2006年7月12日(水)「しんぶん赤旗」

主張

ドイツW杯閉幕

世界水準からおおいに学ぼう


 サッカーのワールドカップ(W杯)・ドイツ大会が、熱戦の幕を閉じました。

 世界の頂点に立ったのは、フランスとの決勝戦をPK合戦で制したイタリアでした。七試合でわずか二失点という堅守が四度目の栄光に導きました。開催国ドイツは三位と気を吐きました。

好プレーにくぎ付け

 深夜・早朝の試合放映には悩ませられました。それでも、ピッチで展開される激しくも華麗なプレーにくぎ付けにされました。一点を競い合う緊迫したゲームに、失敗が許されないPK戦に、かたずをのんで見守り熱くなった一カ月間でした。

 ベスト8を欧州(六)と南米(二)勢が占めたように、サッカーがしっかりと根を張っている国々の「伝統の強さ」をあらためて実感させられました。一方で、初出場の多かったアフリカや中米カリブ諸国は豊かな可能性が弾んでいて、次回二〇一〇年の南アフリカ大会での飛躍を予感させるものがありました。

 選手とともにボールを追い、国も民族も超えて心を通わせたW杯は、世界の人びととの相互理解と平和な交流の大切さをかみしめる機会にもなりました。会期半ばから「民族排外主義にノーを」と選手たちが誓い合い、世界に呼びかけた光景も、意味深いものとして受けとめました。

 問題も残りました。フェアプレーを根本理念とするW杯にもかかわらず、危険なプレーや暴力的行為での退場処分(レッドカード)は史上最多の二十八枚にのぼりました。退場者が続出した荒れたゲームもありました。選手のつぶしあいさえも公然とあおる勝利至上主義がその風潮を助長していることに、きびしい目を向けなければなりません。

 最後になって、まじめなプレーで親しまれ、今回大会の最優秀選手(MVP)に選ばれたフランスのジダン選手が、相手に頭突きを食わせて退場になりました。許される行為ではありませんが、人権にかかわる侮辱と差別的な言動が絡んでいたともいわれており、互いにライバルを尊重しあうスポーツ精神が崩れてきていることに危機感が募ります。アンフェアな行為への対応をイエローカード、レッドカードに済ませず、サッカーそのものの興廃がかかる問題として、きぜんと立ち向かう必要があります。

 三大会連続出場を果たした日本チームが、一分二敗の成績で一次リーグ敗退に終わったのは残念でした。ゴールキーパー川口能活選手の幾度にわたる好セーブや、ブラジル戦での玉田圭司選手のみごとなシュートなど、光ったプレーは随所にあります。しかし全体としてスピード、パワーなど、力不足が目立ちました。

 それだけに、「国を背負ったサムライブルー」などとあおり立て、根拠もなく「ベスト8も夢ではない」とたきつけた日本のマスメディアの過熱ぶりは、世界のサッカー水準を無視しており、スポーツ報道とはかけ離れた違和感を覚えました。

教訓くんで明日へ

 日本チームにとって“世界の壁”の厚さを痛感させられ、悔しい思いの残る大会です。しかし、そこから選手も関係者も多くのことを学んだに違いありません。

 “グッドルーザー(すばらしい敗者)”と呼ばれ、希望の明日を切り開くためにも、教訓をくみつくしてほしいと思います。それは、Jリーグのもとで育っている若い選手たちの成長への糧となり、目標となって、必ずいきてくるはずです。


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