2006年7月2日(日)「しんぶん赤旗」

米議会

秘密工作の報道規制

政府、マスコミを攻撃


 【ワシントン=山崎伸治】米政府がテロリストの資金の流れをつかむためだとして、国際的な金融取引の情報を秘密裏に入手していたとの米紙報道をめぐり、下院は六月二十九日、政府による秘密工作の報道を「自粛」することを内容とする決議案を可決しました。米政府は「この計画を暴露するとは恥ずべきことだ」(ブッシュ大統領)と怒りをあらわにして、マスコミを攻撃。「対テロ戦争」の名の下にブッシュ政権が行っている違法行為が次々と明るみに出されることに、政府がいらだっています。

 問題の秘密工作は、二〇〇一年九月の同時多発テロの数週間後から、米中央情報局(CIA)などがブリュッセルに本部を置く国際金融取引情報管理組合「SWIFT」から、銀行や株式取引会社などの国際的な活動について情報を得ていたというもの。米紙ニューヨーク・タイムズなど複数のメディアが六月二十三日に報じました。

 同紙は「財務省当局は裁判所に個別の令状や召喚状を請求して特定の取引を調べることをせず、行政府の召喚状に基づいて数百万の記録を入手した」としており、「これほど大量の秘密情報を入手することは極めて異例で、当局の中で法的問題やプライバシーの問題への懸念が生じた」と伝えています。

 これに対し、ブッシュ大統領は六月二十六日、記者団に「この計画を漏らし、新聞がそれを記事にするのは米国に対する多大な損害となる」と声を荒らげ、「対テロ戦争に勝つことが困難になった」とまで述べました。

 議会でも共和党を中心に報道に対する批判が沸騰。ハスタート下院議長(共和党)は六月二十八日の記者会見で、「秘密を漏らす人たちも、それを報じる新聞も、古い格言に立ち返るべきだ―口が緩むと米国民が死ぬ」と報道機関に「警告」しました。

 下院が六月二十九日に可決した上下両院合同決議案は、国家安全保障上の秘密を漏らした公務員を処罰することを求めるとともに、報道機関にはそうした秘密を「報じない権利がある」という表現で、政府が秘密裏に行う「テロ対策」の報道を事実上禁止しようとするものです。

 「対テロ戦争」を口実にしたブッシュ政権による秘密工作については、CIAが海外に「収容所」を設けていることや、国家安全保障局(NSA)が法的手続きなしに国内で盗聴を行っていることなどが、米紙の報道で明らかにされています。


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