2006年9月9日(土)「しんぶん赤旗」

安倍「政権公約」をみる (5)

経済

企業は「金の卵」だと…


 安倍晋三官房長官は政権公約の「基本的方向性」に、「成長なくして日本の未来なし」「イノベーション(革新)による経済成長」と掲げました。さらに「具体的政策」の項には「民間活力フル活用」「アジアの成長を取り込む経済戦略」「イノベーション活用で幅広い産業の生産性を向上させる」「最先端産業の研究開発を強力に支援」と財界の主張とウリ二つのスローガンを並べ立てました。

「経済音痴」

 もともと、安倍長官に対する財界の評価は低いものでした。ある財界大御所も「安倍晋三官房長官は経済音痴」と強調します。この不信感を払しょくする意味からでしょうか、安倍長官は雑誌のインタビューでこう強調してみせました。

 「民間は、日本の活力の源泉」「世界で競争している企業という金の卵を産む鳥を殺してしまっては元も子もない」(『日経ビジネス』七月十七日号)

 政権公約の経済政策の特徴の一つは成長戦略です。日本経団連の事務局幹部は「政権公約には具体的中身はないがあれには何をすべきか書いてある」といいます。「あれ」とは七月六日に財政・経済一体改革会議(首相、関係閣僚と与党幹部で構成する協議会)がまとめた「経済成長戦略大綱」です。この大綱は「グローバル戦略」(五月十八日)、「新経済成長戦略」(六月九日)の二つの提言をまとめたものです。

 「グローバル戦略」をまとめたチームは、牛尾治朗元経済同友会代表幹事(ウシオ電機会長)、奥田碩前日本経団連会長(トヨタ自動車相談役)ら経済財政諮問会議の議員。「東アジア経済圏の構築」をスローガンに掲げ、介護・看護分野などでの外国人労働者の積極的受け入れや国際拠点港湾・空港の強化という名で巨大公共事業の推進を求めています。さらに「農林水産業の国際競争力の強化」を掲げ、「守るべきところは守り、譲るところは譲る」などとして大多数の小規模・家族農家切り捨てを提言しています。

 「新経済成長戦略」をとりまとめたのは日本経団連評議員会議長の西室泰三氏(東芝相談役)が部会長を務める産業構造審議会新成長政策部会。財界が要求する減価償却制度の見直しなど企業減税を提言しています。

財界直結へ

 もう一つ安倍長官が力を入れるのは「再チャレンジ(挑戦)戦略」です。政権公約では、「努力した者が報われ、勝ち組、負け組が固定しない社会」といいます。若年層の就業対策は緊急の課題です。しかし、「働き方の複線化」が再挑戦へのチャンスになるというように、非正規雇用を拡大した規制緩和を見直す姿勢はありません。大企業の都合に合わせて、若者の職業能力や意識を変えようというのが基本的な考え方です。

 政権公約から見えてくるのは、財界直結への道を突き進む姿です。(おわり


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