2006年9月22日(金)「しんぶん赤旗」
日本の政治 この異常
米国いいなり 極限に
「肩並べたたかう同盟」へ
インド洋で米軍艦船への給油を続けるためのテロ特措法の延長、在日米軍再編(トランスフォーメーション)の円滑な実施…。自民党の新総裁に選出された安倍晋三官房長官は二十日の記者会見で、矢継ぎ早に日米同盟強化を意識した課題を並べました。イラク戦争への追随、自衛隊の海外派兵など、小泉内閣五年間で「アメリカいいなり政治」は、極限に達したといわれます。安倍新体制はこれをどうしようというのか。(榎本好孝)
米軍再編を推進
今年六月の日米首脳会談―。すでに退任の意向を表明していた小泉純一郎首相はブッシュ大統領とともに、「新世紀の日米同盟」と題する共同文書を発表しました。その中で「世界の中の日米同盟」を確認し、「21世紀の地球的規模での協力のための新しい日米同盟を宣言」しました。文字通りの日米軍事同盟の地球規模への拡大、日米が世界の諸問題に共同で軍事対処することを打ち出したものでした。
安倍氏は当時、官房長官として「今後も両国政府は政権が変わろうとも、この基本認識には変わりがない」と答えています(六月三十日の記者会見)。それを実践するかのように、総裁選では「『世界とアジアのための日米同盟』を強化させ、日米双方が『ともに汗をかく』体制を確立」することを公約しました。
日米両政府が進めている在日米軍再編は、日米が「国際テロ」や「大量破壊兵器」への対抗など世界における共通の戦略目標を掲げ、米軍と自衛隊との一体化と海外での共同作戦態勢づくり、在日米軍基地の抜本的強化と恒久化を図ろうとするものです。アメリカの先制攻撃戦略に沿った「世界の中の日米同盟」の具体化です。
安倍氏は「在日米軍の再配置問題に対して、むしろ日本のほうから打って出るぐらいの積極的な気持ちで臨む。そして決定した事項については、責任をもって実行していく」(『Voice』二〇〇五年一月号)と述べているように、在日米軍再編を強力に推進しようとしています。
改憲5年以内に
安倍氏のアメリカいいなりの姿勢は、憲法問題にも示されています。
安倍氏は総裁選の公約で、冒頭に憲法改定を掲げ、五年以内という期限を示して実現を目指す意向を表明しました。その目的も「日米同盟をより効果的に機能を向上させるため」(今月一日の総裁選出馬会見)です。
そのために乗り出そうとしているのが、政府の憲法解釈変更による集団的自衛権行使の可能性についての検討です。安倍氏は解釈変更によって自衛隊による公海上での米艦船援護やイラクでの他国軍救援などを可能にする考えを繰り返し示唆しています。これは、〇四年に行ったアーミテージ米国務副長官(当時)との対談(『文芸春秋』同年七月号)で提起されたもの。いわばアメリカの受け売りです。
一方で「(海外で米軍と)一緒に肩を並べてたたかう、あるいは地球の裏側まで行って(武力行使する)、それは禁じられているという解釈」だと述べ、海外で米軍とともに本格的な武力行使に乗り出すことは解釈変更によってもできない考えを示しています(今月十一日の日本記者クラブでの討論会)。
裏を返せば、自衛隊が地球の裏側まで行って米軍と肩を並べて武力行使することを可能にするのは、憲法改定によってということです。まさに米国の先制攻撃戦略に付き従って、日米軍事同盟の地球規模での侵略的変質を総仕上げするものです。
世界では破たん
しかし、こうした道は世界ではすでに破たんが証明されています。
国連憲章を踏み破ったアメリカのイラク侵略戦争で、同国は開戦(〇三年)から三年をへて「内戦の瀬戸際」とまで言われる事態に陥っています。アフガニスタンでは、アメリカが「対テロ報復戦争」(〇一年)を仕掛けたイスラム原理主義勢力タリバンが復権し、急激に治安情勢が悪化しています。テロは世界中に拡散されています。
一方で、日本の憲法九条は、国際社会、東アジアの平和秩序を構築する上での指針として評価する動きが世界で広がっています。日本国内でも「九条の会」をはじめ憲法改悪に反対する運動が大きく広がっています。安倍氏が目指す米国とともに「海外で戦争する国」づくりに未来はありません。
海外メディア 「小泉路線」強化に懸念
「著書や語録には英米の戦闘的血盟関係にあこがれるかのような内容が何度も登場する」「安倍の外交路線は『日米同盟がすべて』という小泉外交を踏襲したものとなりそうだ」(朝鮮日報日本語電子版八月二十八日付)。安倍氏について韓国紙が連載した記事の一節です。総裁就任前からこう指摘されるほど安倍氏のアメリカいいなり、日米軍事同盟絶対の姿勢はあからさまです。
ドイツの有力週刊誌『シュピーゲル』九月四日号は次のように書きました。「(安倍氏は)戦争に際して日本が米軍を支援できるように、この地域におけるアメリカの同盟国としての日本の軍事的役割を引き上げようとしている」
中国紙の光明日報七月二十一日付も「アメリカを日本外交の第一に置く小泉氏のやり方については、安倍氏はこれを全面的に継承し、さらに高めようとしている」「政権の座についたとしてもアメリカ頼み、アメリカいいなりが続くことになるだろう」としています。
共通しているのはアメリカいいなりでより強硬路線をとることへの懸念です。

