2006年8月24日(木)「しんぶん赤旗」
主張
岐阜県庁裏金
真相を究明し中枢の責任暴け
岐阜県庁で表面化した巨額の裏金問題は、梶原拓前知事をはじめ県中枢を含む県庁ぐるみの不正な資金操作が長期間続き、その隠ぺいに県職員組合までがかかわったという底無し腐敗の様相をみせています。
主権者である住民の福祉・サービスのために税金の運用を託される官庁が血税を私物化し浪費する―こんな背信行為を一掃するために徹底した真相究明と責任追及が必要です。
清算しなかった県
「国、自治体を通じる裏金づくりは十分承知していた。いずれにしてももう済んだこと」―事件発覚後に梶原前知事が会見でのべた言葉は、耳を疑わせるものでした。昨年二月まで四期十六年間にわたって岐阜県政を牛耳り、全国知事会長まで務めた梶原氏にして、裏金は「国でも自治体でもやっていること」という程度の認識だったのです。
岐阜県では、県庁の各職場で、実際には行っていない出張旅費の計上(カラ出張)などの不正経理による裏金づくりが数十年前からおこなわれてきました。ピークの九四年度には県組織全体で四億六千六百万円もの裏金がつくられました。旧建設省出身の梶原氏のもとで、国の役人への接待も派手になったといわれます。
当時、裏金は国、地方自治体のかなりの部分に広がる悪習でした。市民の立場で行政の監視活動をしている全国市民オンブズマンが役人同士の飲み食いに巨額の税金を使う「官官接待」を告発したのは九五年。カラ出張をはじめとする裏金づくりの実態に怒りが広がりました。
世論の批判の前に、二十五都道府県で総額四百三十六億円もの不正経理が公表され、知事や職員への処分、OBも含む公費への返還など自浄努力がされました。「こんな税金の無駄遣いはやめよう」という社会的な合意の上に多くの自治体が裏金の清算に向かわざるをえなかったのです。
ところが岐阜県では、梶原知事や幹部職員が「岐阜県には不正がないと確認している」と断言しました。ウミをだすべきときにそれができなかった県政は、県民へのウソの上に、さらに背信行為を重ねることになります。裏金の隠ぺい工作です。
九八年からおこなわれた県職員組合の口座への裏金二億五千六百万円の移し替えはとくに重大です。組合の資金には県の監査が及ばないことに目をつけ、当時の森元恒雄副知事(現自民党参院議員)が指示したものです。県の責任はもちろん、本来、腐敗をただすべき労働組合が隠ぺいに手を貸すのでは、住民への責任は果たせません。
残る約二億円はそのまま各職場の担当者が保管しました。裏金の処理に困った職員が五百万円もの血税を焼いて処分したという県の調査結果も信じ難いものです。県が依頼した弁護士による検討委員会が月内に提言をまとめますが、どこまで真相に迫れるのかが注目されます。
日本共産党は、裏金問題の真相解明、前知事をはじめとする県中枢部の責任と処分を求める署名運動を呼びかけ、県民から「裏金は議会、マスコミ対策にも使われており、糾弾できるのは共産党しかいない」という期待の声が寄せられています。
行政の監視強めよう
昨年発覚した経済産業省大臣官房の裏資金、各地の警察の捜査報償費問題など、官庁の裏金問題は過去のことでも、岐阜県政だけのことでもありません。国政でも、地方でも、私たち主権者が監視を強め、世論を広げて、腐敗のない公正な行政を求めていくことが不可欠です。