2006年10月15日(日)「しんぶん赤旗」

教育基本法改悪反対大集会

志位委員長のあいさつ

(大要)


写真

(写真)国会情勢報告をかねたあいさつをする志位和夫委員長=14日、東京・明治公園

 十四日に開かれた「10・14教育基本法改悪反対大集会in東京」(東京・明治公園)で、日本共産党の志位和夫委員長がおこなった、国会情勢報告をかねたあいさつの大要は次の通りです。

 みなさん、こんにちは。日本共産党の志位和夫です。

 この集会にこれだけたくさんの仲間が集まったことは、教育基本法をまもりぬこうという熱い思いが、いかに大きく広がりつつあるかをしめしていると思います。とくに私は、全教のみなさん、日教組のみなさんが、労働組合の立場のちがいをこえて、全国各地で共同の運動を広げていることは、たいへん心強いことだと思います。(拍手)

 全国からお集まりのみなさんに、日本共産党を代表して心からの連帯のあいさつを申し上げます。(拍手)

前国会の論戦であきらかになった憲法に反する二つの大問題

 前の国会の論戦で、政府提出の教育基本法改定案が、子どもたちの未来を奪い、憲法に反する二つの大問題をもっていることが明らかになりました。

 一つは、「愛国心」など、あれこれの「徳目」を強制することは、憲法一九条に保障された国民の内心の自由を侵害するものだということです。

 この問題では、子どもの「愛国心」をA、B、Cで評価する「愛国心通知表」にたいして、首相が「評価は難しい」、「必要ない」といい、これがきっかけになり、全国で是正のとりくみが前進しました。「しんぶん赤旗」の調査では、昨日までの判明分の数字ですが、「愛国心通知表」を使っていた自治体のうち、三十一市区町村・百五十七校で、見直し・廃止が表明されています。これは、国会の論戦と草の根の運動の共同の大きな成果といえると思います。(拍手)

 いま一つは、政府の改定案が、現行教育基本法の命ともいえる第一〇条――「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」――をずたずたに改変し、国家権力が教育の内容に無制限に介入できるようになっていることです。これも教育の自由と自主性を保障した憲法に反するものであります。

 みなさん、憲法に反する二つの大問題をもつ教育基本法改定案は、廃案にするしかない(拍手)。これが明らかになったのが、前の国会でのたたかいの到達点だったということを、まずみんなで確認しようではありませんか。(拍手)

「日の丸・君が代」強制を断罪した東京地裁判決――教基法改悪案への審判

 この間、私たちに勇気と希望をあたえてくれたのは、東京都でおこなわれている「日の丸・君が代」の無法な強制にたいして、九月二十一日、東京地裁が、違憲・違法との画期的な判決をくだしたことであります(拍手)。私は、困難な条件のもとで、裁判闘争をたたかっている原告のみなさん、それをささえているすべてのみなさんに、心からの敬意を申し上げるものです。(拍手)

 私は、この判決文を拝見しましたが、これは道理も情理もそなえた、たいへん大きな意義をもっていると思います。

 第一に、東京地裁判決では、国旗・国歌を尊重することは当然だとしつつも、「日の丸・君が代」はその歴史的経緯から反対する国民も少なくないこと、日本国憲法は相反する世界観、主義・主張をもつ国民の思想・信条の自由を尊重するという原理にたっていること、一律に個々人に強制することは、憲法一九条が保障した思想・良心・内心の自由を侵害するものだと、はっきり認定しました。(拍手)

 私は、これは、政府の改定案がすすめようとしている「愛国心」などの強制も、憲法違反だということをしめした判決だと考えるものです。(拍手)

 国家が、子どもたちに「心」や「愛」を強制してはなりません。そうした心情は、一人ひとりの子どもたちを大切にし、その「人格の完成」をめざす教育の自由な営みのなかで、培われるものであります。政治がなすべきは、立ち入ることが許されない子どもたちの内心に土足でふみこみ、「愛」を強制することではありません。どの子どもたちにも、愛するに足ると実感できる国をつくるために力をつくすことこそ、政治の本来の仕事ではないでしょうか。(拍手)

 第二に、東京地裁判決が、「日の丸・君が代」の強制を、国家権力による教育への「不当な支配」を排除した教育基本法第一〇条に違反するとして、きびしくしりぞけていることも、きわめて大切であります。

 判決では、学習指導要領の法規としての性質を認めつつも、国が教育内容についての基準を決める場合には、大まかな基準にとどめるべきであって、東京都がやっているように、「通達」で事細かに卒業式や入学式の式次第を決めて、強要するようなやり方は、まさに教育基本法第一〇条のいう「不当な支配」にあたり、憲法がもとめている教育の自由や自主性に反すると認定しました。

 政府提出の教育基本法改定案は、国や地方の教育行政機関がおこなう行為は、すべて「不当な支配」にあたらないとして、国家が教育内容に無制限に介入できるようにしようというものですが、「通達」を「不当な支配」と断じた東京地裁判決は、政府のこの主張を根本からつきくずしたのであります。(拍手)

 こうしてこの判決は、東京都教育委員会の無法への断罪であるとともに、二重の意味で政府の教育基本法改定案の不当性への審判ともなっています。(拍手)

 第一審の判決とはいえ、司法が、ここまで道理をつくした判決をくだした意義は重いものがあります。私は、政府が、この判決を重く受け止め、教育基本法改悪の策動を中止することを、みなさんといっしょに強く求めるものであります。(拍手)

安倍「教育再生」――子どもを学校からおいだす“教育破壊”は許せない

 いま一つ、この間の進展で重要なことは、教育基本法が改定されたらどうなるか、相手が何を狙っているかが、安倍首相のいう「教育再生」プランなるもので、はっきりとうきぼりになったことです。

 安倍「教育再生」プランでは、公立の小中学校で学ぶ子どもたちを、激しい競争にかりたて、「勝ち組」「負け組」にふるいわけするメニューが満載されています。全国いっせい学力テストをおこない、結果を公表し、全国の学校に点数で序列をつけるというのです。学校選択制を全国に広げ、生徒の募集でも、勝ち負けをつくるというのです。学校の予算でも差別をつけ、「勝ち組」の学校は予算をつけるが、「負け組」の学校はつぶしてしまうというのです。さらに、国が、学校と先生と子どもたちに優劣をつけるために監査官を全国に配置するという。監査官によって「悪い学校」と烙印(らくいん)を押されたら、廃校に追い込まれてしまうということになります。私は、全国の公立の小中学校を、こんな恐ろしい弱肉強食の世界にしてしまうことなど、絶対に許すことはできません。(拍手)

 安倍内閣で「教育再生」プランの旗ふりをしている下村博文内閣官房副長官は、「国の基準を満たせない学校は廃校になっても仕方ないし、学校選択制のもとでは、子どもが集まらないだろうから、つぶれてしまうだろう。そのような学校にいた先生は、廃校とともに職探しをしてもらうことになる」(場内からどよめき)。こう公言してはばからない。

 私は聞きたい。それではその学校にいた子どもたちはどうなるのか。「国の基準を満たせない」と烙印を押された学校に学ぶ子どもたちの気持ちがどんなに傷つくか。少しでも考えたことがあるのか。私は、このことを問いたいのであります。(拍手)

 こんなことが国の号令ではじまったら何がおこるか。それを先取り的に実施している東京都の実態をみればわかります。ここ数年、東京二十三区の小中学校では入学生ゼロの学校が続出しています。統廃合で消えてなくなった学校もあります。学校が点数で輪切りにされ、希望者が減り、希望者の少なさをみてさらに希望者が減り、とうとう春になっても新入生が来なくなる。これが子どもたちの気持ちをどれだけ傷つけているか。こんな事態を全国にもっとひどい形でおしつけるなど、断じて許すわけにはいきません。(拍手)

 もう一つ、安倍「教育再生」プランの行き着く先をしめしているのが、それがモデルとしているイギリスの教育の実態です。安倍「教育再生」プランは、サッチャー政権が一九八〇年代後半に強行した「教育改革」のものまねですが、イギリスでは、学校と子どもに徹底的な競争とふるいわけを強要した結果、「問題がある」とされた子どもたちは、学校から追い出されるという異常事態が広がりました。義務教育修了資格を持たずに学校を去る子どもが約8%、不登校は毎年百万人以上、停学処分は十万人以上、退学処分は一万人以上と、多くの子どもたちが学校から追い出されているのであります。

 私は、安倍首相にいいたい。小中学生の約一割もの子どもたちを、義務教育が終わる前に学校から追い出すような「改革」のどこが「教育再生」か。これはまさしく“教育破壊”そのものではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)

 私は、子どもたちを競争においたて、「勝ち組」「負け組」にふるいわけするような教育からは、けっして本当の学力は育たないと思います。子どもたちに物事が分かる喜びを伝え、探究心を育てる仕事が教育であり、そのなかからこそ本当の学力は育つのではないでしょうか。(拍手)

 外国を参考にするなら、フィンランドの教育改革にこそ学ぶべきであります(拍手)。競争主義を教育から一掃し、学校と教師の自由と自主性を尊重し、少人数学級をすすめた。このなかから、学力で世界一という教育がつくられました。この国の教育改革をすすめるうえで、わが日本の教育基本法が参考とされた。この教訓にこそ安倍首相は学ぶべきではないでしょうか。(拍手)

「美しい国」のための人づくりでなく、「人格の完成」をめざした教育改革を

 安倍首相は、「私が目指す『美しい国、日本』を実現するために、次代を背負って立つ子どもや若者の育成が不可欠です」といいました。つまり、教育の目的は、安倍首相のいう「美しい国」を実現することにあるというのです。

 安倍首相のいう「美しい国」づくりとは何か。憲法九条を変えて「海外で戦争をする国」をつくることであります。「構造改革」のかけ声で、「弱肉強食の経済社会の国」をつくるということです。子どもたちの未来を左右する教育を、「美しい国」の名での「恐ろしい国」づくりの道具にさせては決してなりません。(拍手)

 教育基本法の第一条には、「教育の目的」は、一人ひとりの子どもたちの「人格の完成」をめざす――発達の可能性を最大限に伸ばすことにあるとのべています。

 逆にいえば、教育は「人格の完成」以外を目的にしてはならない。ただひたすらに、子どもたちの成長のためにすすめられるべきであって、特定の「国策」のための人づくりの道具にしてはならない。ただひたすらに「人格の完成」のために教育はおこなわれなければならない。そうして、成長した子どもたちが、未来の主人公として、日本の国の未来を決めていく。この国民主権の原理こそ教育基本法の真髄ではないでしょうか(拍手)。この理念にたった教育改革こそ、国民が求める本当の教育改革だと考えます。

 政府・与党は、この臨時国会で、教育基本法の改定を何がなんでも強行する構えであります。たたかいはこれからが正念場です。子どもたちの未来を奪い、憲法に幾重にも反する教育基本法改悪法案を、みんなの力で必ず廃案においこもうではありませんか。私たちも最後までがんばりぬく決意をのべて、情勢報告をかねたごあいさつとします。みなさん、ともにがんばりましょう。(大きな拍手)


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