2006年6月7日(水)「しんぶん赤旗」

主張

周辺事態法見直し

自治体協力の義務化がねらい


 政府は、日本周辺で戦争する米軍に自治体管理の港湾・空港を提供するなどの戦争協力を義務付ける「周辺事態法」改定を検討しています。米軍再編の「最終報告」でうたった「安全保障・防衛協力の実効性を強化」(共同発表)するためです。

 「周辺事態法」は自治体の米軍協力をうたったものの、法的に義務を課してはいません。憲法が地方自治の原則を保障している以上当然です。憲法をふみつけにして、自治体に米国の先制攻撃戦争への協力を強制するなど許せるわけがありません。

港湾空港も準基地化

 米軍艦船の民間港への寄港は異常に増加しており、今年一月から五月末までに十六隻です。「周辺事態法」の制定(一九九九年)以降をみても、年間寄港回数は多いときで二十一回、昨年は十四回ですから、五カ月間で十六隻はきわめて異常です。

 これは昨年十月の米軍再編の「中間報告」で、周辺事態など緊急時の際の米軍の民間港湾・空港使用についての具体化とそのための「詳細な調査の実施」をうたったことが背景です。高知県宿毛湾港に米軍艦船として初寄港した米イージス艦の艦長が「グローバルな世界に展開する」ためだとのべたように、民間港を米軍戦略の足場にするための地ならしが米軍のねらいです。

 米軍再編は、米軍が日本を足場に先制攻撃戦争を進めるための軍事態勢づくりです。米軍部隊の集結・補給・出撃の基地を確保することはその中核です。米軍は米軍と自衛隊の基地だけでなく、自治体が管理する港湾や空港も使用対象にしています。朝鮮戦争の際、神戸や博多など多くの民間港を使い戦争の足場にしたことや、九四年に、核開発疑惑を理由にした北朝鮮軍事制裁のためだとして、六港湾・十空港の使用を要求してきたことからも明白です。

 米国は米軍再編を突破口にして、日本政府に港湾・空港の自由使用の保証をせまっているのです。「周辺事態法」見直しはそのためです。

 「周辺事態法」は自治体に「必要な協力を求めることができる」としか規定していません。「周辺事態」は「日本防衛」とは無縁であるため、米軍と一緒に戦争することを強制できないのです。米軍との一体化は憲法違反であり、自治体の拒否権は当然です。このため、二〇〇二年十二月に日米両政府が確認した周辺事態のための日米相互協力計画書にも、米軍が使用したい民間港湾・空港を事前に書き込むことができないでいます。

 米軍が“それでは戦争にならない”といって、港湾・空港使用の確保を保証せよと日本政府にせまるのは、日本国憲法を冒涜(ぼうとく)するものです。アメリカいいなりに自治体に戦争協力義務を課すことは許されません。

地方の平和的生存権

 地方自治体が管理する港湾・空港を米軍に提供するということは、国際法上、その施設が軍事目標にされるということを意味します。まさに地方住民の命にかかわる重大問題です。

 日本も批准したジュネーブ条約第一追加議定書は、民間施設が「民用物」であるかぎり軍事攻撃を禁止していますが、「軍事活動に効果的に資する物」への攻撃を認めています。

 政府には地方自治体を強制的に戦争動員し、地方住民の平和的生存権を奪う権限などありません。

 地方住民の平和と安全を守るため、自治体・住民ぐるみの米軍再編に反対するたたかいがますます重要となっています。


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