2006年8月23日(水)「しんぶん赤旗」

安倍発言

任期中も視野に――

改憲の動き加速の思惑


 自民党総裁選の最有力候補とされる安倍晋三官房長官が二十二日、「新しい憲法を政治スケジュールにのせていく」と発言したことは、憲法改悪を自らの政権公約として打ち出すことを予告したものとして重大です。

 すでに国会には、改憲のための国民投票制度や国会での常設委員会設置などを盛り込んだ改憲手続き法案が提出されています。一方、自民党は昨年十一月に「新憲法草案」を発表しています。こうした中で、改憲を「政治スケジュールにのせていく」とは、改憲手続き法案の成立、改憲草案の仕上げを急ぎ、あわよくば任期中にも改憲を実現しようというもくろみにほかなりません。

●「戦争する国」へ

 そもそも、首相が憲法「改正」を自己の内閣の課題とすると発言したことは、一九五四年末に政権を握った鳩山一郎首相が打ち出して以来、二〇〇一年に就任した小泉純一郎首相までは、ありませんでした。とりわけ、六〇年発足の池田内閣以降の歴代首相は、国民の改憲反対の世論の前に、「自分の在任中は憲法改正はしない」ということを約束するのが慣例になっていました。

 その慣例を破り、自民党に改憲案とりまとめを指示したのが小泉首相です。安倍氏は、小泉路線をさらに加速させ、改憲を現実のものとする執念をみせているのです。

 安倍氏は「新しい日本をつくっていく」などと改憲を合理化しますが、改憲の目的は、集団的自衛権の行使を可能とし、米軍と一緒に海外で武力を行使するという、「戦争をする国」をつくるというものです。

 自民党「新憲法草案」は、戦力不保持と交戦権否認を明記した九条二項を削除したうえ、「自衛軍を保持する」と明記、「国際社会の平和と安全を確保する」との口実での海外派兵に道を開いています。

●戦後の原点否定

 安倍氏の発想の根底には、先の戦争を反省し、その教訓を踏まえ、戦後日本の再出発をはかった憲法の平和原則や教育基本法を、「占領時代の残滓(ざんし)」と敵視する考えがあります。安倍氏の新著『美しい国へ』では、憲法前文を「敗戦国としての連合国に対する“詫(わ)び証文”」などと冷笑しています。

 憲法や教育基本法を根幹とした戦後の体制を根底からひっくり返そうとする人物に、一国の代表たる資格があるのかが問われます。(藤原 直)


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