2006年10月25日(水)「しんぶん赤旗」

高級官僚の政治行為は罪にならないのか?


 〈問い〉 国家公務員の政治活動は国家公務員法などで禁止されています。ところが選挙が迫ると高級官僚、大臣などが街頭や集会で政治演説を公然としているのが違法にならないのは、なぜですか?(大阪・一読者)

 〈答え〉 事の正否は別として、現在どのように取り扱われているかという点をまず述べます。

 一般の国家公務員は、国家公務員法の政治的行為の制限事項によって、政治活動に大幅な制限が課せられています。これは一般に「行政の中立性」を保つ必要からこのような規定がされていると説明されています。

 これにたいし首相や各大臣、副大臣、政務官などの行政官庁の指定された役職についている人は、特別公務員といって、国家公務員法第2条で、この法律の適用をしないと定められているので、政治活動ができるわけです。なお、事務次官以下の高級官僚は、一般公務員の政治活動の規制がかかります。

 ところで首相や大臣は、行政にあたるときには、行政の中立性を保たず、特定の人びとに偏った行政運営をしてもいいのでしょうか。

 そんなことはありません。そもそも憲法第15条は「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」とはっきり書いています。ここでいう公務員とは、なによりもまず、首相や大臣など行政の先頭に立つ政治家を意味しています。

 6月に判決のあった堀越さんの国家公務員法事件で、東京地裁は、一般の公務員が政治的な活動をするとどんな小さなことでも、行政の中立性を侵す可能性につながるというようなことをいって有罪判決を出しましたが、この論理では大臣などが政治活動をしながら、憲法第15条違反にならずに行政の中立性が保てる(実際はともかくとして)理由が説明できません。

 人はだれでも、公務員をふくめて、思想・信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由があります。政治活動は自由にできる国会議員出身の大臣が、中立性の必要な行政官庁の責任者であるわけですから、一般の公務員だって、政治活動をしたから行政の中立性が侵されるという理屈に根拠はありません。要は、実際に中立性を保った行政運営をやればよいわけです。

 行政にたずさわる国会議員の政治活動が違法なのではなく、一般の公務員の政治活動を取り締まる国家公務員法の規定のほうが憲法に違反する規定なのです。(明)

 〔2006・10・25(水)〕


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