2006年7月28日(金)「しんぶん赤旗」

いま地方で

中小企業の開発助ける 「産技研」

移転なら産業力低下

東京・北区と板橋区 都の計画に区長も異議


 東京のものづくりを支える中小企業の技術支援に欠かせない東京都立産業技術研究センター(産技研)。その整理統合計画を東京都が発表したことに、身近な研究所が廃止される北区や板橋区では、区長をはじめ反対の声が広がっています。(山田芳進)


 都が四月二十五日に発表した産技研の整理統廃合計画では、西が丘庁舎(北区西が丘。板橋区に隣接)を臨海副都心に移転させようとしています。

 北区と板橋区には、健康・医療・福祉関連施設や光学機器、理化学機器、製薬関連企業が集中しています。その地域資源を生かしたものづくりによる地域活性化を目的とした「KICC(きっく)プロジェクト」を共同で進めています。

 産技研は、同プロジェクトの技術支援に大きな役割を果たしています。

■近いから

 板橋区内で高齢者用の転倒骨折予防用下着「ピーチパンツ」をこの五月に商品化した「スタジオトミ」の松本富子社長も利用者の一人です。

 身内の不幸から予防下着の開発を思い立った松本さんは、同プロジェクトに企画を持ちこみ、採用されました。二〇〇五年四月から一年間、産技研と共同開発し、特に「衝撃吸収パッド」に産技研の設備や技術を活用しました。

 「多い時で週に一回は通った」と言う松本さんは「うちのように小さい会社では買えない機械などもあるし、近いから頻繁に利用できた。遠くになると商品開発は遅れるでしょう」と語ります。

 型を取らずにコンピューター入力で段ボール梱包(こんぽう)のサンプルをつくる機械「サンプルカッター」製造で国内業界トップシェアを誇る「ヒューマンテック」も、産技研の技術支援を活用しています。同社は二〇〇四年、板橋区が毎年実施している板橋製品技術大賞の優秀賞を獲得しています。

 同社の製品に使われるカッターの刃の寿命は二―三カ月(一般的には二―三週間)です。早坂幸男社長は、外国の会社の刃を入手し、産技研に成分分析を依頼。試行錯誤を重ねて、耐久性向上に成功しました。

 早坂社長は「産技研が近くにあるから、気軽に検査や支援を求めたり、異業種間の情報交換ができる」といいます。

 それだけに、地元では、強い反対の声があがっています。

■存続要求

 花川与惣太北区長は、計画公表前の三月一日、石原慎太郎知事に存続を要望。石塚輝雄板橋区長も、四月二十一日に区内産業二団体の会長とともに石原知事に要望書を提出し、「東京都全体の産業力低下を招く」と懸念を表明しました。計画発表後も、「存続の考えに変わりはない」(北区長)「北区にとっても板橋区にとっても大変大きな損失。今後も引き続き別な形の要望を重ねていきたい」(板橋区長)と述べています。

 日本共産党都議団は、都の産技研の地方独立行政法人化、臨海移転の方針に一貫して反対してきました。

 古館和憲都議は都議会の文書質問(三月三十日)で、産技研を独立行政法人化したあと、統廃合して研究所そのものを減らす問題を指摘。そのねらいが、産技研の役割を「都内の中小企業における持続的発展への貢献」から「国際的に通用する」「将来有望な分野に重点を置いた支援をする」など、財界が求める方向に変質させることにあると批判しました。

 西が丘庁舎について「年間のべ四万五千件近くにのぼる業者や企業からの依頼試験に対応しているなど、特色を生かした頼もしい存在だ」として、同庁舎の存続と拡充を求めました。

■臨海救済

 都が産技研の臨海移転にこだわるのは、大赤字の臨海副都心開発を救済するため、との声もあります。都が移転先として計画している青海A区画の売却公募価格は約百七十二億円で、進出企業を募集しても買い手がつかなかった土地です。

 産技研の職員も加入する自治労連都庁職経済支部も「臨海副都心には、中小企業の製造業はほとんどない。年間を通じて数千人の来所者がある産技研がそこに移転すれば、利用者にとって交通の便も悪く、利用価値が減り、サービスの低下は必至だ」と批判しています。


 東京都の産業支援体制の再整備に係る基本構想 都立産業技術研究センター(西が丘、駒沢、八王子の各庁舎)、暫定施設である多摩中小企業振興センターを整理統合し、2011年に江東区青海(臨海副都心)と多摩地域(昭島市)に移転する計画。


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