2006年9月6日(水)「しんぶん赤旗」

高金利温存 密室で決めるのか

解説


 多重債務被害を生み続けているサラ金の異常な高金利。金融庁などが五日、自民党に示した「検討内容」は、その高金利を貸金業規制法改正後、最大九年も残す、というものです。

 貸金業者はグレーゾーン(灰色)金利が最高裁で否定されても、利息制限法の制限金利を守らずにいます。高金利特例が、消費者から高利をむさぼる脱法行為の温床となるのは目に見えています。

 また、各党や金融庁が真っ先に「撤廃する」と決めたグレーゾーンの復活であり、制度改正の趣旨だった消費者保護に逆行するものです。

 特例には、日弁連が「金利引き下げを骨抜きにする」と批判したのをはじめ、「多重債務問題の解決にならない」(全国青年司法書士協議会)と批判が相次いでいます。

 金融庁の「貸金業制度等に関する懇談会」でも、八月二十四日の会合で「潜脱(せんだつ)の温床となる」「第二のグレーゾーンになる」と反対が続出。与謝野馨金融相自身も七月末の段階では「例外が例外でなくなる可能性がある」とのべていました。

 それがなぜいきなり逆回転するのか。国民にまともな説明はされていません。

 異常なのは、三月から公開で制度のあり方を検討してきた同懇談会の議論を無視するような案が、金融庁と法務省内の密室で議論されて出されてきた点です。「国民の意見を広く徴収した政策決定プロセスに反する」(高金利引き下げ全国連絡会)と批判があるのは当然です。

 これについて金融庁は、「懇談会は審議会ではない」「与党から政府において検討しろといわれたので、金融庁と法務省で検討して与党に答えた」(信用制度参事官室)と居直ってさえいます。

 業界団体の全国貸金業協会連合会は29・2%の高金利維持を求め、「条件闘争はしない」との方針ですが、生き残りをかけ、自民党の国会議員のパーティー券購入を含めた政界工作を続けています。また、八月には米金融業界の業界団体が、上限金利引き下げに反対する意向を与謝野金融相に伝え、“圧力”をかけてきています。

 そもそも上限金利を引き下げたら、業者が融資をしぼり、借り入れ機会が奪われ困る人がいる、という貸金業界発の理論は、立証されていません。消費者の利益を、借り入れ機会にのみ求めるのも間違っています。

 国民の声を無視して、高金利の温存が密室で決まるのか。「今日にも自殺している人がいるんです」(全国クレ・サラ被連協、本多良男事務局長の懇談会での発言)という被害者、消費者の声が制度に届くのか。高金利に「NO」といういっそうの世論と監視が必要になっています。(井上 歩)


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