2006年7月30日(日)「しんぶん赤旗」

主張

ARFと北朝鮮

アジアの声に真摯に応えよ


 東南アジア諸国連合(ASEAN)十カ国と周辺諸国などとの一連の年次外相会議で、北朝鮮問題が大きなテーマになり、最終日のASEAN地域フォーラム(ARF)でも集中的に議論されました。

 ARF議長声明は、「朝鮮半島の非核化はアジア・太平洋地域の平和と安定に不可欠であり、平和解決を支持する」と強調し、六カ国協議の早期再開と六カ国共同声明(昨年九月)の早期履行をよびかけました。北朝鮮のミサイル発射(七月五日)についても、全会一致の国連安保理決議と北朝鮮の拒否に留意しながら、北朝鮮がミサイル実験凍結に立ち戻ることを促しています。

戦争と分断の克服こそ

 これは、北朝鮮の核、ミサイル問題をあくまで平和的に解決しようとする道理ある表明です。ARFは、北朝鮮も参加する多国間協議の場であり、六カ国協議のすべての国(北朝鮮、韓国、米国、中国、ロシア、日本)が出席している点でも、このよびかけは重要です。

 北朝鮮の白外相は「拒否する」と発言しましたが、それは、北朝鮮を除く東アジアのすべての国々が一致してよびかけたものです。北朝鮮がARFから発せられたアジアと世界の平和の声に応えて、地域・国際社会と共通の立場に立ってこそ、アジアの責任ある一員として自らのかかえる問題も打開できるというよびかけでもあります。

 アジア・太平洋の二十五カ国と欧州連合(EU)が参加するようになったARFは、東南アジア友好協力条約(TAC)などにもとづき、軍事同盟や軍事力によらず、問題を平和的な話し合いで解決する姿勢を貫いて、重みを増しています。

 参加各国は今回、「地域の主要な多国間政治・安全保障フォーラム」としてARFが果たす重要な役割を再確認し、活動をさらに強化してゆくことで合意しました。その際、ASEANが「主要な推進力」であることへの支持を改めて強調しています。アジア・太平洋地域の問題に焦点をあてながら、地域に影響のある国際問題も取り上げて、熟慮した対話、協議の促進を確認しました。

 議長国マレーシアのアブドラ首相は、今回の一連の会議の開会あいさつで、アメリカのベトナム侵略戦争と「冷戦」の時代に「深く引き裂かれていた東南アジア」で、ASEANがベトナムの加盟を転換点として「平和と協力、経済的・社会的福祉」に積極的な役割を果たせるようになった歴史を強調しました。戦争と分断の痛苦の体験を乗り越え、平和と協力へのとりくみを積み上げ広げてきたこの地域からの平和のよびかけは、同じアジアで戦争と分断の克服を願う朝鮮半島の人々にとっても最も切実なはずです。

国際社会の世論

 ARFのよびかけは、参加各国政府の思惑などに違いはあっても、地域と国際社会の大きく一致した平和の世論を反映しています。

 米政府も、今回のARFにあたって「北朝鮮が外交にもどり六カ国協議のメンバーたる用意があるなら、二国間会合の用意がある」(ヒル国務次官補)という態度を改めて確認しています。米政府は今回、北朝鮮の核、ミサイル問題の外交的な解決を追求する点ではアジア各国と共同歩調をとっています。

 アメリカも含めたARFの構成国が一致しておこなったよびかけは、外交的解決であり、北朝鮮がこれに真摯(しんし)に応えることを強く求めるものです。


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