2006年10月23日(月)「しんぶん赤旗」

主張

中越大震災2年

国の責任暴いた被災地の現実


 六十七人の命を奪い、十二万棟の家屋を損壊させた新潟県中越大震災から二十三日で丸二年、まもなく三度目の冬を迎えます。

 被災地ではいまも千五百世帯四千六百人が不自由な仮設住宅での生活を強いられています。住む場所が決まっても家の新築費用の負担に苦しむ人がいます。生業を失い、生活のめどがたたない人もいます。生活再建と地域振興へ、多くの課題が残されています。

住宅再建の“壁”

 新潟県では「二〇〇六年十月までにすべての被災者が生活再建の見通しをたてられるようにする」を目標に、道路や農地などの生活基盤の復旧に取り組んでいます。しかし、大地震のつめ跡はあまりに深刻です。

 地震発生後、県内では十万三千人以上が避難所に逃れました。避難所生活や車中泊を経験した人たちは、いまもエコノミー症候群の原因となる血栓ができやすく、その発生率は一般の四倍といいます。県教委が子どもたちに行ったカウンセリングでは、急に地震のことを思い出して不安になるなど心のケアを必要としている小中学生が二百人近くいます。

 心にも、身体にも、癒やされぬ傷を負った被災者が「なんとか自分の家に落ち着きたい」と切実に願っています。その住宅再建の前に「国の壁」がたちはだかるといわれます。被災者生活再建支援法の問題です。

 阪神・淡路大震災を契機に、被災者の住宅再建に国の支援を求める世論と運動が高まり、この法律が生まれました。しかし、被災者への支給金額は最高でも三百万円、使途は住宅の解体・撤去など周辺経費に限られ、肝心の住宅本体の建設費や補修費には使えません。対象も全壊・大規模半壊の住宅だけで、あまりにも制約が多く、被災者や地元自治体から「これでは使えない」という声があがります。

 日本共産党は大規模災害の被災者のために、住宅本体の再建への公的支援―個人補償の実現を、一貫して要求してきました。国会では支援法改正案を共同提案するなどしてきました。政府・与党は「日本は私有財産の国だから個人の財産への補償はできない」という理屈で、これをかたくなに拒んでいます。

 「住宅本体への支援ができないルールがあるのか」という国会での日本共産党の追及に、政府は「憲法に規定されたり、法律には書いてありません」と答えています。「個人補償はできない」というのは憲法上の制約ではありません。要は政府の政策判断の問題です。

 中越大震災では旧山古志村周辺など山間地で、地すべり、山崩れで渓流がせき止められた「震災ダム」による水没など、甚大な被害が広がりました。住宅だけでなく宅地や棚田、鯉(こい)養殖池など生活の基盤が丸々奪われたのです。

 過疎化と高齢化に苦しみ、地域のコミュニティーのなかで肩を寄せ合って生きてきた人たちがいま、被害を乗り越え、愛着あるふるさとで暮らしたいと願い、一生懸命努力しています。なんとかそれをかなえる手厚い支援を実現することは、政治の当然の責任です。

風化させることなく

 大規模な災害で自力では立ちあがれないほどの被害を受けた被災者を日本という国は見捨てない―この大原則にたって、被災者が「これで助かった」と喜べる公的支援制度をつくるべきです。大震災の記憶を風化させず、被災地だけでなく全国から、この声を広げましょう。


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