2006年6月20日(火)「しんぶん赤旗」

焦点・論点

NATOとの連携

憲法度外視の無軌道ぶり


 政府は、これまでタブー視されてきた日本とNATO(北大西洋条約機構)との軍事協力にふみだす方針をうちだしました。麻生外相がNATO理事会(五月四日)での演説で表明しました。

 「日本防衛」と無縁なNATOとの軍事的連携にふみだすのは、日本がアジア以外の地域でもアメリカの覇権主義的な世界支配を支える道にふみこむことを意味します。日米同盟の侵略的変質のあらわれであり認めるわけにはいきません。

責任分担の表明

 麻生外相は、「自衛隊は憲法にもとづく制約のためいかなる形であれ集団防衛のとりきめへの参加はできません」と一応いっています。しかし、インド洋での自衛艦によるNATO加盟国艦船への燃料補給やイラクでのオランダ、イギリスとの密接な協力などをあげて「日本とNATOとの協力はすでに始まっている」といい、「NATOと協力していくためのもっとも適切な方法を検討していく」と表明しました。軍事的連携強化の約束であることは明白です。

 NATOは、アメリカのアフガニスタン報復戦争のさい、集団的自衛権を発動して軍事作戦をおこなった軍事同盟です。戦争を禁止した憲法はもちろん、日米安保条約も自衛隊も「日本防衛」のためとする政府見解からも、NATOとの軍事的連携は許されることではありません。

 小泉政権は、アフガニスタンやイラクでの米軍支援を、「輸送、建設などは武力の行使ではない」「非戦闘地域での活動だから他国の武力行使と一体化することもない」という強引な理屈で正当化してきました。こんな世界に通用しない欺まんでNATOとの軍事的連携にふみだすとしたら重大です。

 自衛隊が実施しているアフガニスタンでの燃料補給やイラクでの米軍兵士・物資の空輸などは国際法上、集団的自衛権の行使にあたります。NATOはそれと同じことを、集団的自衛権の発動としてアフガニスタンで実施しています。集団的自衛権を行使するNATOと、集団的自衛権は憲法違反とする日本が軍事的に連携などできないのは当然です。NATOと軍事的に連携し、アメリカの「副官」としてイギリスとともにブッシュ政権の軍事同盟体制強化方針を支えることは明らかに憲法違反です。

 アメリカは、イラク戦争などを通じて同盟重視をうちだしていますが、NATOの現状は、多くの構成国がイラク戦争に反対し非協力をつらぬいているように、アメリカの思い通りにならなくなっています。このため、日米、米韓などの二国間同盟とNATOとの軍事連携を強めさせることでNATOの強化を促しつつ、先制攻撃戦略に役立つ軍事同盟体制づくりをめざしています。

 日本のNATOとの軍事的連携は、ブッシュ政権の先制攻撃戦争政策を後押しする以外のなにものでもありません。

九条は平和の要

 国連憲章は仮想敵をもつ軍事同盟を否定し、話し合いで紛争を解決するルールを定めています。戦後、国連憲章の精神に反して多くの軍事同盟がつくられたとはいえ、七〇年代以降、東南アジア条約機構や中央条約機構などの軍事同盟が相次いで解体・機能停止し、代わって、平和の流れが本格化しています。

 日本は憲法九条を生かしてこの平和の流れを加速すべきです。軍事同盟体制を強め戦争を助長することは許されません。(論説委員会 山崎静雄)


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