2006年12月4日(月)「しんぶん赤旗」

教育基本法改悪に反対


むきだし国家統制 関連15学会シンポ

 日本教育学会、教育史学会など教育学関連の十五学会が共同して三日、「教育基本法改正案と今求められる教育改革」と題して公開シンポジウムを、東京都内で開きました。

 教育基本法「改正」問題での関連学会共同シンポジウムは二〇〇二年に第一回が開かれ、今回が五回目。与党が今週にも法案の成立を狙うという緊迫した情勢のもとでの開催となりました。

 開会あいさつで佐藤学・日本教育学会会長は「『改正』案は個人の内面を法律で規定し、立憲主義に反する。国家が個人をコントロールすることをむきだしにしたものだ」と批判しました。

 日本教育法学会の世取山洋介・新潟大助教授は、国会審議でも「(民主党も含め)教育の自由、子どもの成長発達権の保障という現行法の視点から『改正』案を批判する議論が行われるようになった」とし、「改正」案の“理念”と現行法の理念との違いや憲法との関係などが審議される必要があるとのべました。

 日本教育学会の田中孝彦・都留文科大教授は、子どもをめぐるさまざまな事件は「競争」と「自己責任」を強調してきた日本社会の土壌のうえに発生していると指摘。「改正」案は、子どもたちを「学力低下」「モラル低下」と一方的に断定する子ども観に立っており、溝をいっそう深め、子どもの成長をさらに困難にすると批判しました。

 日本教育行政学会の中嶋哲彦・名古屋大教授は「教育改革は子どもや地域の具体的な現実から出発する必要がある」と強調。「改正」案は、教育を受ける権利を保障する基本法から、国家戦略遂行手段としての教育制度・政策を推進するものへと変える―などの問題点を指摘しました。

 児玉勇二弁護士がいじめ自殺問題について特別報告しました。

戦争から考える 教師の卵が集い

 教員をめざす学生などでつくる「先生のたまごクラブ」は三日、都内で「戦争から教育基本法を考える」をテーマにした青年の集いを開きました。約八十人の青年たちが参加し、「戦争の反省の上につくられた憲法や教育基本法が変えられようとしているのは心配」「もっと勉強して政治や社会のことを知りたい」と話し合いました。

 集いでは、ひめゆり学徒隊として沖縄戦を体験した上江田千代さん(77)が講演。捕虜になってはいけないと教えられ、手りゅう弾をもらって死のうとしていたことを語り、「それが教育の恐ろしさです」「憲法や教育基本法が変えられようとしているけど、みんなの力で防波堤をつくりましょう」と訴えました。

 「たまごクラブ」のメンバーが戦前の「教育勅語」の内容を示し、教師が子どもを戦場に送る役割をさせられたこと、そうした戦前の教育への反省から現行の教育基本法では国家が教育内容に介入できないようにしていることを説明。「一人ひとりが自分らしく輝き、互いに認め合える教育をしていきたい」と語りました。

 参加者は十人前後に分かれてグループ討論。「六十年前にこんなことがあったことに驚いた。世界のこと、政治のことをもっと知らなければと思った」「戦争の怖さをあらためて感じた。教育基本法のこととか考えると、また同じことが繰り返されるかもしれないと思う。いまがすごく大事なときになっている」と活発に話し合いました。

競争で苦しむのイヤ 青年がパレード

 教育基本法改悪案を廃案にしようと、「12・3PEACE&FAIRパレード」が三日、東京都渋谷区内で開かれ、二十代、三十代の青年を中心に七十人が集まりました。参加者は宮下公園を出発し、教育基本法改悪反対を訴えながら渋谷の町を一周しました。

 「教育基本法の改悪をとめよう! 全国連絡会」が主催したもので、先頭の車からは軽快な音楽が流れ、音楽に合わせて踊る人、パレード参加を呼びかけながら手を振る人、「STOP教育基本法『改正』」と書かれたプラカードを持つ人などが参加。沿道の人に配布していたビラには教育基本法がどう変えられるのか、わかりやすい文章で説明されています。

 兵庫県からパレードに参加するために夜行バスで上京し、終了後、夜行バスで帰る高校の臨時講師の男性(23)は「教育とは将来を形づくるもので、自分たちの手でつくるもの。変えられてしまったら、自分たちの手から離れてしまう。愛国心の押しつけも自分の良心に反します」と力をこめて話しました。

 大学で教育学を学ぶ男性(23)=東京都=は「中学校のとき不登校だった。変えられてしまったら生徒への締め付けが厳しくなり、生徒を教育から排除する方向にいってしまうと思う。学校に行く行かないにかかわらず、誰でも教育を受ける権利を大切にしてほしい」と語りました。

 パレードでも発言した女子学生(19)=奈良県=は「みんなが平等に教育を受けられるようにしたい。政府は競争原理を導入しようとしているけど、差別意識が生まれるだけです。いままで、競争教育の中で人をねたむなど、悲しい思いをしてきた。私みたいに競争で苦しんでほしくない」。

 信号を待っているときにビラを受け取った男性(25)=会社員=は「最近、いじめが取り上げられているので、ニュースでは見ています。みんな頑張っていますね」と話していました。


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