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被害は市民や子どもに

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維新政治塾開校式で日の丸に一礼し登場する橋下市長=3月24日、大阪市

 「メディアのみなさん、今度、式の取材で先生の口元をビデオで撮ってください。条例では斉唱することとなっています」。3月、「維新の会」大阪府議がツイッターでこう呼びかけました。

「君が代」強制

 条例とは昨年6月、「維新」が府議会で事実上単独で可決した「君が代」起立強制条例のことです。今年2月には、大阪市議会でも同様の条例が「維新」、公明、自民で可決されました。

 起立しない教職員への処分を念頭に、同一職務命令に3回違反すると免職にできる職員基本条例も、両議会で「維新」、公明、自民で強行。橋下徹市長は「服務規律の問題。嫌なら公務員をやめればいい」と言い放ちました。

 「君が代」は「日の丸」とともに、侵略戦争遂行の象徴とされ、国民や教育現場には根強い抵抗感があります。

 憲法19条で保障する内心の自由にかかわり、「国旗国歌法」制定(1999年)の際にも、政府は「強制してはならない」とはっきりと答弁しています。今年1月の最高裁判決は、「君が代」不起立による処分で減給や停職でも重すぎて違法と断じています。

 しかし強制はどんどんエスカレートしています。

 府立和泉高校の卒業式では、橋下氏が府知事時代に肝いりで任命した弁護士の校長が教職員の口元を厳しくチェック。別の高校では教員に向けてビデオが撮られました。

 起立しない教員が出た府立高校の卒業式で、出席していた「維新」府議が生徒への祝辞そっちのけでわびてみせ、不起立の教員が出た中学校で保護者におわびする説明会が開かれました。

 「君が代」条例に賛成した自民党大阪市議でさえ「君が代は歌ってほしいが、心から歌ってほしい。こんなのが、自分たちが求めていたものかと慄然とする」と述べます。

 学校だけではありません。条例は府・市の施設での「日の丸」の常時掲揚も義務づけているため、大阪市立保育所では祝日のみの掲揚から3月以降、常時掲揚しています。

"めざし状態"

 市が、ポールを他のことに使わないよう通知したため、こいのぼりをポールでなくテラスなどに"めざし状態"であげた保育所もあります。

 保育所の卒園式でよく歌われる「いつのことだか思いだしてごらん」で始まる「思い出のアルバム」が、「君が代」にとってかわられる―こんな事態になりかねないと不安の声があがっています。

 府立高等学校教職員組合には「全員が起立・斉唱することが最大の目標になってしまっています。式の主人公は誰」「意見が言いにくく、言っても仕方がない雰囲気になっている」との痛切な訴えが寄せられています。

 教育現場での「君が代」強制をはじめとした管理統制に加え、「まるで治安維持法」との声もあがる職員の政治活動条例。物言わぬ職員づくりを狙う橋下氏の独裁手法で被害を受けるのは、子どもであり市民です。

 (おわり)

 (第4部は豊田栄光、大阪府・小浜明代が担当しました)

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(「赤旗」2012年7月25日付)

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