2006年12月14日(木)「しんぶん赤旗」

“成立先にありき”の異常

「防衛省」法案 きょう委員会採決


 自民・公明の与党と民主党は、自衛隊の海外派兵を本来任務(主要任務)にし、防衛庁を省に移行させる「防衛省」法案について、十四日に参院外交防衛委員会で採決する日程を決めました。日本の安全保障政策を大転換する重大法案にもかかわらず、十五日の会期末が迫る中、まともな審議もせず“成立先にありき”で採決を強行する異常な姿勢をあらわにしたものです。(田中一郎)


 法案は、憲法九条の下で歴代政府が「専守防衛」の建前から「日本防衛」に限定してきた自衛隊の任務を根本的に変更するものです。自衛隊を“海外派兵隊”にする違憲立法です。

 参院外交防衛委で最初の法案審議を行ったのは七日。ところが与党側が採決日程を初めて提案したのは、その委員会を開く直前の理事会(同日)でした。審議の前から採決日程を提案―。とにかく成立優先という異様さでした。

民主も責任重大

 こうした与党の横暴を支えたのが、法案に賛成した民主党の態度です。

 与党と民主党が採決日程を最終的に決めたのは、次の委員会審議を行った十二日午後。この日午前の委員会で参考人から「良識の府である参院では、より慎重な審議を」(早稲田大学の水島朝穂教授)の声が上がった直後でした。

 衆院安全保障委員会での審議時間は、約十五時間。参院外交防衛委での審議時間は、十四日も含めわずか十三時間でしかありません。

 民主党は、審議時間が短いことは認めながらも、会期末という“例外的な状況”を挙げて、採決日程に賛成したのです。会期末だからといって審議時間が足りないことが分かっているのに、採決を決めるなどということが許されていいはずがありません。与党とともに民主党の責任はこの点でも重大です。

危険認めた政府

 法案の問題点はわずかな参院審議でも次々と浮かび上がってきていました。

 法案が自衛隊の本来任務に位置付ける海外派兵には、自衛隊が米軍のイラク軍事支配を支援するためのイラク特措法や、米軍の「対テロ」戦争を支援するためのテロ特措法が含まれています。

 ところが久間章生防衛庁長官は、日本共産党の緒方靖夫議員の追及に、イラク戦争について「もうちょっと慎重にやった方がよかった」と答弁。テロ特措法についても、民主党議員の質問に「アメリカが戦争を仕掛けるのに後方支援として応援している」「危なっかしい」と述べました。

 担当閣僚みずからが本来任務にしようとする海外派兵の危険を認めているのです。

 世論調査では法案について「今の国会で改正すべき」はわずかに20%。「こだわらなくてもよい」は73%に達しています(JNNの調べ、九―十日)。参院審議の中でも、自民党議員でさえ「国民が(法案について)十分に理解しているような感覚には至っていない」と述べざるを得ませんでした。それでも採決を強行するのであれば、政府と与党、民主党への国民の厳しい批判は避けられません。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp