2006年11月23日(木)「しんぶん赤旗」
APECでうきぼり
米の“主導権確保”に警戒感
アジアの自立姿勢はっきり
ハノイで十九日に閉幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、ブッシュ米大統領は経済・安保にわたる積極的な関与による「アジア重視」を強調、主導権を維持しようとしました。しかし、東アジア各国は総じて慎重姿勢で、東アジアの自立姿勢を改めてみせつける結果となりました。(面川誠)
APECを現場で取材した記者は一様に「ブッシュの“顔”が見えなかった」と振り返ります。
APEC首脳会議に先立つ十六日、ブッシュ大統領はシンガポールで今後のアジア政策について演説。米国が六十年以上にわたり、米国市場をアジアに開放し、強力な軍事的プレゼンスを維持することによって「米国は今日の現代的で堅固なアジアに貢献してきた」と自賛し、「新しい世紀に、米国はアジアに関与し続ける」と熱弁をふるいました。
「貢献」アピール
ブッシュ大統領は、新型肺炎(SARS)、鳥インフルエンザ、エイズ、インド洋大津波などでの米国の支援を挙げ、民生面でも「アジアに貢献する米国」を懸命にアピールしました。
売り物として打ち上げたのが、APECの全参加国・地域によるアジア太平洋自由貿易協定(FTAAP)です。
ところが、東アジア各国はこれに冷淡で、「アジアに貢献する米国」を除いたまま進む東アジアの結束への巻き返しが米国の狙いだと受け止めました。APECの一連の会合で中国、マレーシア、フィリピン、さらに日本が慎重な立場を表明。インドネシアのハッサン外相は「東南アジアの国々はFTAAPに反対した。この(東南アジア諸国連合=ASEAN)地域、さらに中国などのパートナーとの経済統合という独自の計画があるからだ」と言い切りました。
首脳宣言でのFTAAPの扱いは「長期的な展望」。昨年十二月の初の東アジア首脳会議開催、発効済みと協議中を合わせて二十にのぼる二国間・多国間の自由貿易協定(FTA)推進など、共同体志向を急速に強める東アジアは、米国の狙いを巧妙にかわしました。
軍事同盟を誇示
ブッシュ大統領は演説で、「アジアへの貢献」として軍事的プレゼンスの維持も忘れませんでした。
北朝鮮の核開発への対応で、六カ国協議での解決を確認する一方、「防衛協力も強化している」と強調。アジア太平洋地域には北大西洋条約機構(NATO)のような仕組みがないとして、米国を軸とした二国間同盟を張り巡らせることで、アジア太平洋は「二十一世紀の脅威に対応している」と力説しました。
日本、韓国、オーストラリアとの軍事同盟、フィリピン、インド、ベトナム、シンガポールとの軍事協力を列挙し、陸海空で強制的な貨物検査を目的とする大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)に八十カ国が参加していると豪語しました。
しかし、韓国の盧武鉉大統領は米韓首脳会談で、PSIの「目的を完全に共有する」とする一方で、正式参加をしないと言明。各国も北朝鮮核問題で対話の重視を強調し、APEC議長声明は、軍事的な備えに言及しない「平和的解決」を求めるものとなりました。
マレーシアのアブドラ首相は十九日の記者会見で、九・一一同時テロの後、APECは「やむを得ず政治・安保問題も討議するようになった」と述べ、何かと安保問題を持ち込もうとする米国に苦言を呈しました。
イラク戦争の失敗、中間選挙での大敗で、米国への信用が極度に落ち込んでいるなかで、アジアに寄り添おうとした米国。自国の都合に合わせてAPECを利用しようとする米国に、東アジア諸国の警戒は消えません。

