2006年9月30日(土)「しんぶん赤旗」

主張

所信表明演説

国民と世界から孤立するだけ


 安倍晋三首相の、就任後初の所信表明演説を聞きました。

 安倍政権がどんな考えで何をやろうとしているかを盛り込んだ演説です。その中身は、「美しい国、日本」などと言葉が踊るだけで、教育基本法の改悪や集団的自衛権の行使、改憲など、安倍政権が目指す危険な政治の姿をむき出しにしました。安倍首相がやろうとしていることが、国民と世界から孤立する道であることを浮き彫りにしました。

求められる政治に逆行

 演説の冒頭で安倍首相は、「国民の期待を正面から真摯(しんし)に受け止め(る)」とのべました。しかし、やろうとしているのは国民が求めていることに逆行するものばかりです。

 安心した暮らしが送れるよう年金や福祉を立て直すことや、小泉「構造改革」がもたらした格差と貧困を是正することを、いま国民は切実に求めています。外交では小泉政権が破壊した、近隣諸国との関係の立て直しが緊急に求められます。安倍政権成立直後の世論調査でも、政府に力を入れてほしいという政策は、「年金・福祉改革」や「景気・雇用対策」が上位を占めます。

 安倍首相は、「活力に満ちたオープンな経済社会の構築」を第一に取り上げました。しかしその中身は、大企業の研究開発を支援することや海外から投資を呼び込むことです。早くも大企業向けの減税の検討を始めています。大企業の活力は満ちても、国民生活の立て直しや格差と貧困の是正とは程遠いものです。

 「再チャレンジ支援」を看板にしますが、「規制緩和」で不安定雇用の拡大を放置し、福祉の後退と国民負担増をさらに進めるのでは、「勝ち組」は勝ち残っても、格差はいっそう拡大します。社会保障でも国民に「自立」を押し付けるだけで、年金や医療を安心できる制度にしていく見通しはなんら示していません。

 外交では「主張する外交」を掲げますが、その中身は、「総理官邸とホワイトハウスが常に意思疎通できる枠組みを整え(る)」など、アメリカ一辺倒をさらに強化するものです。集団的自衛権行使の検討に踏み出すのも、アメリカとともに「戦争をする国」になるためです。アメリカ以外の国々との関係はほとんど念頭になく、中国、韓国についてさえ、「大事な隣国」と一言ですませます。過去の侵略と植民地支配をどう反省するのか、靖国参拝はやめるのか、肝心なことには一言も触れません。

 国内からだけでなく海外からも、近隣諸国との関係を打開するためには侵略を反省し、「靖国神社参拝をやめると宣言すべきだ」(米紙ニューヨーク・タイムズ社説)との指摘が相次いでいます。首相になって何も語らないのでは、過去の侵略や靖国参拝を肯定しているといわれても、一言の弁解の余地もありません。

国民の未来は託せない

 演説を聞いていて、思わず耳をそばだてたのは、教育基本法や憲法のくだりです。安倍首相は教育の目的は「志ある国民を育て、品格ある国家、社会をつくること」だと明言し、「教育の目的」を「人格の完成」と明記した現行基本法を否定し、国家のための“人づくり”を肯定しました。憲法では、現行憲法は「日本が占領されている時代に制定」されたもので「新しい時代にふさわしい憲法」を議論するといいます。

 戦後民主主義を否定し、歴史を逆戻りさせようという安倍政権に、国民の未来を託すことはできません。安倍政治に立ち向かう、世論と運動を盛り上げることが急務です。


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