2006年6月21日(水)「しんぶん赤旗」

通貨の番人のマネーゲーム

これでも “たいした額でない”!?

福井日銀総裁


 日本銀行の福井俊彦総裁が「村上ファンド」に拠出した一千万円は、二倍以上に膨らんでいました。「通貨の番人」といわれる中央銀行の責任者が加担したマネーゲーム。これでも「(投資で得た利益は)たいした額ではない」といえるのでしょうか。


1500万円の大もうけ

庶民には「ゼロ金利」

 国会での質疑で、一千万円の運用益(投資収益)についての明言を避けてきた福井総裁。二十日午後になってようやく国会に資料を提出しました。内容は一千万円の出資(元本)に対し、運用残高が二千二百三十一万円というもの。労せずに千二百万円余のもうけが転がり込む格好です。すでに支払われた利益を加えると千五百万円近い大もうけです。

 限りなくゼロに近い超低金利のもとで、同じ一千万円を一年間銀行に預けても、普通預金の利息は百円にすぎません。

 福井総裁は庶民には「ゼロ金利」を押し付けた上、金融機関には、ジャブジャブの資金を供給する「金融の量的緩和」を強力に推進してきた張本人です。「村上ファンド」が登場した時期も、日銀がこの金融緩和政策に踏み切り、小泉政権が「貯蓄から投資へ」と動く時代と重なっています。

 その結果、株式市場には湯水のように資金が流れ込み、ライブドアや「村上ファンド」がぼろもうけを上げるマネーゲームの様相を一段と強めていきました。

 日銀の「ゼロ金利」政策によって預金金利が抑えられ、奪われた家計の利子所得は三百四兆円とされます。その裏で日銀のトップは、利回り20%超というファンドのマネーゲームに加担し、ぼろもうけを享受していたことになります。

インサイダー情報集中

許されない利殖行為

 「利殖のためにやっているのではない」。福井総裁は問題がないかのようにいいます。しかし、「通貨の番人」とされ、通貨の供給量を調節し、株式相場や市場金利に影響を与える金融当局の最高責任者が、投資や利殖に手をだすことが本当に問題のないことなのでしょうか。

 日銀の業務には、株価に大きな影響を与えるインサイダー情報ともいえるものが多くあるからです。

 その時どきの企業の売り上げ高や収益を調査し発表する「短観」と呼ばれる調査もその一つ。

 株価が低迷した二〇〇二年の秋には、銀行が保有する株式を購入するなど異例の措置を行ったりもしました。

 日銀総裁は、当然これらの情報を事前に知ることができる立場にあります。だからこそ、日銀の内規である「日本銀行員の心得」にも「職務上知ることができた秘密を利用した個人的利殖行為は、厳に行ってはならない」と定めています。

 関連して福井総裁が、この二月になってファンドの解約を申し出たとされることに疑問の声があがっています。

 二月はライブドアへの強制捜査が進み、「村上ファンド」の村上前代表との関連も取りざたされていた時期です。何らかの内部情報を知って手を引いたのか。また、二月は日銀が「量的緩和」策の解除を決める直前の時期です。解除による株価への影響を予想して、解約を申し出たのか。インサイダー情報を利用しようとした疑惑は消えません。

辞任は当然なのに

なぜかばう小泉首相

 悪いことはなかったと居直る福井総裁。任命責任がある小泉首相も「問題ない」とかばう姿勢を見せています。与党内部や閣僚らからも福井氏を擁護する発言が相次いでいます。

 しかし、金融行政の公正、中立性を保障する最高責任者である日銀総裁がマネーゲームに手を出し、ぬれ手であわの利益をあげるという道義的責任は逃れられません。中央銀行総裁としての適格性からいっても辞任が当然です。数々の疑問点も浮上しており、福井総裁は国民の前に真相を明らかにすることが求められます。

 さらに、ライブドアや「村上ファンド」の違法行為を許してきた背景には、金融市場の野放図な規制緩和や証券取引の優遇税制を推進してきた小泉内閣の「構造改革」路線があります。

 マネーゲームをあおった小泉内閣の責任も問われます。


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