2006年8月23日(水)「しんぶん赤旗」

主張

財政改革

社会保障の削減は本末転倒だ


 八月末に期限が迫った二〇〇七年度予算の概算要求に向けて、各省庁が作業を進めています。

 政府の「構造改革の基本方針」(骨太方針)は五年、十年の長期にわたって社会保障を切り捨て続ける方針を掲げています。政府・自公の狙いは来年度予算を、くらしに切り込む長期計画の出発点にすることです。

生存権を守る責任

 歳出の削減といえば社会保障、歳入の見直しといえば消費税・庶民増税というのでは、負担をすべて庶民に転嫁するだけです。まったく改革の名に値しません。

 財政破たんの原因は、軍事費、大型公共事業の無駄遣いとともに、大企業・大資産家への行き過ぎた減税にあります。これら歳出・歳入の両面での失政が膨大な財政赤字を生み出してきました。

 米国に次ぐ水準の五兆円の軍事費は大変な財政の重荷です。ブッシュ大統領いいなりでグアムの米軍基地にまで国民の血税を投入するなど、国際的にも非常識で際限のない浪費をやめるのは当然です。

 一九九〇年代には、国と地方を合わせた公共投資は年間で五十兆円に上りました。無謀な大規模プロジェクトの積み増しで、財政赤字が大きく膨らんだことは、政府の財政制度等審議会も認めています。

 「構造改革」の名の下で連続して大企業減税を実施し、相続税・所得税の最高税率を引き下げ、株の売買益や配当課税の減税をすすめてきたことが歳入の基盤を直撃しました。

 財務省の法人企業統計によると、企業の経常利益はバブル期の最高(八九年の三十九兆円)を大きく超え、〇四年には四十五兆円に拡大しました。ところが、この間の法人税収は十九兆円から十一兆円に、八兆円も減っています。

 社会保障費が財政悪化の主な原因であるかのような小泉内閣の議論は本末転倒であり、大企業・大資産家の減税や軍事費、大型公共事業など赤字の原因を隠すごまかしです。

 社会保障費は国民のいのちとくらしを守る予算です。憲法二五条は「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と明記しています。

 国には、国民の生存権を保障するために社会保障を守り、充実させる義務があります。財政は本来、社会保障を最優先に編成すべきです。このもっとも基本的な責務を完全に忘れ去っているのが小泉内閣です。

 日本医師会が設立した日医総研は毎年の国の決算を分析して、次のようにリポートしています。

 例えば〇四年度の国債・借入金残高は七十八兆円も増えたのに対し社会保障費はわずか六千億円の増加。社会保障関係費の増加額と、借金の残高増加額には「まったく関係がない」。公共事業の過去の遺産は重く、社会保障削減の一方でイラク派兵が強行され、米軍への「思いやり予算」は死守、今また米軍再編の費用が捻出(ねんしゅつ)されようとしている―と。

赤字の根源にメスを

 財政破たんを招いたのは歴代自民党政府の失政です。政府、自民・公明はその根源にメスを入れるどころか、さらに膨らませようとしています。国民のいのちを守る社会保障を削り、国民に負担を押し付けるやり方には一片の道理もありません。

 財政破たんの原因を根本から改めることは、国民の生存権を保障する本来の政治を取り戻すと同時に、財政立て直しへの道を開くほんとうの意味での改革です。


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