2006年9月5日(火)「しんぶん赤旗」

主張

概算要求

“福祉削り米軍へ”の逆立ち


 二〇〇七年度予算に対する各省庁の概算要求が出そろいました。

 政府が七月に決めた「構造改革の基本方針」(骨太方針)は、福祉切り捨てを続ける一方、米軍再編に三兆円も支出し、大型公共事業の浪費を温存する方針を盛り込みました。

 国民のいのちとくらしを守る社会保障を削って、米ブッシュ政権の核先制攻撃戦略の要をなす基地の再編・強化に回すようなやり方であり、本末転倒のきわみです。

 来年度の予算編成は、この方針を具体化する初年度に当たります。

軍事費が財政を圧迫

 軍事費は1・5%増で、SACO(日米特別行動委員会)や軍事偵察衛星の関連経費を含めると四兆九千五百億円に達します。

 なかでも米国の核先制攻撃戦略を支える「ミサイル防衛」には、56・5%増の二千百九十億円を計上しました。海上発射型の迎撃ミサイルSM3の取得・試射、地上発射型の迎撃ミサイルPAC3の前倒し導入などの経費を含みます。防衛庁は北朝鮮の弾道ミサイル発射を踏まえた措置だと説明しています。

 ミサイルの「矛」に対して迎撃ミサイルという「盾」を強化するような短絡的な発想では、軍事費は際限なく膨らんでいきます。

 米軍再編経費については、防衛庁は一部を除いて要求額を明らかにしていません。「骨太方針」は、各年度の予算編成で「必要な措置を講ずる」と米軍再編経費の特別扱いを明記しています。軍事費が、これまでにも増して財政の大きな圧迫要因になっていくことは明らかです。

 公共事業費は今年度当初の3%減にする方針を掲げていますが、概算要求では二割増の要望を認めるとともに、経済成長戦略の名目で三千億円の特別枠を設けています。

 特別枠には空港・港湾への連絡道路やスーパー中枢港湾プロジェクトなど、従来型そのものの大型事業を並べました。その結果、特別枠を含む大型事業は軒並み大幅増となっています。例えば三大都市圏の環状道路は二割増の二千百四十二億円、スーパー中枢港湾は四割近い増加で五百二十四億円、関空二期工事など大都市圏の巨大空港整備は36%増の二千百九十一億円に上ります。

 軍事費や大型事業への手厚い配慮とは対照的に社会保障は心ない扱いです。政府は、対象者の増加などで必然的に増える社会保障費の増加分の三割、二千二百億円をカットする大枠を当初の要求段階から機械的にはめ込みました。

 厚生労働省の概算要求は、削減の具体案や理由すら明示しないで、雇用保険の見直しや生活保護基準の見直しを掲げています。まったく道理のない、「はじめに削減ありき」の冷たい姿勢です。

 厚労省はじめ各省庁とも、安倍官房長官が標語にしている「再チャレンジ」を、概算要求の宣伝文句として多用しています。生活保護など基礎的なセーフティーネット(安全網)をずたずたにして、貧困と格差を広げながら「再チャレンジ」とは、悪政の実態を隠す厚顔な看板です。

消費税増税の狙い

 米軍再編で三兆円も負担し、大型事業の無駄遣いを続け、大企業向けの行きすぎた減税を改めないなら、財政が良くなるはずがありません。

 その帳じりを消費税の増税で合わせようというのが、政府と財界の狙いです。「財政健全化のため」「社会保障のため」と何度も繰り返し、庶民の負担増を「仕方がない」かのように描こうとしていますが、大きなまやかしというほかありません。


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