2006年7月12日(水)「しんぶん赤旗」

戦犯的体質――日本と欧州の違いは?


 〈問い〉 日本では、第二次世界大戦後、自国の戦争犯罪人が政治の中枢の地位につくようになったのに、なぜヨーロッパではこういうことはおこらなかったのですか。 (奈良・一読者)

 〈答え〉 第2次世界大戦後の世界は、日本、ドイツ、イタリアがおこなった侵略戦争を断罪し、戦争を二度と引きおこさない世界をめざすことを、共通の原点としました。しかし、日本の政治は、この線にそっては展開されず、戦争協力の度合いが強かった指導者たちも、いったんは連合国の占領のもとで、政界から追放されますが、“日本をアメリカのよりよい協力者にするためには、過去の指導者たちを復活させる必要がある”というアメリカの政策転換で、戦後数年にして多くの戦争犯罪人が政界に復活しました。

 その後の政治では、過去の侵略戦争にたいしてまともな反省をしないまま「戦争肯定」派の人脈が今日まで続いています。

 ヨーロッパでも戦後、アメリカの提唱で「ヨーロッパ復興計画」(マーシャル・プラン)が実施されました。ヨーロッパ諸国の戦後復興をはかるとともに、アメリカ主導の軍事同盟結成の経済的基礎をつくることをねらったものでした。しかし、戦争犯罪人を政界に復帰させることはヨーロッパではおこりえないことでした。

 ドイツでは、国として過去の自国がおこした戦争に対して、侵略戦争だと正直にきちんと認める立場をとり、過去の時代と向き合う国民的討論をすすめてきました。ここが日本との大きな違いです。

 戦後60周年にあたってシュレーダー首相(当時)は「ドイツの国民は、過去の時代と正面からきり結ぶ討論を数十年にわたっておこない、ヒトラー・ドイツが犯した犯罪は、ヒトラーだけのものではなく、ドイツ国民全体がその責任を深く胸に刻み込む必要があるという、共通の集団的な意識に到達した」「この意識を維持し続けることは、ドイツ国民の永続する道徳的な義務である」「この努力がなかったら、ドイツがかつての敵であるフランスと手を取り合って欧州統合をすすむという今日の道が開かれることはなかっただろう」とのべました。

 侵略戦争を正当化する異常な自民党政治から脱却し、大本からの転換をはかることは、急務の課題です。過ちに正面から向き合い、反省を言葉だけでなく行動でしめしてこそ、アジアと世界の人々から信頼される日本を築くことができます。日本政府に、こうした転換をおこなわせるためにも、日本の国民一人ひとりがこの問題に真剣にとりくみ、歴史の事実に背をむけた戦争礼賛論を許さない国民的合意をつくりあげることが求められています。(満)

 〔2006・7・12(水)〕


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