2007年1月11日(木)「しんぶん赤旗」

電磁波の健康への影響 どう考える?


 〈問い〉 情報通信や電気機器の普及で、空中を電波が飛び交っています。「携帯電話は健康への影響が大きい」という人もいますが、電磁波は健康に影響があるのでしょうか?(さいたま市・一読者)

 〈答え〉 通信・電気機器の普及にともなって、送電線、配電線などから発する超低周波(0〜300Hz)やテレビ、携帯電話、レーダーなどに使われる無線周波(300Hz〜300GHz)など、可視光や赤外線より周波数の低い電磁波にさらされることが多くなり、健康への影響が問題になっています。電磁波には、医療機器に誤作動を起こしたり、人体組織に神経刺激や発熱を起こしたりする作用があるからです。

 国による防護対策として、「携帯電話はペースメーカから22センチ以上離す」などの指針や、無線局周辺に人を近づけない柵を設置するなどの規制があります。国際的にも、国際非電離放射線防護委員会が、強い電磁波による人体の急性的影響を防護するための指針を定めています。

 懸念されているのは、こうした指針が定める安全基準より弱い電磁波でも、長期にさらされた場合にうける影響です。実際に、送電線の直下や無線基地局近隣の地域では、住民から健康への不安が強く出されています。

 背景には、送電線からの超低周波磁界にさらされた人に小児白血病が増加したとする疫学調査が、各国で明らかになってきたことがあります。磁界の強さが0・3μТ(マイクロテスラ)以上の居住環境で過ごした場合に、小児白血病の発症が約2倍になるとの結果もあります。しかし、これらはサンプル数が少なく逆の結果を示す調査もあり、動物実験による明確な証拠がみつからないことなどから、科学的知見が確立したとはいえません。国際非電離放射線防護委員会も、これらの安全基準については検討中としています。

 世界保健機関(WHO)は、電磁界の健康への影響を評価する知見を提供するためのプロジェクトを1996年につくり、60カ国の研究者の協力をえて推進しています。超低周波磁界については、国際がん研究機関が「ヒトに対して発がん性があるかもしれない」とする中間的な報告を01年6月に発表。近く、WHOの報告書が発表される予定と報じられています。日本でも、研究を抜本的に強め、科学的知見にたった適切な規制をはかることが期待されます。

 また、科学的知見が未確立であっても、健康影響を示す研究結果もあるなかで住民から不安がだされるのは当然であり、今でもできる予防的措置をとることは必要です。送電線や無線基地局の設置については、学校や病院などの近くを避け、それ以外でも事業者が十分な情報提供や住民との対話をすべきです。携帯電話端末についても、子どもの使用抑制を促すことや、製品のSAR(エネルギー吸収率)の公表を義務付けることなどが重要です。(改)〔2007・1・11(木)〕


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