2006年10月12日(木)「しんぶん赤旗」

「北朝鮮核」口実に改憲要求

悪乗り 自民党議員


 十一日の参院予算委員会で、北朝鮮の核実験問題を口実に、明文改憲や海外での武力行使を可能とする集団的自衛権行使に向けた解釈改憲を求める危険な議論がありました。

 口火を切ったのは、自民党の舛添要一参院政審会長。舛添氏は、「軍事制裁」を後押しする立場に立って、米軍が北朝鮮への制裁として臨検(船舶への立ち入り検査)を実施するケースを想定。「臨検をしているアメリカ海軍に向かって発砲が始まったときにそばにいて、うちは憲法で禁じられているから何もできませんというのが通じるのか」とのべ、米軍とともに武力行使に乗り出すべきだという考えを強くにじませました。

 そのうえで、「もはや(自衛権を)個別や集団と峻別(しゅんべつ)する意味はない」「憲法改正という形で筋道を立てたい」と改憲を強く求めました。

 北朝鮮の核実験は、断じて許されない暴挙です。国際社会は、これを厳しく抗議、批判するとともに、この問題を平和的・外交的に解決するよう努力を重ねている真っ最中です。ブッシュ米大統領も声明の中で「米国はいまも外交に専心する」と表明しています。

 こうした中で、武力制裁に日本が参加することを想定し、憲法の平和原則が“障害”になるとして、その改定を持ち出すというのは、国際社会の流れにも逆らう異常な議論です。

 ところが政府側は、舛添氏の議論をいさめるどころか、久間章生防衛庁長官や安倍晋三首相が改憲の立場に立つ持論を展開。久間長官は、集団的自衛権と個別的自衛権の間に「グレーゾーンは本当にないのか」などと答弁。自衛隊機が他国の空中給油機から空中給油を受けているケースを示し、「相手は空中給油機を狙ってきた。日本の自衛隊機は、その敵機を撃ち落としてはいけないのか。実行はできるんじゃないのか」と述べました。

 安倍首相も、公海上で米軍艦が攻撃された場合や、イラクで英豪軍が攻撃された場合を挙げ、「(集団的自衛権の行使を可能にするよう)しっかりと研究していくことが、われわれの責任だ」と答弁。さらに「研究を行った結果、それはわが国が禁止する集団的自衛権の行使ではないという解釈を政府として出すことも十分あり得る」とまで述べました。

 久間長官と安倍首相が挙げたケースはいずれも、北朝鮮の核問題とは関係なく、自衛隊が海外に派兵された場合です。

 安倍首相が挙げたイラクへの自衛隊派兵は、米国による先制攻撃の戦争に続くイラク軍事支配を支えるものでした。

 こうした場合も含め、「集団的自衛権の行使」=海外での武力行使を可能にすることは、日本と世界の平和を脅かすものです。まして、北朝鮮の核問題の解決を口実に、海外での武力行使を可能にする改憲を狙うなどということは、国民の願いとも無縁の“悪のり”でしかありません。(田中一郎)


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