2006年12月5日(火)「しんぶん赤旗」

教育基本法改悪法案

国の介入 ひどくする

共産党の質問で はっきり


 自民、公明の与党が今週末にも成立を狙っている教育基本法改悪法案。国や行政による教育に対する「不当な支配」を禁止している現行一〇条を根本的に変えるものです。いじめをはじめ教育現場での深刻な問題もいっそうひどくしかねないことが、参院教育基本法特別委員会での日本共産党議員の質問で浮き彫りになっています。


「君が代」斉唱
内心に踏み込む指導

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(写真)質問する井上哲士議員=11月27日、参院教育基本法特別委

 文部科学省は現在、学習指導要領の見直しを進めています。その「論点整理」では、子どもたちに身に付けさせたい能力として「『君が代』の美しさや自国を尊重するこころをもつ」ことをあげている――。日本共産党の井上哲士議員の質問(十一月二十七日)で明らかになりました。

 「君が代」を全学年で指導するとしか書いていない現行の指導要領より踏み込み、初めて「君が代」と子どもの内心を結びつけるものです。憲法が保障する思想・良心の自由を侵害します。

 東京都町田市教育委員会は、二〇〇四年に「君が代」を校歌などと同じ声量で歌うよう指導をすることを求めた「通知」を校長あてに出しました。音楽の授業のたびに「君が代」の練習、卒業式の一週間前は毎日練習、音楽の先生が「指が縦に三本入るまで口を開けなさい」と繰り返し指導しました。

 教基法改悪法案では、教育の目標として「国を愛する態度」など二十もの徳目を盛り込んでいます。「君が代」を通じて国を尊重する心を持てという強制的な指導が全国に広がることになります。伊吹文明文科相は公明党議員に対し、「心があるから態度に表れる。教える場合は一体と考えてもかまわない」と答弁しました。

教員の多忙化
長時間残業に拍車

 「小林議員の質問は、現場の先生たちが世の中に訴えたいこと、一番切実な問題だったのではないか」(東京都在住の教育研究者)。日本共産党の小林みえこ議員の質問(十一月二十九日)への感想です。小林氏は小中学校の教員が月六十六時間以上の残業に追われ、忙しくて子どもと向き合う時間もとれない問題を明らかにしました。

 政府の教育振興基本計画案では、教員の多忙化・過重労働解消策などの文言は一行もありません。かかげるのは全国学力テスト実施や教員評価システムなどです。

 二〇〇二年度からの現行学習指導要領にもとづく政策で、現場の教師の多忙化が広がりました。たとえば、「関心・意欲・態度」の評価方針に従い、各地で子どもの成績付けが激変。生徒一人につき、一科目で十二項目の評価をつける成績表補助簿が使われています。こうした中で、いじめの相談にきた中学三年の生徒の対応に遅れ、生徒が自ら命を絶つという痛ましい事件も起こりました。

 政府の教育再生会議は、教員免許の更新制度導入などを狙っています。そのための研修などで現場はさらに忙しくなりかねません。

「いじめ」で校長自殺
評価システムで管理強化

 教育振興基本計画案は教員評価システムの導入を掲げています。すでに今年度から教員評価システムが本格的に導入された北九州市では、教育委員会が学校現場への管理を強め、いじめ問題で校長が自殺する事態にまで発展しました。

 マスコミに「いじめを隠していた」と報道された校長は、「なぜ報告しなかったのか」と教育長に叱責(しっせき)され、市教委の同席もない孤立無援の長時間にわたる記者会見の翌日自殺しました。

 校長や教頭など管理職への評価と管理が進む中で、学校から市教委に相談しにくくなっています。教員の評価システムの下、教員同士の分断や精神的圧力が強まり、クラスで何かが起きてもほかの教員や管理職には相談できない状況がつくられていました。

 質問した日本共産党の仁比聡平議員は「この校長はゆがんだ教育行政の犠牲者だ」と指摘しました(十一月二十八日)。

 同市の評価システムは二〇〇三年度に文科省が委嘱してつくったものです。市教委の人事権を一手に担う学務部長も文科省の出向者です。改悪法案で、現場のゆがみがさらに深刻になることが危ぐされています。


写真

(写真)大分県でのタウンミーティング(2004年11月)の「やらせ質問」に、文科省が関与したことを示すメール。送り主が文科省教育改革推進室になっている=11月27日に内閣府が公表した資料から

「やらせ」質問

その後も新事実次々

 タウンミーティング「やらせ質問」問題は、日本共産党の指摘で大問題になりましたが、参院でも引き続き改悪法案の前提をゆるがす焦点になっています。

 井上哲士議員の追及(十一月三十日)で、教育基本法改悪法案作成に携わった文科省の担当部署が、「やらせ質問」に直接関与していたことがわかりました。二〇〇三年、〇四年の教育改革タウンミーティングを担当していたのが文科省の教育改革官室(〇四年八月から教育改革推進室)です。この間、岐阜市、松山市、和歌山市、大分県別府市の四カ所で「やらせ」が発覚しています。井上氏が示した「大分の質問案をつくりました。よろしくお願いします」というメールの送信元が教育改革推進室になっていました。

 文科省の担当者は「教育基本法『改正』を審議した中央教育審議会への対応」や改悪法案をつくった与党協議会・検討会の事務局的役割をしていたと認めました。

 内閣府が公表した資料で、八回の教育改革タウンミーティングのうち六回で、政府が参加者の動員を要請していたこともわかりました。


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