2006年11月29日(水)「しんぶん赤旗」

介護保険では、散髪に行けない 本当?


 〈問い〉 「ヘルパーが付き添って散髪に行くのは介護保険の適用外だ」、「通院等乗降介助のサービスは通院以外だめだ」と行政の実地指導担当者が言っています。本当ですか?(大阪・一読者)

 〈答え〉 ご質問のような行政指導は各地でされているようです。とくに最近は、国の旗ふりで市町村の「給付適正化事業」が行われているため、「行政担当者の指導があまりに乱暴だ」「あとで返還命令が出されるのが怖く、利用者の立場に立ったケアプランをつくれない」などの声も寄せられています。法令の基準や趣旨すらないがしろにされ、給付抑制を目的とした行政指導がされることは重大です。あらためて、法令上の根拠を厚生労働省にただしました。回答は次のようなものでした。

 (1)介護保険の給付「訪問介護」のうち、ハ「通院等乗降介助」の利用目的「通院等のため」と、イ「身体介護」のサービス行為「通院・外出介助」の利用目的とは同じものである。そのため、「身体介護」の「通院・外出介助」として通院以外の利用目的(たとえば選挙の投票、市町村が実施している生きがいデイサービスへの参加など)を認めていれば、その利用目的については、「通院等乗降介助」でも認めるべきである。

 「通院等乗降介助」についても、「通院・外出介助」についても、名称に「通院」以外に「等」や「外出」とついているように、通院以外一律禁止ということはない。通院以外ダメとする保険者(市町村)があれば、それは間違いである。

 (2)「散髪」について。厚労省として事務連絡や「Q&A」などで「禁止」という考え方を伝えたことはない。ただし、00年、01年ごろに、市町村からの個別の照会に対して、WAM―NETなどで厚労省として回答を示したことはある(「地域の状況を勘案し、他のサービス、ボランティア事業等の利用が困難な場合、保険者の判断で例外的な行為として阻むものではない」となっている)。当時、そのように回答した背景として、訪問理美容事業という国の補助制度があったこともある。しかしいまは一般財源化されて、国の補助制度はなくなっている。そのため、すでに訪問理美容事業などが行われていない市町村では、「散髪」を「身体介護」の「通院・外出介助」の利用目的としても良いのではないか、という考えがあることは理解できる。保険者(市町村)が利用目的として「散髪」を認めた場合、国としても認めることは、これまでどおりである。

 つまり、「散髪はダメ」「通院以外は一律禁止」という自治体担当者が全国各地でおこなっている指導は、法令上も問題があるということです。(榛)

 〔2006・11・29(水)〕


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