2006年9月15日(金)「しんぶん赤旗」

沖縄米軍新基地の調査

抗議で一時中止

防衛施設庁


 沖縄のキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)への米海兵隊新基地建設計画で、防衛施設庁と名護市教育委員会が十四日に予定していた埋蔵文化財の予備調査が、地元住民の強い抗議を受け、中止になりました。

 埋蔵文化財調査は、新基地建設に伴い、シュワブ兵舎地区にある既存の施設などを取り壊す必要があるため予定されているもの。兵舎地区では、約千―二千年前とみられる遺跡が確認されています。

 防衛施設庁は、約四千万円の予算をかけて調査を予定。今回はその予備調査で、兵舎二棟分の敷地について試掘など本格調査が必要かどうかを現地確認する予定でした。

 新基地建設に反対する名護市ヘリ基地反対協議会のメンバーら約五十人は十四日午前七時半ごろから、シュワブのゲート前に集まり、現れた防衛施設庁の職員に対し、「調査は認められない」と抗議しました。防衛施設庁の職員は基地内に入らず、引きあげていきました。

 名護市教育委員会は、同日中の調査は行わないことを決めました。

 抗議に参加した日本共産党の具志堅徹・名護市議は「新基地はいらないという市民の思いを逆なでするもの。何がなんでも建設しようと乗り出してきたもので、許されない」と話していました。

 防衛施設庁は、今後の調査の日程については未定としています。


解説

世論に抗し作業急ピツチ

 政府・防衛施設庁は、地元住民の抗議を受け、キャンプ・シュワブ内での埋蔵文化財の予備調査をいったん中止したものの、米海兵隊の新基地建設に向けた作業を急ピッチで進めようとしています。

 防衛施設庁は今年度内に新基地建設のマスタープラン(基本計画)を策定する予定。そのための調査として、埋蔵文化財調査とは別に、すでに五日からはシュワブ内の施設の現況調査を始めています。

 現況調査は、日米両政府が合意しているV字形滑走路を持った新基地の建設で、シュワブ兵舎地区にある既存施設の取り壊しや移設が必要となるため、その大きさや構造などを調べるものです。

 経費は約六百万円で、すでに測量・環境コンサルタント会社に委託し、実施しています。

 政府は八月末に、新基地の建設計画などについて沖縄県をはじめ地元自治体と協議する「普天間移設協議会」を設置しています。同協議会は、V字形滑走路案を盛り込んだ在日米軍再編の「最終報告」(五月)を「迅速に実施する」とした閣議決定(同)に基づくものです。

 同協議会の第一回会合には「暫定ヘリポート」案を主張する沖縄県の稲嶺恵一知事も出席しましたが、政府はあくまでV字形滑走路案という日米合意を押しつける構えです。

 沖縄の地元紙は現況調査などについて「反対派が立ち入れない基地内で陸上部分の作業を本格化することで、県が反対している滑走路二本案(政府案)を既成事実化する狙いがあるとみられる」(「沖縄タイムス」九日付)と指摘しています。

 新基地建設には、地元紙の世論調査でも七割以上の県民が反対しています。新基地建設に向けた作業を急ぐ政府の姿勢は、こうした県民世論に真っ向から挑戦するものです。(田中一郎)

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