歳)


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