日本共産党

2002年1月27日(日)「しんぶん赤旗」

どうなってるの?

小泉高支持率


 「失業率最悪、不況は悪化の一方なのに小泉内閣の高支持率の不思議」―一般紙にこんな読者からの投書が掲載されています(「東京」二十三日付)。「これだけ問題があってなぜ支持率が高いのか。私も疑問だ」と首を傾げる自民党議員もいます。その実体を探りました。

高いというけど中身は…

「あやふやな弱い支持」と担当者は分析します

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衆院予算委員会で自席からやじをとばす小泉首相=24日

 小泉内閣の支持率はことしになっても70%前後を維持しています。しかし、その中身をみると単純ではありません。読売新聞の調査では、「これまでの内閣より良い」で、六カ月連続でトップ。一月調査では51%でした。これに対し、「政策が評価できる」はずっと一割台です。

 NHKの一月調査でも、「ほかの内閣よりよさそう」が支持する理由の第一で、政権発足以来最高の37%。解説者は「支持率は上がっているが、必ずしも盤石とはいえない」とのべました。

 毎日新聞の一月調査では77%が小泉首相支持でした。調査を担当した世論・選挙センターの長江一平記者は、「個人的見解」と断ったうえで、次のように指摘します。

 「支持率が高いといっても、政策や指導力を信じているわけではない。『指導力』や『政策』への期待はあわせて42%。支持率77%×42%で、小泉首相のコアな支持層は約三割といえる。残りは雰囲気や期待度で支持しているという見方もできる」

 長江氏は「高支持率の中身は、きわめてあやふやな、弱い支持だと思う」と分析していました。

自民党は嫌われていたのに…

「自民党をぶっ壊す」に国民は期待しましたが

 小泉首相は、自民党内閣の支持がどん底のときに登場。「自民党を変える」「ぶっ壊す」と訴えたのでした。

 都市有権者調査を掲載してきた雑誌『論座』編集長の持田周三氏は「『自民党をつぶす』というスローガンがいまだに力をもっている」と分析します。

 同誌昨年四月号で掲載した調査では、「伸びてほしくない政党」は自民党が44・4%で断トツ。この時点で有権者に一番嫌われる政党になりました。「小泉さんはいわば一番嫌われている集団を、まっとうに変えますと宣言して支持を得た。それが有権者の気分にうまく入っていった」

 政界取材を二十年近く続けるジャーナリストは、その後も続く高支持率について「国民の期待が他に行き場がないからだ。いわば切ない支持だ」と説明します。

 「自民党を支持しない人でも、自民党自身を変える、ぶっ壊すという掛け声に期待するところがある。同時に、与党のなかにも野党のなかにも、ポスト小泉の動きがみえてこない。代わるものがないから、なんとなくの支持が多いのだと思う。景気が一段と悪化したときに、小泉に代わる新しい動きが出てくればかなりもろい」

 たしかに小泉内閣の九カ月は、自民党を「ぶっ壊す」どころか、対米追随、大企業・大銀行優遇、金権腐敗と自民党政治を守るのに最も頑固です。

マスコミの事情は…

93本の社説ほとんど「改革」支持というときもありました

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 小泉高支持率にマスコミはどんな役割を果したでしょうか。

 テレビでは「小泉・真紀子現象」という言葉が登場するほど、かつてなく露出度が増加。これまであまり政治問題をとりあげなかったワイドショーなどで、小泉首相や田中真紀子外相をスター扱いしました。

 新聞でも、「小泉首相を励ます」(朝日)という社説が登場するほど、全国紙を中心に小泉「改革」を支持。昨年の参院選の開票を受けた社説・論説九十三本では「改革の断行を求めた論がほとんどだった」(日本新聞協会の紙面展望)という状況でした。

 ジャーナリストの斎藤貴男さんは「いまだに小泉『改革』に期待が持てるようなことをいっているマスコミの責任が非常に大きい」(本紙「発言2002」、十三日付)と指摘します。

国民の願いに照らせば…

雇用、景気対策…小泉改革は逆行することばかり

 医療費の高齢者負担増、サラリーマンの健保三割負担、消費税増税…世論調査も各論でみれば、小泉内閣が実施してきたか、これから狙う「痛み」の政治に国民はノーをつきつけています(グラフ1)。小泉内閣が優先課題とする不良債権処理も「失業者が増えてもやるか」と聞かれると反対が多数になります。

 逆に、国民が政府に期待する政策は、雇用、景気、社会保障などです。「読売」二十二日付をみても、一位雇用対策、二位景気対策がとびぬけて多い。中小企業つぶしにリストラ支援、国民負担増路線をとる小泉内閣の「構造改革」とはこの期待に逆行することばかりです。

 それを裏付けるように、大手広告代理店・博報堂の生活総合研究所の調査では「政治についての満足度」が急降下しています(グラフ2)

 評論家の内橋克人氏は「事態が動き出せば遠からず矛盾が噴き出し、覚醒(かくせい)の日も近いと知るべきでしょう」とのべています(『世界』昨年十二月号)。

 「自民党の総裁が、『自民党をぶっこわす』と叫び、パフォーマンスだけに頼って、古い流れをあたかも未来ある流れであるかのようにいつわる、綱渡りのような曲芸は、決して長く続くものではない」(日本共産党の志位和夫委員長の党旗開きでのあいさつ)。高支持率を背景に悪政を強行しようとする小泉内閣を長続きさせないためにも、やはり、国民のたたかいがカギを握ります。


パフォーマンスは得意だが

マスコミ戦略

 首相の側も高支持率維持にマスコミ戦略を意識しています。

 『論座』編集長の持田氏は、同誌の特集「テレビ政治は止まらない」で語った首相秘書官・飯島勲氏の話を、3つに整理します。「1つは新聞の政治面ではなく、スポーツ紙、週刊誌に出るのを重視すること、2つめはテレビにでるときも小泉氏が少数派になる番組を選ぶこと、3つめは首相になってから一日一回テレビカメラの前にたつことです」

 持田氏は、こうした戦略で「異端児、少数派といわれても抵抗勢力に立ち向かうイメージをつくってきたし、自民党総裁選でも小泉対他の3人という構図に持ちこんだ」と分析します。

首相の側、自民党議員はどう見ているの?

つくられた対決構図

 自民党内では高支持率への見方はどうなのでしょうか。

 「小泉さんは抵抗勢力があって今日の人気が成り立っているんです」と“解説”するのは、「抵抗勢力」といわれる青木幹雄・参院幹事長(昨年12月5日)。古賀誠・前幹事長も「『抵抗勢力とそれを改革しようとする小泉内閣』のせめぎ合いの構図が内閣支持率に不可欠なもの」とのべ、「そういう意味では抵抗勢力というのは甘受していくのが大事なことではないか」(同前)といいます。

 「改革」応援団側の塩崎恭久・衆院議員は「むしろ抵抗勢力があった方が彼の人気はまだ上がる」と解説。渡辺喜美・衆院議員も「スキーのジャンプと同じ。フォローの風だとストンと落ちる。遠くまで飛ぶにはアゲンストの風が強いほど空中浮揚が長く続く」とのべています(いずれも昨年12月3日)。

 


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