2006年6月19日(月)「しんぶん赤旗」

主張

B型肝炎判決

一刻も早い救済と総合対策を


 B型肝炎ウイルスの感染原因をめぐる訴訟で、最高裁は、同じ注射器を複数の人の予防接種に使う状況を長く放置していた国に責任があると、認定しました。国にたいし、損害賠償を命じました。

 高裁で訴えが認められなかった二人を含め、原告五人全員の勝訴が確定しました。

集団予防接種が原因

 B型肝炎は、いまも決定的な治療法が開発されておらず、慢性化して長期化すると肝硬変、肝がんを発症します。

 提訴から十七年がたち、原告の一人はすでに亡くなっています。原告らは、勝訴を喜びながら、全員で聞くことができないのでつらいとも語っています。一刻もはやい国の救済が求められます。

 B型肝炎ウイルスの持続感染者(キャリア)は百二十万―百四十万人と推定されています。判決で、集団予防接種という多くの人がかかわることが感染の原因とされました。

 国は、医療費の公的助成制度はもとより、検診、治療、研究までの総合的な対策に早急に踏み出す必要があります。

 裁判では、(1)感染は集団予防接種によるのか、別の原因か(因果関係)(2)最後の予防接種から二十年以上経過したという「時の壁」で損害賠償請求権が消滅したかどうか(除斥期間)―の二つをめぐって争われました。

 判決は、因果関係の点でも除斥期間の点でも、患者・原告の立場にたつ、画期的なものです。

 因果関係については、予防接種をめぐる国のずさんな対応を浮き彫りにすることに重きをおいているのが特徴です。

 注射器を使い回すとウイルスに感染する危険性があることは、日本でも早いうちからわかっていました。国も一九五〇年ごろには一人ごとの取り換えを定めましたが、現場で徹底されず、長年にわたって注射器の集団使用を国は放置しました。

 五人の原告について、こうした予防接種以外には感染の原因は見当たらないと、最高裁判決は判断しました。

 もう一つは「時の壁」をめぐる問題です。高裁判決で、五人のうち二人は最後の接種から二十年がたっているとして、訴えを認められませんでした。

 最高裁判決は、長い潜伏期間を考慮して、“ウイルスによる症状が出たとき”を起点にしました。起点を発症時にまで遅らせることで、五人全員の損害賠償を認めました。

 この判断により、これからも、予防接種を受けてから感染に気づかず二十年以上経過したとしても、国に訴えることができます。これは、先に確定している二〇〇四年の「筑豊じん肺」「関西水俣病」の最高裁判決の判例を積極的に取り入れたものです。

幅広く救済を行政にも

 最高裁判決は、原告側の立証責任の負担を軽減しているのも、特徴です。

 予防接種以外の原因の「可能性」をあげる国側にたいし、“それなら、具体的な事実の存在を立証せよ”と求めました。最高裁は、国側の主張を「一般的、抽象的なもの」「可能性の高い具体的な事実の存在はうかがえない」として、退けました。

 最高裁判決は、被害を受けた患者・国民をできる限り広く救済する視点を与えています。国の医療行政に、最高裁判決の精神を生かすことが求められます。


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