2002年3月4日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

奨学金こそ“米百俵”

育英会廃止!? 日本の人材育てる気あるの


 拝啓、小泉首相殿。学生の私たちの「痛み」を知ってほしいのです。奨学金は学ぶための命綱。日本育英会の奨学金までとりあげようとするのはなぜですか?

休学せざるを得なくなる

 「国の金を浮かそうというならほかのムダから削れ」――。札幌市の大学一年生、北川明さん(19)=仮名=は訴えます。市内の学生を中心につくられた「奨学金を守るネット」に入ったばかり。自身も月三万円のアパートで一人暮らしをする奨学生です。「奨学金がなくなったら、一年間休学する。バイトしなきゃ生きていけないから」

 二月二十五日、北海道大学の入学試験。「守るネット」は民青同盟北海道委員会と協力して奨学金制度の改悪に反対する署名を受験生に訴えました。お願いしたほとんどの人が応じ、断ったのはほんの二、三人。「奨学金を受けるつもり」「予約奨学生になっている」という人も。北川さんは「書いてくれなかったらショックだったと思うけど、呼びかけたらすんなり応じてくれたんで、うれしかった。これからもいろんな機会を使って宣伝したい」といいます。

 実家は帯広市。両親と兄、高校生の弟の五人家族です。父親はトラックの運転手をしています。仕送りは月五万円。光熱費や食費で二万円はかかります。月六万円の奨学金は生活の支えです。

 その奨学金がもらえなくなるかもしれない、と知ったのは今年の一月でした。守るネットの活動をしている女子学生が教えてくれました。最初に聞いたときは「驚がく、とまではいかないけど、かなりびっくりしました」。その場で女子学生に「僕も改悪に反対します」と宣言。同ネットに参加しました。

 北川さんは食費を抑えるため、朝・昼は主に学食。たいてい一番安い二百五十円のメニューを選びます。夜は実家から送ってもらった米を炊いて卵や納豆をかけて食べるのが日常。大学の吹奏楽部でパーカッションをしていましたが、部費や交通費などが大変でやめざるをえませんでした。

 守るネットの学習会で奨学金廃止問題を学びました。小泉内閣は「特殊法人改革」の名ですべての特殊法人を廃止・縮小する方針です。日本育英会も廃止の対象。廃止後は利子が高くなったり、貧乏人は借りられなくなったりするおそれがあります。「おかしいのは、公共事業のムダ遣いとか銀行への公的資金投入とかはそのままで、育英会はなくそうとしていることだ。福祉や教育にこそ金がほしい」

首相はお金の苦労知らず?

 「これから育英会奨学金を受けたい」という学生もいます。東京都郊外にある私立大学一年生の鈴木由美子さん(19)=仮名=もその一人。「小泉さんはきっと、お金の苦労をしたことがないんだよ。どれだけの人がどれほど苦労してるのか、考えたことないんじゃない?」

 鈴木さんの夢は子どもの悩みの相談ができる人になること。そのために法律をはじめ「哲学や女性学、心理学も学びたい」といいます。大学に行くなら自分でお金を出して」と母に言われました。実家の家計も楽ではありません。大学の奨学金と牛丼屋のアルバイトで学費と生活費をまかなってきました。

 「大学生は遊んでばかり、なんて言ってほしくない。私は自分のお金で勉強している自覚があります。奨学生ほど、本当に学びたいという気持ちが強いと思うんです。奨学金だけが頼りの学生から『学ぶ権利』を取り上げるなんて、学びたい人に失礼でしょ」


「どうなるの」に文科省の担当者は…

 日本育英会の廃止について、文部科学省高等教育局学生課にききました。

 ――育英会はどうなるのでしょうか。

 「特殊法人改革」ではすべての特殊法人は例外なく整理合理化されます。日本育英会も廃止したうえで奨学事業は独立行政法人に移されます。学生の就職調査などの事業も独立行政法人に移管される予定です。平成十七年(二〇〇五年)までが集中改革期間となっていまして、その間に具体化します。

 ――国からの援助は今後もあるのですか。

 独立行政法人は独立採算という基本はありますが、奨学事業は利益だけではない部分がありますから、公的資金は維持されるべきだと考えています。しかし、実際にどうなるかは白紙の状態です。

 ――利子が上がるのではないですか。

 まだ白紙の段階ですので、上がるとも下がるとも言えません。

 ――育英会の事業を拡充すべきではないですか。

 今までの特殊法人にはムダがあると批判があります。独立行政法人にして客観的に評価を下すことで効率化できるのではないでしょうか。

 ――育英会のどこがムダだったのでしょう。

 いわれているのは返還金の回収という問題で、滞納率が高い、ということです。

 ――独立行政法人になることで返還率が上がるのでしょうか。

 それは、やってみないとわかりません。


希望者全員に無利子支給を

 日本共産党の志位和夫委員長は、衆院本会議の代表質問(二月七日)で、こう訴えました。

 「世界一高い大学の学費をさらに値上げしたあげく、無利子の奨学金を有利子の『教育ローン』にきりかえるような、若者にたいするむごい政治をやりながら、『米百俵』と格好をつけるのは、いいかげんにやめていただきたい」

 昨年七月の参院議員選挙の政策でも、「希望者全員に無利子の奨学金を支給するとともに、給付制の奨学金も導入します」と提案しています。これらは憲法や教育基本法が保障する教育の機会均等からも当然であり、日本の科学・技術の将来や人材育成を考えた国政上の重要課題であると指摘しています。


受験生も絶句

 東京大学の入学試験が行われた二月二十六日、日本民主青年同盟(民青同盟)東京都委員会と同東大班は育英会奨学金制度の拡充を求める署名を受験生に訴えました。奨学金を受けるつもりという受験生(20)は、育英会が廃止されると聞いて「なんと!」と絶句。「借りられないとバイトすることになる。学生の本業と外れるよ」

 全日本学生自治会総連合がよびかけた「奨学金制度の充実を求める」署名も各地で取り組まれています。一月三十一日の国会要請行動では二万三千人分の署名を提出しました。

 「奨学金制度を守るネットワーク」などをつくるとりくみも北海道、佐賀県、島根県などで始まっています。


1千億円

 小泉内閣は、「行政コストの削減」のために「民間でできるものは民間にゆだねる」と特殊・認可法人を廃止・民営化する方針です。日本育英会も「国の学生支援業務と統合して、独立行政法人に」します。独立行政法人は独立採算が基本なので、国が一般会計で育英会に出している一千億円余(育英会財源の四分の一)の予算は削ります。育英会の奨学金を受けている人は約七十五万人。

独立行政法人

 法人を維持するため、民間銀行の教育ローンのように「事業で利益を出す」経営をせざるをえません。銀行の教育ローンの利子は育英会のおよそ十倍前後。同時に「利子を返せない人には貸さない」事態も予想されます。実際に銀行では借金が多かったり、親の収入が低かったりすると「返済能力に疑問あり」とされ、門前払いになるケースがあります。

98.1%

 政府は「奨学金は滞納が多い」といいますが、今までに貸した総貸与金およそ一兆七千四百六十三億円に対し、返還額は一兆七千百三十八億円。率にして98・1%です。

学ぶ権利

 奨学金制度は憲法にある国民の「学ぶ権利」を保障するもの。教育基本法第三条は「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない」と定めています。育英会の廃止は国の責任を放棄するのと同じです。


 投稿募集中。感想や意見、身のまわりのできごとなど、なんでも教えてください。投稿はメールかはがき・手紙でお願いします。

 メールアドレス upress@jcp.or.jp

 〒151−8586 東京都渋谷区千駄ケ谷4の26の7 赤旗編集局「ゆうPRESS」係

 ゆうプレスは第1・第3月曜日に掲載。

 


もどる

機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。


著作権:日本共産党中央委員会 
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp