2006年12月16日(土)「しんぶん赤旗」

「ミニ経済白書」にみる

「いざなぎ」超えの虚像

「格差と貧困」の景気拡大


 景気回復期が戦後最長を超えたといわれています。でも、「生活はむしろ厳しくなっている」というのがまちの声です。内閣府が発表した「日本経済2006−2007」(「ミニ経済白書」)も「景気が回復しているという実感が乏しいとの指摘がある」と述べています。白書からみえてくるものは…。


 二〇〇二年二月からの今回の景気回復局面。十一月で、「いざなぎ景気」(六五年十一月―七〇年七月)の五十七カ月を超える回復期間となりました。たとえ期間で上回っても中身が問題です。白書も「過去に比べて回復に力強さが欠けている」としています。名目経済成長率は、「いざなぎ景気」の場合、年平均18・4%増だったのに対し、今回の回復局面は1・0%増にすぎません。名目賃金にいたっては、「いざなぎ景気」の場合、期間中の物価上昇率(前年比平均5・3%増)を大幅に超える12・8%増(前年比平均)でした。ところが、今回は名目賃金がマイナス0・1%。景気回復といわれても、賃金が減っては実感できる人はいないでしょう。

小規模事業所賃金減少続く

 賃金の動向について白書は、小規模事業所で減少が続いていることに警戒感を示しました。従業員規模三十人以上の事業所と三十人未満の事業所の賃金指数の伸びを比較。「二〇〇六年に入ってから規模が大きい方では定期給与の増加が続いているのに対して、小規模事業所の定期給与は減少している」と指摘しています。

 景気回復の中で賃金を押し下げる方向に作用した要因として白書は、非正規雇用の拡大に注目しました。非正規雇用者数は九五年に一千万人を超え、上昇を続けています。現在、雇用者の三人に一人が非正規雇用者です。「非正規雇用者の賃金は正規雇用者に比較すると相対的に低い水準にあり、企業内で非正規雇用者比率が高まることは平均賃金水準を押し下げることになる」としています。

 大企業が史上最高の収益を上げる一方、働いても働いても貧困から抜け出せないワーキングプアが社会問題になっています。その主因は、非正規雇用の拡大です。今回の景気回復は「貧困と格差の拡大」が共存していることが、白書の分析からも浮かび上がってきます。

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