2006年7月22日(土)「しんぶん赤旗」
主張
イスラエルの侵攻
停戦し、和平に踏み出せ
イスラエルとパレスチナ、レバノンの武装勢力との戦火が広がり、犠牲者が増大しています。
これ以上の犠牲者を出さず、全面的な戦争拡大の危険を防ぐため、軍事行動をやめさせることが急務となっています。そのうえで、半世紀以上にわたる中東紛争の根を絶つための和平交渉に向けて動きを促進する必要があります。国連はじめ国際社会が積極的な役割を果たすことが緊急に求められています。
各国の協力が重要
イスラエル軍は、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラからの攻撃・自国軍兵士拉致(十二日)に対し、レバノンの子どもを含む一般住民をも多数殺傷する大規模な軍事報復に出ました。空港・道路、発電・石油貯蔵施設、民間家屋などを大規模に砲爆撃し、海上を封鎖、地上からも侵攻し、すでに三百人以上の命を奪っています。
人口三百万人余のレバノンで十万人近くが家を失い、五十万人もの市民が避難民になっています。シニオラ・レバノン首相は、即時停戦と緊急人道援助を呼びかけました。
イスラエルの軍事行動は、「国際人権法に反し、暴力と報復の悪循環をさらに悪化させ」「適切な規模を超える武力行使」(欧州連合議長国声明)です。民間人の殺傷を禁じたジュネーブ条約などの国際法を踏みにじる行為であり、断じて許されません。
イスラエル側にも、ヒズボラのロケット砲撃で三十人を超える死者が出ていると伝えられます。ヒズボラはレバノン政府に加わりながら、イスラエルに越境攻撃し、兵士を拉致しました。無責任な挑発行為であり、正当化されません。拉致兵士を釈放し、挑発行為はやめるべきです。
双方の国民の生命と安全を奪い、中東地域の平和を脅かす戦争行為は一刻も早く停止させなければなりません。これこそ、国際社会が力を集中して実現すべき緊急事です。
イスラエルは六月二十七日以降、パレスチナのガザ地区とヨルダン川西岸にも大規模に侵攻し、百十人以上のパレスチナ人の命を奪ってきました。二方面で戦争状態に突入したイスラエルに「自制」を求めることは、世界の世論となっています。
重要なのは、国際社会が総意を集めて、当事者、関係者に実効ある働きかけを強めることです。国連事務総長が提案している国際部隊の派遣など各国と国際組織の働きかけを停戦と和平につなげるためには、国連憲章と国際法に基づく各国の協力がきわめて重要です。
国連安保理では、米国がガザ地区停戦決議案に拒否権を行使しました(十三日)。イスラエルの「自衛権」を理由にその過剰な軍事行動を擁護する立場であり、国際的な合意への努力を阻み、重大な国際紛争解決に背を向ける態度です。
イスラエルが軍事攻撃をやめ、撤退するとともに、レバノン、パレスチナの武装勢力側も拉致したイスラエル兵士を釈放することが、事態の打開に不可欠となっています。
戦争でなく中東和平を
挑発的な軍事行動でなく、大義と道理をもった行動こそが、国際社会の合意を可能にします。
各国が外交交渉でめざすべきは、イスラエルの占領地からの撤退、パレスチナ人の民族自決権・国家の実現とイスラエルとの共存、レバノンの主権確保という大義と道理にかなった中東和平です。軍事行動の拡大は、それを困難にするだけです。