2006年10月13日(金)「しんぶん赤旗」

マスメディア時評

日本の核武装で対抗する愚


 国際社会の一致した反対を踏みにじり、自ら交わした国際取り決めに反して強行した北朝鮮の核実験に対し、新聞などマスメディアもいっせいに批判の論陣を張っています。「暴挙に強く抗議する」(「朝日」社説)、「世界を敵に回した北朝鮮」(「毎日」同)、「平和・安定への挑発だ」(「東京」同)等々、当然の主張といえるでしょう。

反対の足場失わす

 こうした中で見過ごせないのは、北朝鮮の核実験に対抗し、日本も核兵器の保有を検討するなどという、とんでもない主張が一部に見られることです。「将来的な核保有の『研究』が必要だ、という議論もある」と、中曽根元首相が主宰する世界平和研究所の提言を引きながら、「感情的な核アレルギーのために現実的な対応ができず、日本の存立を危うくすることがあってはなるまい」などと核保有を肯定してみせる、「読売」社説がその典型です。

 こうした主張が唯一の被爆国として核兵器の廃絶を願う国民世論に真っ向から反するばかりか、北朝鮮に核兵器の放棄を迫る国際社会にとって、その足場そのものを危うくする、本末転倒の議論であることを指摘しておかねばなりません。

 残虐な大量破壊兵器である核兵器は、長年にわたって放射能被害をもたらす「悪魔の兵器」です。それは地球上から廃絶されるべきものです。韓国との間で朝鮮半島の非核化を合意し、日朝平壌宣言や六カ国協議の合意で核開発計画の放棄を約束してきた立場からも、北朝鮮の核兵器保有が許されないのは明白です。

 北朝鮮の核実験に対抗して、日本も核保有を検討すべきだという主張が、核兵器の保有そのものを免罪することによって、北朝鮮に核兵器を放棄させるという国際社会の課題をあいまいにすることは論をまちません。こうした有害無益な議論を持ち出すこと自体、北朝鮮の核実験に国際社会が一致して対応するのを困難にすることになります。

被爆国の立場で

 「読売」社説は、日本が核兵器を保有しない立場をとっていることを、「感情的な核アレルギー」と揶揄(やゆ)しますが、それは広島、長崎での悲惨な被爆体験を通じた国民の合意です。日本の国際的な約束事でもあります。

 「読売」社説は、そうした国民の合意や国際的な約束をすべて破棄せよというのか。核武装をけしかける「読売」社説は、被爆国としての日本の戦後の歩みを否定し、国民世論を誤った方向へと誘導する危険を持つというほかありません。

 この点で、被爆地・広島で発行される中国新聞の社説が北朝鮮の核実験に対して、「ヒロシマの役割は重くなった」とのべ、「被爆の実相を伝える努力はますます必要になった」としているのは、重要な意味を持ちます。被爆国の立場で核保有の危険を伝えることは、被爆国のメディアでしかできない役割です。

 一方、米軍基地の危険に直面している沖縄の地元紙・琉球新報の社説が、「他国には核の放棄を求めながら、自国だけは核兵器を保持し続けるという姿勢では、北朝鮮への非難も説得力を失いかねない」とのべ、超大国・アメリカに自ら率先して核兵器廃絶に取り組むよう求めているのも大事な視点でしょう。

 こうした立場と比較しても、日本に核保有の検討を求める「読売」社説の異常さはいよいよ明らかであり、その立場は被爆国・日本の新聞として不見識そのものです。

 (宮坂一男)


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