2007年1月16日(火)「しんぶん赤旗」

主張

景気「回復」

繰り返す「いずれ家計に」


 大企業が空前の利益を上げる一方で家計消費は冷え込み、貧困を強いる非人間的な雇用の増大が大きな社会問題になっています。

 世論調査でも「景気回復の実感がない」人が78%(「読売」)、貧富の格差が「広がっている」と思う人は83%(NHK)に達しています。日銀の調査では雇用・処遇に不安を感じる人は八割を超え、過去最悪の水準です。内閣府が十三日に発表した世論調査によると、生活不安を感じている人は調査開始から最悪の67・6%に上っています。

 大多数の国民のくらしが苦しさを増し、不安定雇用と貧困が広がっている現実の反映にほかなりません。

ふたたび失政メニュー

 「企業の好調さが、いずれ家計、賃金にも波及する」と甘い見通しを振りまく安倍内閣と、国民の実感との間には深い溝があります。

 尾身財務相は「景気回復の軌道は今年夏の参議院選挙ごろまでには、よりいっそう強固になるだろう」と言っています(八日、米首都ワシントンで)。夏には回復が家計に波及しているはずだというのです。

 無責任な「予言」です。とりわけ尾身財務相には前歴があります。

 尾身氏は橋本内閣で経済企画庁長官(現在の経済財政相に相当)をしていた一九九八年の初め、いずれ消費も所得も上向き、「サクラの咲くころには景気は回復する」と「予言」しました。しかし、キクの花が咲くころになっても回復の芽さえ出ず、九八年度は前年度を大幅に上回るマイナス成長に陥っています。

 九七年に橋本内閣は消費税の2%増税や医療費値上げ、特別減税廃止で九兆円の国民負担増を強行しました。同年十一月に尾身長官が財界の要請を受けてまとめた経済対策は法人実効税率の引き下げ、雇用の規制緩和(労働者派遣法の改悪)、銀行への税金投入を柱にしていました。

 ひるがえって、いまの政府の政策メニューには定率減税の廃止、法人実効税率の引き下げと消費税増税、福祉カット、雇用の規制緩和(労働者派遣法の改悪、「残業代ゼロ制度」の導入)が並んでいます。実施の順序や銀行対策を除けば橋本内閣の失政メニューとほとんど同じです。

 家計と賃金からの収奪を進めながら、家計と賃金に波及すると説明するのはあまりに厚顔です。

 財界言いなりの安倍内閣は失政を繰り返そうとしています。しかも、企業収益が低迷していた当時と違い、いま大企業は過去最高益を連続で更新中です。働く人への企業収益の配分割合を示す労働分配率は六割を切る寸前で、アメリカを下回るところまで急降下しています。その結果、大企業の金庫にはお金があふれています。

 ますます厳しくなる庶民の家計には増税を押し付けて、大もうけ・金余りの大企業に減税するというのは究極の「逆立ち税制」です。

安倍「引き潮」戦略

 日銀の調査は「成長力」についても聞いています。今後の日本経済は「より高い成長が見込める」と考える人はわずか3・4%で、96%の人が「現状並み」か「より低い成長しか見込めない」と答えました。

 政権みずから「上げ潮」政策と名づける安倍「成長」戦略が、日本経済の「引き潮」になりかねないことを多くの国民が見抜いています。

 庶民から吸い上げて大企業にばらまき、雇用のルールを破壊する「構造改革」はますます貧困を拡大します。こんなやり方は、家計が六割を占める日本経済の安定的な発展とはけっして両立しません。


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