2006年6月26日(月)「しんぶん赤旗」

主張

牛肉輸入再開

国民との「合意」ないままに


 米国産牛肉のBSE(牛海綿状脳症)対策が不十分なまま、日本政府は、輸入を再開しようとしています。小泉首相の訪米の手土産に、国民の食の安全より米国の利益を優先する姿勢は絶対に容認できません。

外食・小売業も不安増

 日米局長級テレビ会合(二十一日)で合意した措置は、(1)米国側が行う食肉処理施設への抜き打ち査察に日本側も同行する(2)日本側が施設の現地調査を行い、問題のなかった施設について輸入を再開する―というものです。

 小泉首相は、「疑問点を洗いざらいぶつけあって協議し、国民の意見を聞きながら、合意できてよかった」といいます。しかし、米国と合意はできても、国民との「合意」はできていません。

 「日本並みの検査体制を取ってほしい」「拙速に輸入を再開すべきではない」という声が、国民との意見交換会でも強く出されていました。

 食肉処理施設でのBSE全頭検査や、病原体が蓄積しやすい特定危険部位を全月齢の牛から除去するという、日本国内でとられている措置が、今回の合意ではまったく問題にされていません。

 外食・小売業の分野からも、輸入再開されても米国産牛肉を使わないという企業が激増しています。「日経」の調査によると、昨年十一月の27%から今回50%に増えています。消費者の不安の反映であり、「安全性に問題がある」からです。

 米国には、二十カ月齢以下で、特定危険部位の除去という、日米で合意した「対日輸出プログラム」(昨年十二月)を順守する体制がありません。

 それは、ジョハンズ米農務長官が、今回の合意を受けた声明のなかで「私は小さな非適合事例が両国の貿易関係全体を中断させないことを期待する」とのべていることにもあらわれています。

 今年一月に米国産牛肉の輸入が停止されたのは、特定危険部位の脊柱(せきちゅう)の混入が発見されたからでした。このような「小さな非適合」は、これからもたびたび起こるという表明を、農務長官は行ったのです。そして、起こった場合には、米国産牛肉の輸入が全面停止になるようなことはするな、個別の施設だけにしてほしいと、圧力をかけているのです。

 米国の食肉処理施設では、特定危険部位の除去違反が繰り返されています。また、「三十カ月齢未満と判定された牛を調べてみたら十歳程度の牛だった」といったずさんな事例が発覚しています。日本共産党国会議員団が訪米調査で入手した資料で明らかになっています。

 米国国内でこんな違反がまかり通っているのに、「日本向け」のみ安全を確保できるはずがありません。

 中川農林水産相が、現地調査の「評価を見守っていきたい」として、現地調査が輸入再開への“ゴールではない”と説明しているのも、政府自身の不安を物語っています。

最低限のルール守れ

 米国側は、早期に輸入が再開されなければ、日本製品に高い関税をかけるという対日制裁の圧力をかけています。しかし、輸入再開ができないのは米国に責任があります。自国の農産物を相手国に輸出するには、相手国の衛生条件にあわせるというのが、国際ルールです。米国の対日圧力は不当です。

 全頭検査、特定危険部位の除去という、BSEの危険を排除する最低限のルールが守られるまで、輸入は再開すべきではありません。


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