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マスコミをうまく利用する橋下市長(写真は合成)

巧みなマスコミ操作術

 7月13日の夜のことです。大阪府庁近くで開かれたテレビ局府政担当記者の送別会に橋下徹市長が姿をみせました。記者の懇親につきあうのは極めて珍しいことですが、いつもの高飛車な態度は影をひそめ、なごやかに酒を酌み交わしたといいます。

 異例の行動を大阪の大手メディア幹部はこうみています。

 「その頃は大飯原発再稼働を容認したことで批判が強まった時期。懇親会の5日後には週刊誌に女性問題を暴露されている。そのこともあって記者を懐柔しようとしたのではないか。タレント弁護士だった彼は“アメとムチ”を使ったマスコミ操作術にたけている」

言動持ち上げ

 大手メディアでは、橋下市長の言動や施策を持ち上げる報道が目立ちます。しかも日々の市長としての動向だけではなく“宣伝紙”のような報道も氾濫しています。

 典型的なのは、国政進出を意識して政治家を養成するために立ち上げた「維新政治塾」(代表・橋下市長)をめぐる報道。「維新政治塾」というキーワードで記事検索すると過去6カ月で全国紙5紙に掲載された記事は400本以上にのぼります。政党の私塾とは思えない特別扱いです。

 3月24日の塾開講時には「橋下氏国政へ号砲」(「朝日」3月25日付)、「『橋下ブランド』へ全国から」(「毎日」同)などの見出しで特集。その後も「希望見出した…政治塾に30~40代殺到」(「朝日」7月20日付)と続きます。

 テレビはさらに過熱しています。NHK大阪放送局のローカルニュースでは、橋下氏関連のニュースを大量に放映。民放は、橋下市長を生出演させて好き放題にしゃべらせることもあります。

 在阪テレビ局幹部はこう本音を語ります。

 「橋下氏はテレビにとって話題性があり視聴率の取れる貴重なコンテンツ(放送材料)。政治手法に問題があってもつい重宝してしまう。橋下氏の側も編集されずに語れる生出演をさかんに要求するなど、テレビの活用法を熟知している」

チェック怠る

 一方、在阪記者のなかでは疑問の声も。マスコミ業界誌『ジャーナリズム』7月号では「『橋下現象』をどう報じるか」を特集。「橋下番」記者の座談会でテレビ記者が「(テレビは)『権力チェック機構』としての部分を怠って」きたと反省。「ニュースの取り上げ方を一から考え直さなければいけない」と語っています。

 しかし、政局が流動化し橋下市長が「選挙の目」と注目されるなか、東京のメディアが過熱化してきています。大阪の全国紙記者は「東京の政治部から橋下氏に関する記事をもっと送れとせかされる」と打ち明けます。

 大阪在住の日本ジャーナリスト会議代表委員・清水正文さんは警鐘をならします。

 「メディアが維新の会の『広報機関』になったような異常な状況が続いている。国政進出にからんで報道はさらに過熱するだろう。橋下氏がやっていることが本当に国民の側に立ったものか、しっかりと検証することこそ本来のメディアの役割として求められる」(つづく)

(2012年08月16日付)

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